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月刊児童文学翻訳

─2004年11月号(No. 64)─

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版+書店街>
http://www.yamaneko.org/
編集部:mgzn@yamaneko.org
2004年11月15日発行 配信数 2350

もくじ

 ◎プロに訊く:第24回 小竹由美子さん(翻訳家)
 ◎注目の本(邦訳読み物):『ダストビン・ベイビー』
                  ジャクリーン・ウィルソン作/小竹由美子訳
 ◎注目の本(未訳読み物):"Dragonkeeper" キャロル・ウィルキンソン作
 ◎賞速報
 ◎イベント速報
 ◎世界のお祭り:第1回 ガイ・フォークス・デー(イギリス)
 ◎読者の広場:読者の方からのメールをご紹介します。

●このページでは、書店名をクリックすると、各オンライン書店で詳しい情報を見たり、本を購入したりできます。

 

●プロに訊く●第24回 小竹由美子さん(翻訳家)

 ジャクリーン・ウィルソンの新刊2冊『タトゥーママ』『ダストビン・ベイビー』(いずれも偕成社)、そして『猫に名前はいらない』(A・N・ウィルソン作/白水社)と続けて訳書を上梓され、ご活躍中の小竹由美子さんにお話をうかがいました。メーリングリストでインタビューを行ったのですが、質問に対する丁寧なご回答から翻訳者としての姿勢、パワーが強くうかがえ、参加したメンバーの翻訳学習意欲に火がついたほど。お時間を割いてくださった小竹さんに深く感謝いたします。

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【小竹由美子(こたけ ゆみこ)さん】
 1954年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒業。偕成社の『みそっかすなんていわせない』(ジャクリーン・ウィルソン作/ニック・シャラット絵)で翻訳家デビュー。現在は、児童書のみならず、YA、一般書など、幅広い分野で活躍している。香川県在住。

【小竹由美子さん訳書リスト】
 http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/ykotake.htm

【小竹由美子さんインタビュー ロングバージョン】
 http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ykotake.htm

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Q★デビュー作が刊行されたいきさつを教えていただけますか。

A☆ビギナーズ・ラックです(笑)。書店で何気なく "The Left-Outs"(『みそっかすなんていわせない』)のペーパーバックを買って読んでみると、これがすごく面白い! 勢いで全訳し、すぐ出版社に持ち込みをしたのがデビュー作になりました。イギリスでも注目されていたジャクリーン・ウィルソンの作品を、ちょうど出版社サイドでも検討していたところだったようで、非常に幸運だったと思います。ウィルソンの作品は基本的にすべて好きなので、その好きな作家の作品で、翻訳のキャリアをはじめられたのはとにかくラッキーでした。

Q★全訳されて持ち込みというのもすごいですね。いつごろから翻訳家を目指されたのですか。

A☆翻訳をやりたいと思ったのはそれほど早い時期ではありません。私は、大学を卒業後、すぐに結婚して夫の郷里の香川に住むようになりました。子どもも生まれ、専業主婦で子育てをしていたんです。そのころ、地域情報誌で英語サークルの存在を知り、もともと香川に友人もいませんでしたので、おしゃべり会のように楽しんで通いはじめました。子どももその後に2人生まれ、毎日が育児中心でした。ところが、英語サークルのひとりに、「本気で勉強したいなら」と、自治体が行っている語学クラスに誘われたんです。講師の先生がすばらしい授業を展開してくださったおかげで、英語の力がめきめきついていきました。子どもに手がかからなくなったころには、英語を活かして予備校の非常勤講師の職を得ることもできました。もともと、翻訳に興味があったこともあり、原書がすらすらと読めるようになると共に、自分が惚れ込んだ作品を訳したいという気持ちを持つようになり、そのころから、雑誌の翻訳コンテストに応募を始めたのです。

Q★翻訳コンテストは、やまねこ翻訳クラブでも挑戦しているメンバーが多いです。結果はいかがでしたか。

A☆なかなか入賞するところまでいきませんでした。それでも2年ほど応募は続けていたんです。そんな時、友人が偕成社を紹介してくれました。編集者の方に、何か訳したものを見せてほしいと言われ、絵本の翻訳をお見せしました。「いい作品を見つけたら見せてください」と声をかけてくださったので、"The Left-Outs" と出会った時に「ええいっ!」と全訳したものをお送りしました。決定のお返事までに数か月かかりましたが、決まった時は本当に天にものぼる心地でした!

