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やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集
NZポスト児童書及びYA小説賞(ニュージーランド) レビュー集 |
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最終更新日 2009/09/01 レビューを1点追加
このレビュー集について
10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メ ールマガジン「月刊児童文学翻訳」や「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていな作品については原作を参照して書かれています。
以下の受賞作品は、他の賞のレビュー集ですでにレビューを公開しています。
1992年 "Dangerous Spaces"『危険な空間』 / 2004年 "Grandpa and Thomas"
* "The Silent One"『サンゴしょうのひみつ』 * "Bow down Shadrach"『帰ろう、シャドラック!』 * "The Halfmen of O"『惑星Oの冒険』 * "Brodie" * "The Video Shop Sparrow" * "The Transformation of Minna Hargreaves" * "Buddy"『バディ たいせつな相棒』 * "RECYCLED"『リサイクル コリンはエコ戦士』 * "Rocco" * "When the Kehua Calls" * "Chinatown Girl: The Diary of Silvey Chan, Auckland 1942" * "Old Drumble"追加 *
1982年ニュージーランド年間最優秀児童文学賞(現ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト小説賞)受賞作品
"The Silent One" (1981) by Joy Cowley ジョイ・カウリー 『サンゴしょうのひみつ』 百々佑利子訳 冨山房 1986年 |
その他の受賞歴 |
南太平洋上の島の小さな村に住むジョナシは、生まれつき耳が聞こえず、言葉もしゃべれない。赤ん坊のとき、ボートに乗せられ海の上をただよっていたジョナシを、ルイザがわが子のように育てた。しかし、ジョナシは村の大人たちに忌み嫌われ、12歳になってもブタ狩りに連れて行ってもらえない。子どもたちにはからかわれ、孤独だった。
物語の舞台は、イギリスの植民地だったころのポリネシア。村で生まれ村しか知らない人々は、迷信を信じ、ジョナシを恐れる。一方、村長の息子、アイサキはセブで教育を受けたことがあり、外の世界迷信にとらわれない。村長は息子がセブで見てきたものを信じるが、村人たちの気持ちも理解している。世代や立場による考え方の違いは、じゅうぶん納得できるものだった。 (赤塚きょう子) 2008年9月公開 |
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1992年 AIM Children's Book Awards(現ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト小説賞) 年間最優秀図書賞受賞作品
"Bow down Shadrach"(1991) by Joy Cowley ジョイ・カウリー 『帰ろう、シャドラック!』 大作道子訳 文研出版 2007 |
その他の受賞歴 |
クライズデールのシャドラックは、ハンナが生まれる前から一緒にいる大切な家族。だが、年老いたうえに怪我をしてしまったため、シャドラックを手放すことになった。ハンナと弟のマイキー、スカイは、両親からシャドラックは年老いた馬が余生をすごす場所、〈いこいの家〉へ行くのだと聞かされていたが、本当はドッグフード工場に売られていた。事実を知ったハンナたちは、シャドラックを連れ戻そうと決意。シャドラックを救おうと、トラックの荷台に勝手に乗り込んだり、バスに乗ったりしながら、子どもたちだけでドッグフード工場をめざす。
両親が子どもたちを傷つけたくない気持ちでついたうそ。しかし、小さな村では秘密はすぐにばれる。真実を第3者から知らされたハンナは傷つき、憤る。これまで両親の言うことを何ひとつ疑うことはなかったのだ。両親と仲直りできても、「両親にうそをつかれた」という事実は変わらない。これは、ハンナの子ども時代の終わりの物語でもある。 (赤塚きょう子) 2008年9月公開 |
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1983年ニュージーランド年間最優秀児童文学賞(現ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト小説賞)受賞作品
"The Halfmen of O" (1982)
by Maurice Gee モーリス・ジー 『惑星Oの冒険』 百々佑利子訳 岩波書店 1982 |
その他の受賞歴 |
ニックは夏休みを過ごしに、いとこのスーザンの家にやってきた。スーザンは生まれてまもなく謎の男にあざをつけられた影響か、周囲から変わった子だと思われている。到着早々、ニックは川で老人
