フィンランドの賞レビュー集(その2)一覧 |
このレビュー集について 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メルマガ「月刊児童文学翻訳」や「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。
やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集
トペリウス賞(フィンランド) レビュー集 |
★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★
最終更新日 2008/11/01(1点追加)
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"Sokerista, kukkasista" * "Aavikoiden seikkailija"
"Sokerista, kukkasista"(2006) by Mimmu Tihinen (未訳読み物) |
その他の受賞歴 |
『お砂糖とお花で』(仮題)
メ
リッサが帰ってこない。図書館の前にいるのをだれかが見たのが最後。ママとわたしを、どれだけ心配させれば気が済むの。わたしはミントゥ、15歳。メリッサは双子の姉だけど、二卵性だからちっとも似ていない。わたしの身長はメリッサより低いのに、体重は同じなんだから。美人で明るいメリッサは、学校でも人気者。
つらい物語だ。かけがえのない存在を失ったミントゥの悲しみが、読者の心に突き刺さる。読み始めたときは、メリッサの失踪に犯罪がからむなど社会性のある展開になるのかとも思ったが、そうではなかった。ミントゥの語りで進むこの物語は、常に彼女の心のうちに焦点が合っている。本書のタイトルは、マザーグースの「女の子は何でできているの?」という詩の一節。タイトルが示すとおり、少女の心のありようを、みずみずしい筆致で描いた作品である。 (古市真由美) 2008年8月公開 |
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"Aavikoiden seikkailija"(2001) by Raili Mikkanen ライリ・ミッカネン (未訳読み物) |
その他の受賞歴 |
『砂漠の冒険者』(仮題) 19世紀、フィンランドがロシア帝国内の大公国だった時代。文武両道にたけ、才気あふれるフィンランド人青年ユリヨ・ヴァリン(Yrjo Wallin [Yrjö])は、故郷をあとにアラビア半島へ向かう。西欧では未知の部分が多いこの地域の、詳細な地図を作ろうというのだ。同時に、アラビアのある一族に伝わる貴重な書物を、不正に入手した者から奪い返すという使命も帯びていた。実在した冒険家の若き日々を描く歴史小説。
事実を基にした冒険譚だ。ユリヨが残した書簡やメモに取材し、生涯に3回アラビアへ赴いた彼の、最初の旅を物語にしている。ロシアのペテルブルクで医学を修め、アラビア語も習得したユリヨは、名を変え、中央アジア出身のイスラム教徒に変装して旅をする。もともと肌が浅黒く、目も髪も黒かったというのだが、西欧人が変装を貫き通すのは、並大抵のことではなかったはず。これだけでも十分に大冒険といえるのではないか。 (古市真由美) 2008年11月公開 |
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フィンランドの賞レビュー集(その2)一覧 トペリウス賞 ルドルフ・コイヴ賞 |
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最終更新日 2009/06/18 レビューを1点追加
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"Herra kuningas"『ちいさなおうさま』
* "Mykka tytar〔Mykkä tytär〕"
* "Eelis mokilla〔Eelis mökillä〕" * "Tatun ja Patun oudot kojeet"(リンク)
* "Taikuri Into Kiemura"(リンク) *
"Risto Rappaaja ja kauhea makkara 〔Risto Räppääjä ja kauhea
makkara〕"←追加
"Herra kuningas" (1986) Raija Siekkinen ライヤ・シエッキネン文 Hannu Taina ハンヌ・タイナ絵 『ちいさなおうさま』 さかいれいこ訳 冨山房 1989 (邦訳絵本) |
その他の受賞歴 |
ブラティスラヴァ世界絵本原画展賞のレビュー集を参照のこと |
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1985年ルドルフ・コイヴ賞(画家カーリナ・カイラが全業績に対し受賞)
"Mykka tytar〔Mykkä tytär〕"(1986) by Sirkka-Liisa Heinonen シルッカ=リーサ・ヘイノネン illustrations by Kaarina Kaila カーリナ・カイラ (未訳絵本) |
その他の受賞歴 |
『口のきけない娘』(仮題) 地の精の夫婦が授かった娘は、ほかの子と変わらない姿なのに、口をきくことだけはできませんでした。娘は成長し、すばらしい布を織る働き者になります。やがて娘の両親は年老いて、遠い影の国へ旅立つときを迎えました。父親はひとりで先にいきますが、母親は自分の足で歩けず、娘が背負っていくことになります。旅の途中で、娘は白いひげの小人に出会い……。
80年代のフィンランドを代表する挿絵画家の一人、カーリナ・カイラの美しい絵が堪能できる作品。カイラの持ち味は、やわらかな色合いによる、叙情的で幻想的な雰囲気だ。そんなカイラの画風と、クラシカルな民話風の物語とが、たがいによく引き立てあっている。 (古市真由美) 2008年12月公開 |
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"Eelis mokilla〔Eelis mökillä〕"(2006) by Tittamari Marttinen illustrations by Anne Peltola (未訳絵本) |
その他の受賞歴 |
『夏の家のエーリス』(仮題) 小さな男の子エーリスの両親は、車にどっさり荷物を積み込んでいます。これから一家そろって、「夏の家」へ行くのです。夏の家とは、町から離れた湖のほとりにある、シンプルな木造のコテージ。いとこの女の子イーリスの家族もやってきて、楽しい夏休みが始まります。さあ、今年はどんなすてきなことが待っているかな?
