メニュー読書室レビュー集特設掲示板レビュー集
やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集> MWA(エドガー)賞 児童図書部門/ヤングアダルト小説部門
 

★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★

 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

MWA(エドガー)賞児童図書部門/ヤングアダルト小説部門(アメリカ)
レビュー集


The Edgar Allan Poe Awards BEST JUVENILE / BEST YOUNG ADULT

★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★

最終更新日 2008/12/01 新規公開  

 MWA(エドガー)賞リスト(やまねこ資料室)   MWA(エドガー)賞の概要

このレビュー集について
 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メ ールマガジン「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。


"The Missing Manatee" "The Kidnapping of Christina Lattimore" "Speak"


2006年児童図書賞候補作

"The Missing Manatee" (2005) Cynthia DeFelice作(未訳読み物)
その他の受賞歴

『消えたマナティー』(仮題)

 春休みのある日、11歳のスキートは、別居中の父親に母親が電話で離婚を切り出しているのを聞いてしまう。スキートは家を飛び出し、小型ボートでメキシコ湾に出かけた。気の晴れないまま川を遡って帰ってくる途中、マナティーの死体を見つける。それも銃で撃たれていた。マナティーは保護動物だ。スキートは保安官事務所に知らせに行った。だが、保安官代理と戻ってきたときにはマナティーの死体は消えていた。死体がないと捜査はできない。無害で愛らしいマナティーを一体誰が殺したのだ? 犯人を許せず、スキートは自分で犯人を探すことにした。

 スキートの母親は上昇志向が強く、今の生活に満足していない。かたや父親は釣りのガイドで、釣りをこよなく愛し、あとは仲間と酒を飲みながらカードゲームさえできれば満足という男で、お世辞にも家庭的な父親とは言いがたい。とはいえ、スキートにとっては大事な父親だ。いや、ニックネームで呼び合うほど仲がよく、父親というより友だちのような付き合い方をしている。スキートが目下英雄視しているのは、父の友人のターポン釣りの名人だし、将来自分も父親たちと同じような釣りのガイドになりたいと思っている。ところが母親は、息子にはいい学校を出ていい職に就いて欲しいと願っていた。スキートにも両親が合わないのは分かっているが、それでも母親が結婚生活を修復する気がないという事実はショックだった。そんな家庭の問題から気を紛らわせるかのように、スキートはマナティーの死体探しにのめりこんでいく。やっと見つけた死体の痕跡から行き着いた犯人とおぼしき人物は、スキートには思いもよらない人だった。
 彼が犯人のはずはない。でも証拠は彼を指している。確かめたい、でも確かめるのが怖い。スキートは悩みに悩む。そんなとき手を差し伸べてくれたのは、祖母だった。このおばあちゃんが実に格好いい。好奇心旺盛で、おしゃれに余念がなく、カラオケ大好き人間。お茶目なところもあれば年月を重ねた知恵も持ち合わせており、何事も見逃さない鋭い目で家族を見守っていて、余計な口出しはしないが、いざという時に手を差し伸べてくれる。スキートの悩みも解決してあげるのではなく、助言をした後はスキート自身で解決するよう背中を押し、見守っている。この距離感が絶妙だ。こんなおばあちゃんに見守られながら大人への階段を一歩一歩登っていくスキートは幸せだろう。

(吉崎泰世) 2008年12月公開

▲TOPへ  ★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★ このレビュー集について

1980年児童図書賞受賞作

"The Kidnapping of Christina Lattimore" (1979)  Joan Lowery Nixon ジョーン・ラウリー(ローリー)・ニクソン作
『クリスティーナの誘拐』 宮下嶺夫訳 評論社 1984 (邦訳読み物)
その他の受賞歴

(このレビューは、原書版を参照して書かれています)

『クリスティーナの誘拐』

 高校生のクリスティーナは裕福な家の一人娘。ところがある日、いきなり誘拐されてしまった。見知らぬ場所に連れていかれたクリスティーナは、数日間にわたって恐怖の監禁生活を強いられる。ようやく解放されてホッとしたのも束の間、驚きの事実が明らかになった。なぜか誰もが、この誘拐はクリスティーナによる自作自演だと信じこんでいたのだ。自分を陥れたのはいったい誰なのか? 無実の罪を晴らすために、クリスティーナは自らの手で犯人をつきとめようと決心する……。 

 スピード感あふれる展開で物語はすすみ、ページをめくる手がとまらない。主人公の身に迫る恐怖にドキドキしながら犯人を推理するおもしろさは、ミステリーの醍醐味だろう。それに加えて、ヤングアダルト小説としての読みどころも盛り込まれている。お嬢さん育ちのクリスティーナは、事件に立ち向かう過程で、家族や身近な人々を新たな目で見るようになり、自分自身の甘えと強さに気づく。物語の最後、一皮むけたクリスティーナがまぶしい。プロットのおもしろさのみならず、少女の成長も描かれていて、読後感さわやかな作品である。

(佐藤淑子) 2008年12月公開

▲TOPへ  ★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★ このレビュー集について

2000年YA小説賞候補作

"Speak" (2000)  Laurie Halse Anderson ローリー・ハルツ・アンダーソン作
『スピーク』 金原瑞人訳 主婦の友社 2004 (邦訳読み物)
その他の受賞歴
2000年プリンツ賞オナー
1999年全米図書賞候補作
1999年ゴールデンカイト賞フィクション部門受賞作

ゴールデンカイト賞レビュー集を参照のこと

▲TOPへ  ★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★ このレビュー集について

 MWA(エドガー)賞リスト(やまねこ資料室)   MWA(エドガー)賞の概要

 メニュー読書室レビュー集特設掲示板レビュー集
 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集> MWA(エドガー)賞 児童図書部門/ヤングアダルト小説部門

 copyright © 2008 yamaneko honyaku club