Q★一般書も児童書でデビューされてから2年後に刊行されています。この作品も持ち込みがきっかけですか。

A☆純粋な持ち込みではないのですが、持ち込みがきっかけでお話をいただけました。ビギナーズ・ラックに気を良くした私は、よしっとばかり、これはと思う本を探し出しては、カラーの合いそうな出版社に送りはじめました。児童書だけではなく、一般書もです。音沙汰もないのがほとんどなので、たまに編集者から手書きの断り状が届くと、それだけで嬉しくなったほどです。ドロシー・アリスンは惚れ込んだ作家のひとりですが、彼女の作品を送った時に、励ますような一言をくださったひとりが晶文社の編集者でした。その方から後に連絡をいただいたのが、『なにもかも話してあげる』。なんと作家はドロシー・アリスンではありませんか! 思いがけない偶然(編集者の方は気づかれてなかった)に小躍りしました。

Q★作品の持ち込みを通して、編集者の方々とつながりができていったのですね。ご自身にとって印象に残る作品はどんなものがありますか。

A☆初めての出版社と仕事をした作品はどれも印象に残っています。白水社とのご縁も全訳の持ち込みでした(笑)。結局、その作品の企画は通らなかったのですが、訳文は気に入っていただけて、リーディングを依頼されるようになりました。『嵐をつかまえて』(ティム・ボウラー作)は作者にメールを出して版権が売れていないことを確認し、持ち込みしたところ企画が通りました。ティム・ボウラーさんの作品はどれも大好きです。
 そして作品はもちろんのこと、最初に出会った偕成社の編集者の方は、翻訳者としての私を育ててくれた大恩人です。デビュー作もこの方のおかげで世に出ました。その後も自社で通らなかった作品でも良いと思ったものは、別の出版社に話をいれてくださったこともあります。おかげさまで、次の出会いが生まれ、つながりができていきました。とてもありがたいです。

Q★どのようなペースで翻訳をされていますか。また、よろしければお使いの辞書など環境を教えてください。

A☆だいたい自分で予定をたてて翻訳をしています。たとえば、ウィルソン作品だと、1日10ページは進みます。一般書だと5ページくらいでしょうか。おおざっぱに予定をたて、できなかった日は翌日に取り戻すようにしています。予定よりは早めに仕上げて練り上げに時間をかけるようにしているんです。インターネットが常時接続になり、調べ物に費やす時間がずいぶん減りました。シノプシス作成だと、そうですね、他の予定が何も入っていなければYA作品なら朝から読んで1日で仕上げることはできます。
 英和辞書はパソコンにリーダーズとリーダーズ・プラス、英英辞書はコウビルドですね。それに平凡社の百科事典をいれています。常時立ち上げているのはリーダーズと、あとネット上のアルクの英辞郎(これは文例が豊富で便利!)。最近教えていただいたオンラインのスラング辞書、 http://www.urbandictionary.com/ も優れものです。英英は http://www.onelook.com/ をよく使っていますね。それから何といっても必要不可欠なのは検索エンジンの Google です。調べ物だけじゃなく、私はよく辞書代わりに使っています。あと、翻訳原稿はワープロソフト Word で仕上げています。

Q★話は変わりますが、ロンドンに行かれた時、ジャクリーン・ウィルソンさんにお会いになられたそうですね。

A☆はい! 私は海外経験がほとんどなく、新婚旅行でハワイに行ったことと、9年前に住んでいる町の姉妹都市に行ったことぐらいしかありません。いつかロンドンに行きたいと思っていて2年ほど前に出かけました。その時、ウィルソンさんにお手紙を出したところ、滞在中に1日だけ空いている日があり、お会いできました。英語がうまく話せないことを手紙でお伝えしたのですが、「あーら、私なんて、日本語は片言もできませんよ」というお返事が来ました(笑)。そのお返事の印象どおり、終始にこにことなさって、ゆっくり言葉を選んでお話ししてくださり、とてもリラックスしておしゃべりを楽しめました。いつか日本にも来ていただきたいです。

Q★本当ですね! では最後に翻訳学習者にアドバイスをお願いします。

A☆英語力はもちろんとして、やはり大事なのは日本語力だと思っています。英語力も受験英語はあなどれません。予備校講師の仕事をしていたころ、必要に迫られて文法をきっちり勉強したのですが、翻訳をする上でとても役立ちました。日本語は、日ごろから言葉を蓄積しておくのがいいのではと思います。小説、テレビ、マンガ、道端での会話、そしてインターネット。あらゆる場で渦巻いているさまざまな言葉に常にアンテナをはっておくことは大事です。バラエティー番組なども、会話を訳すのに役立ったりするんです。それから、好きな作家をじっくり訳す、というのはとてもいい勉強になります。いまも私は時間があればそうしていますし、いつか自分が訳したいと思っていた本が刊行された時はざっくりとつきあわせをして、あ、ここは私のほうがいいぞ(笑)とか、訳しにくかったこの部分、なるほどこうきたか、とこれもまた勉強になります。翻訳者志望の方は、ぜひぜひあきらめずに、愛する作品の訳者となれる日を目指してください。