にスーザンへのメッセージを託された。メッセージを受けた翌日、老人を訪ねたスーザンは、老人が持っていた奇妙な瓶から出る煙をかぎ、引き寄せられるように鉱山の中に消えてしまった。老人も自ら瓶の煙をかいで消える。急いであとを追ったニックが到着したのは、地球とは違う、宇宙のどこかにある惑星O(オー)だった。
人間は善の部分と悪の部分の両方を持ってこそ、バランスが取れるというのが作者の考えである。訳者あとがきにもあるが、善と悪ふたつの涙石は勾玉を思わせ、東洋思想の影響が感じられる。 (赤塚きょう子) 2008年9月公開 |
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2002年ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト小説賞 絵本部門 受賞作品
"Brodie" (2001) Joy Cowley ジョイ・カウリー 作 Chris Mousdale 絵 (未訳絵本) |
その他の受賞歴 |
『ブローディ』(仮題)
ぼくのクラスメートのブローディは、病気がちだけど、おもしろくて人気者。ヘリコプターの操縦士になるのが夢で、絵を描くのがすごく上手で、いたずらや、お笑いのセンスも抜群だ。ブローディが入院するたびに、ぼくたちは、お見舞いのカードを書いた。誕生日のプレゼントは、大きなスケッチブック。ブローディは喜んでくれた。
この話は、「友だちを亡くした子どもたちのために本を書いてほしい」という声に応えて書かれたという。悲しみと向き合う子どもたちの様子を、日常生活のひとこまを切り取るようにして語っているところが、ジョイ・カウリーらしい。現実から目をそらすことなく、悲しみの中にも愛があることを教えてくれる。 (大作道子) 2009年1月公開 |
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2000年ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト小説賞 絵本部門 候補作品
"The Video Shop Sparrow" (1999) Joy Cowley ジョイ・カウリー Gavin Bishop ガビン・ビショップ 絵 (未訳絵本) |
その他の受賞歴 |
『ビデオ屋さんのスズメ』(仮題) 夏まっさかりのニュージーランドの元日のこと。小学生の兄弟、ジョージとハリーは、休業中で鍵のかかったレンタルビデオ店に、一羽のスズメがいるのを見つけた。外に出ようと、ばたついている。二人は、スズメを助けてあげたいが、ビデオ店の主人は旅行中で連絡が取れないし、両親やまわりの大人たちは、「スズメの一羽ぐらい、どうってことない」と、すげない反応。でも、すがるような目で自分たちを見つめるスズメを、見殺しになんかできない。考えた末に、二人は、町長さんに直訴しにいく。
出しっぱなしのクリスマスツリー、ヒマワリ、半袖姿の人々。いかにも南半球の新年らしい風景の中で、夏休み中の男の子たちが、一羽のスズメを救おうと奮闘する。 (大作道子) 2009年1月公開 |
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2008年 ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト(YA)小説賞 YA小説部門受賞作品
"The Transformation of Minna Hargreayes" (2007) by Fleur Beale (未訳読み物) |
その他の受賞歴 |
都会で暮らす14歳の少女ミナ。家族とはあまりうまくいっていないけれど、何でも話せる仲よしの友人が3人いるし、学校で一番もてる2つ年上のボーイフレンド、セブと付き合い始めて、満ち足りた毎日を送っていた。自分の家に泊まりに来るようセブから誘われ、友人の家に泊まるとうそをついて出かけようとするが、なぜか母に感づかれ、セブと会うことを禁じられてしまう。
外出するときは、厳格な祖母がびっくりするようなフルメークをし、同世代の日本の女の子と比べるとずいぶん大人っぽく感じられたミナだが、家では料理も洗濯も何もしない。つまり、一見大人びて、言うことは立派だが、中身は単なるガキだった。それが、母親の不義、親友の裏切りといったどろどろとした愛憎劇に巻き込まれるうちに、急速に成長していく。 (赤塚きょう子) 2009年5月公開 |
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2003年 ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト小説賞 児童読み物部門受賞作品
"Buddy" (2002)
by V.M.Jones V・M・ジョーンズ 『バディ たいせつな相棒』 田中亜希子訳 PHP研究所 2008 |
やまねこ公式レビュー レビュー(月刊児童文学翻訳2008年3月号)
その他の受賞歴 |
ジョシュは13歳。スポーツ万能。でも水泳は例外。あるトラウマのせいで、全く泳げない。そんなジョシュが、自信家のクラスメイトに勝ちたい一心で、トライアスロンのジュニア大会出場を決める。自転車レースとマラソンには自信あり。問題の水泳は、クラス担任のミッチ先生に特訓をお願いし、熱く温かい指導のもと、めきめき上達していった。
思春期の少年ジョシュが、ありのままの自分を、生き生きと語っている。秘密や悩みを抱えながらも、自分らしく前向きに生きる姿に共感し、一気に読んだ。 (大作道子) 2009年5月公開 |
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2002年
ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト小説賞 児童読み物部門受賞作品
"RECYCLED" (2001)
by Sandy Mckay サンディ・マカーイ 『リサイクル コリンはエコ戦士』 赤塚きょう子訳 さ・え・ら書房 2005 |
やまねこ公式レビュー レビュー(月刊児童文学翻訳2003年5月号) その他の受賞歴 |
小学生のコリンは、環境問題に熱心な担任のリード先生に触発されてリサイクルにめざめ、身近なところからエコに取り組み始めた。
コリンが一人称で語るストーリー展開を楽しみながら、環境問題について学べる本だ。 (大作道子) 2009年5月公開 |
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1991年
AIM Children's Book Awards(現ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト小説賞)年間最優秀図書賞受賞作品
"Rocco" (1990) by Sherryl Jordan (未訳読み物) |
その他の受賞歴 |
16歳の少年ロッコは、原因不明の体調不良と悪夢に苦しんでいた。長い間行方不明の叔父や、老人病院にいる祖母と関係があるのだろうか? 気がつくと、ロッコは、悪夢で見た世界にタイムスリップしていた。荒涼とした谷に集落があり、原始的に暮らす人々がいる。洞窟に住み、狩猟と農業で食料を得る。治療にはハーブを使い、疫病を恐れている。
1990年にニュージーランドで発表されたファンタジー。タイムスリップした世界で展開する話が、落ち着いたトーンで語られている。 (大作道子) 2009年8月公開 |
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2003年
ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト(YA)小説賞 児童読み物部門 候補作
"When the Kehua Calls" (2002) by Kingi McKinnon (未訳読み物) |
その他の受賞歴 |
13歳のレウィはマオリ族の少年。都会で生まれ育ったが、父の失業を機に、両親の故郷である片田舎に引っ越してきた。着いて早々、荒れ果てた古い家の裏庭で、幽霊のようなものを目撃。この土地に不気味さを感じる。家は修繕され、快適な新居になるが、裏庭の不気味さは消えない。でも、両親は感じていないらしく、新生活に満足そうだ。
著者キンギ・マッキノン(1943-2006)は、レウィ同様、都会で生まれ、少年時代に田舎に移り、マオリ族のコミュニティで育ったそうだ。この作品も、自分の経験がモチーフだという。 (大作道子) 2009年8月公開 |
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2006年
ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト(YA)小説賞 児童読み物部門 候補作
"Chinatown Girl: The Diary of Silvey Chan, Auckland 1942"(My Story シリーズ) (2005) by Eva Wong Ng (未訳読み物) |
その他の受賞歴 |
12歳の少女シルビーが1942年に書いた日記形式の作品。シルビーは、大都市オークランドの小さなチャイナタウンに住む中国人移民3世だ。勤勉な両親や同胞たちと、中国の伝統を守りながら慎ましく暮らす一方で、ニュージーランドの学校生活も楽しんでいる。しかし、戦争の暗い影が次第に濃くなり、日本軍の接近におびえる日々だ。
この作品を読んで、第2次大戦におけるニュージーランドの最大の敵国が日本だったことを初めて知り、衝撃を受けた。中国人差別政策が撤廃されたことも、イギリス連邦国家であるニュージーランドがアメリカと手を取り合ったことも、日本という共通の敵を持ったがゆえのことだったのだ。日本人にとって、非常に重いテーマを扱った作品だ。 (大作道子) 2009年8月公開 |
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2009年
ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト(YA)小説賞 児童書読み物部門受賞作品
"Old Drumble" (2008) by Jack Lasenby (未訳読み物) 追加 |
その他の受賞歴 2009年エスター・グレン賞候補作 |
『どえらい牧羊犬、ドランブル』(仮題)
1930年代のある年、ニュージーランド北島の開拓地に暮らす少年ジャックは、小学校入学前の夏を満喫していた。何よりの楽しみは、ときどきやってくる家畜追いのアンディと牧羊犬のドランブルに会うことだ。アンディは、何十年も行動をともにしてきたドランブルの武勇伝の数々を語ってくれる。
「古き好き時代」という言葉がぴったり合いそうな雰囲気を持った作品。1930年代のニュージーランドの田舎の暮らしに思いをはせながら、ゆっくり味わった。大恐慌で厳しい時代だったに違いないが、現代にはない素朴さや温かさ、大らかさ、それに、荒っぽさやたくましさを感じさせてくれる。 (大作道子) 2009年9月公開 |
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