北国フィンランドにつかのま訪れる夏の美しさと、夏の到来を心待ちにしている人々の思いとが、ストレートに伝わってくる作品です。この絵本のメッセージはただひとつ、「夏っていうのは、楽しむためにある季節!」ということ。とはいえ、「夏の家」での毎日には、特別なイベントが用意されているわけではありません。長く暗い冬のあと、ようやく空に戻ってきてくれた太陽の光を全身で受け、夏そのものを味わうために、人々は森や湖に囲まれてのんびりと過ごすのです。泳いだり、釣りをしたり、ソーセージを焼いたり、歌ったり踊ったり、絵本のすべてのページで、子どもも大人も、このすばらしい季節を満喫しています。みんな、いまは夏だというだけで、笑顔になってしまうのです。実際、夏にフィンランドを訪れると、誰もがにこにこしているんですよ。 (古市真由美) 2009年3月公開 |
2007年ルドルフ・コイヴ賞 子ども審査員団が選ぶ優秀作候補
"Tatun ja Patun oudot kojeet" (2005) by Aino Havukainen アイノ・ハブカイネン and Sami Toivonen サミ・トイボネン 『タトゥとパトゥのへんてこマシン 14のおもしろ発明品を一挙大公開!』 いながきみはる訳 偕成社 2007(邦訳絵本) |
その他の受賞歴 |
フィンランディア・ジュニア賞のレビュー集を参照のこと |
"Taikuri Into Kiemura" (2007) by Jukka Itkonen illustrations by Christel Ronns 〔Christel Rönns〕 (未訳絵本) |
その他の受賞歴 |
フィンランディア・ジュニア賞のレビュー集を参照のこと |
「リストとゆかいなラウハおばさん」シリーズのうち、2000年に出版された "Risto Rappaaja ja Nuudelipaa 〔Risto Räppääjä ja Nuudelipää 〕" が2001年ルドルフ・コイヴ賞(*注)を受賞 している。下のレビューは本シリーズの2作目にあたる。(*注 2001年のルドルフ・コイヴ賞においては、Aino Havukainen & Sami Toivonen による "Veera ja Menopelit"(2000) も同時に受賞している)
"Risto Rappaaja ja kauhea makkara 〔Risto Räppääjä ja kauhea
makkara〕" (1998) by Sinikka Nopola シニッカ・ノポラ, Tiina Nopola ティーナ・ノポラ文 illulstrated by Aino Havukainen アイノ・ハブカイネン and Sami Toivonen サミ・トイボネン 『リストとゆかいなラウハおばさん2 ぶつぶつソーセージの巻』 末延弘子訳 小峰書店 2008 (邦訳読み物) |
本シリーズの、その他の受賞歴 |
リストは、ママが仕事で海外に行っている間、ラウハおばさんと一緒に暮らしている。独身のラウハおばさんは電話のセールスレディ。秋の新商品にと、日持ちするソーセージを探しはじめた。下の階に住むミスター・リンドベリが、ブダペストの屋外マーケットに「つて」があると言う。三人は買い出しにでかけることになったのだが、リストから話を聞いただけのラウハおばさんは、まさか海外まで行くとは思わず飛行機に乗り込み、ミスター・リンドベリは機内食を食べ始めた頃に飼い犬をほったらかしてきたことを思い出し、旅は最初からドタバタ続き。さて、無事にソーセージの買い付けができるのか!? 1巻の『リストとゆかいなラウハおばさん1 なぞのきょうはく状の巻』(レビューはこちら)を読んだときに、ラウハおばさんって最高におもしろいと思ったけれど、2巻でも期待通りに、いや期待以上にやらかしてくれる。飛行機に乗ってもまだ、飛行機の形をしたソーセージ売り場だと思い込んでいるし、ブタペストで二人乗りリフトに乗ったときも、安全バーを降ろさないまま出発して大騒ぎになる。甥のリストから「おばさん、フィンランドにいるよりものびのびしてる」と思われる始末だ。そこから事件が発生して、1巻に負けず劣らずの盛り上がりに発展していく。
(植村わらび) 2009年6月公開 |
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