■■これから刊行される小竹由美子さんの翻訳書■■

『シークレッツ(仮題)』(ジャクリーン・ウィルソン作/偕成社)
『プロジェクトX(仮題)』(ジム・シェパード作/白水社)
『ナターシャ(仮題)』(デイヴィッド・ベズモーズギス作/新潮社)

(取材・構成/林さかな)

 
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プロに訊く   『ダストビン・ベイビー』   "Dragonkeeper"   賞速報   イベント速報   世界のお祭り   読者の広場   もくじ



●注目の本(邦訳読み物)●

―― ごみ箱から始まる人生なんて!? ――

『ダストビン・ベイビー』  ジャクリーン・ウィルソン作/ニックシャラット絵/小竹由美子訳
偕成社 定価1,470円(税込) 2004.08 222ページ ISBN:4037267004
"Dustbin Baby" text by Jacqueline Wilson, illustrations by Nick Sharratt
Doubleday, a division of Transworld Publishers Ltd, 2001

 エイプリルは、生まれた直後にピザ屋の裏のごみ箱に捨てられていた「ダストビン・ベイビー」。そんな彼女にとって、誕生日は、自分がごみ箱に捨てられていたことを再認識する辛い日でしかない。そして、今日は14歳の誕生日。里親からの誕生祝いは、みんなが持っている念願の携帯電話ではなかった。このことをきっかけに、エイプリルはその日学校へは向かわず、自分の歴史をたどる小さな旅に出る決心をする。
 物語は、エイプリルが、これまで関係のあった人たちを順番に訪問していきながら、そのころの自分を語るという形で進められていく。一旦は養父母に引き取られたものの、その後施設と里親の間を転々とする形で育ったエイプリルは、運にも恵まれずいろいろな事件に巻き込まれ、生い立ちには、汚点ばかりが積み重なる。
 エイプリル自身が、赤ん坊だったころのことを覚えているわけもなく、知っているのはどれも、自分が拾われたときの新聞記事で読んだ話や、養父母から繰り返し聞かせてもらったことばかり。エイプリルには、どこまでが真実でどこからが自分の思い込みなのか、判断がつかない。
 ある程度大きくなってからのことは自分で覚えているものの、やはり想いは、「赤ん坊だったころの自分」へ戻っていってしまう。ほんとうのお母さんはどうしてわたしを産んだのだろう? なぜごみ箱に捨ててしまったんだろう? 今どうしているんだろう? 「産みの母」を想うエイプリルの気持ちが、痛いほどに伝わってくる。人間はやはり、自分のルーツがわからないと、今の自分を受け入れることができないのだな、としみじみ感じさせられる。どんなに現在の友だちや里親が愛してくれても、過去がわからないエイプリルは現在の自分に自信が持てないのだ。
 作者ウィルソンには、「辛い境遇におかれた子ども」を取り上げた作品が多い。本作もかなり辛い境遇の子どもが主人公であるが、明るいユーモアも随所にちりばめられ、エンディングには奇跡的な出会いも用意されているので、読者としても救われた思いがする。また、邦訳も、今時の子どもの口調がふんだんに取り入れられている。悩みながらも懸命に生きていく子どもたちの様子が、原書そのままに伝わってくる。

(村上利佳)

 

【文】 ジャクリーン・ウィルソン(Jacqueline Wilson)

1945年、イギリスのバースに生まれる。ジャーナリストを経て、作家活動を開始。子どもの抱える悩みを子ど もの目線で描いた多数の作品は、イギリスの子どもたちの絶大な支持を得ている。本作と同時に邦訳発表された『タトゥーママ』は、ガーディアン賞を受賞し、カーネギー賞HC、子どもの本賞候補作品にも選ばれた。

【訳】小竹由美子(こたけ ゆみこ)

本誌今月号「プロに訊く」参照。

【参考】
▼英国 Randomhouse サイト内 ジャクリーン・ウィルソン公認ウェブサイト
http://www.kidsatrandomhouse.co.uk/jacquelinewilson/

▽ジャクリーン・ウィルソン作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/w/jwlsn.htm

 

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プロに訊く   『ダストビン・ベイビー』   "Dragonkeeper"   賞速報   イベント速報   世界のお祭り   読者の広場   もくじ

 

●注目の本(未訳読み物)●

―― 古代中国を舞台にした異色ファンタジー ――

龍守(も)りの少女』(仮題)
 キャロル・ウィルキンソン作
"Dragonkeeper" by Carole Wilkinson
Black Dog Books 2003, ISBN 1876372192
343pp.

★2004年オーストラリア児童図書賞低学年向け部門受賞作

 舞台は前漢時代の中国。帝国の辺境にある領主館で、11歳の少女は物心ついたころから奴隷として暮らしていた。身寄りもなく自分の名前すら知らない。横暴な主人に仕える生活はつらいことも多かったが、明るく前向きな少女は日々の小さな楽しみを大切に生きていた。
 少女の主人は、皇帝から「龍守(も)り」を任されており、館では年老いた龍が飼われていた。初めはぞんざいながらも自分で世話をしていた主人だが、やがてすべてを少女に押し付けるようになる。劣悪な環境で弱っていく龍のために、少女はおそれる気持ちを抑えて、できる限りのことをしようと心を砕くのだった。
 ある日少女は、邪悪な目的で龍を狙う狩人の存在を知り、何かに導かれるかのように龍を連れて館から逃げ出した。すると龍は、ある目的のため、さいはての地にある「海」へ行きたいという。こうして奴隷の少女の、冒険の日々が始まった。
 孤独な少女と龍が幾多の困難を乗り越えて旅をする、ファンタジーの王道ともいえるストーリーだが、古代中国を舞台にしたことでひと味違った世界を楽しめる。物語はじょじょに加速し、後半では文字通り息もつかせぬ展開に引きこまれるように読んだ。もともとは子ども向けノンフィクション作品を多く書いている作者だけに、細部にも調査の行き渡った丁寧な作品作りがされているところも好ましい。また、孤高の存在として描かれがちな龍という生き物が、本作では飄々としているところあり、いたずら心あり、同時に深遠な言葉で少女を導くという魅力的なキャラクターになっている。テンポの速い展開の中で、少女の生真面目さと龍のしたたかさが絶妙なバランスを見せる。
 人には運命というものが決められていて、誰もがみなその枠の中で生きているという考え方がある。それでもその運命を自覚して生きることと、自覚しないまま生きることでは大きな違いがあるだろう。少女がたどる冒険の道は、自分の運命を知り、受け入れ、せいいっぱい生き抜くためのものだった。
 エンタテインメントとメッセージ、両方に胸が熱くなる、密度の濃い物語だ。

(森久里子)

 

【文】Carole Wilkinson(キャロル・ウィルキンソン)

1950年、英国ダービーシャー生まれ。現在はオーストラリアのメルボルン在住。生物化学研究所での研究助手を経て、40歳を前に作家を目指して大学に再入学。歴史をテーマにしたノンフィクション作品を数多く発表している。主な著作に "Black Snake: The Daring of Ned Kelly"(2003年オーストラリア児童図書賞ノンフィクション部門オナー作)、"Alexander the Great: Reckless Conqueror" など。


【参考】
▼キャロル・ウィルキンソン公式ウェブサイト
http://home.iprimus.com.au/carolew/index.html

▽オーストラリア児童図書賞受賞作リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/au/cbca/index.htm

 

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●賞速報●

★2004年全米図書賞(児童書部門)候補作発表(受賞作の発表は11月17日)
★2004年カナダ総督文学賞(英語作品)候補作発表(受賞作の発表は11月15日)
★2004年度ウィットブレッド児童文学賞候補作発表(受賞作の発表は2005年1月6日)

海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」をご覧ください。



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●イベント速報●

★展示会情報

軽井沢絵本の森美術館
「愛の絵本展〜家族、友達、恋…描かれた愛の形をめぐって〜」他
 

★セミナー・講演会情報

JBBY児童文学講座 さくまゆみこ氏・こだまともこ氏対談
「子どもの本・翻訳のおもしろさとむずかしさ」他
 

★イベント情報

ベルギーフランドル交流センター
「オランダ語文学のアフタヌーン(朗読と音楽の会)」他
 
 
 詳細やその他の展示会・セミナー・講演会情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、空席状況については各自ご確認願います。

(井原美穂/笹山裕子/清水陽子)



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●世界のお祭り●第1回 ガイ・フォークス・デー(イギリス)
11月5日

 
 ご好評いただいておりました「世界の児童文学賞」は前回をもって終了し、今月より新コーナー「世界のお祭り」を開始します。これからは「世界のお祭り」と「お菓子の旅」を交互に連載していきます。
 さて、海外文学を読んでいると、耳慣れないお祭りがでてきますね。このコーナーでは、どんなお祭りなのか、その起源やお祝いのしかたなどをご紹介していく予定です。

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「ガイ・フォークス・デー(Guy Fawkes Day)」の起源は、1605年までさかのぼります。当時のイングランド王ジェームズ1世は、カトリックと清教徒を排除し、英国国教会を維持していくことを宣言します。これに不満を抱いたカトリック教徒のガイ・フォークスらは、議会の開会式に臨席する予定の国王と皇太子の暗殺を謀って、国会議事堂を爆破しようと計画しました。しかし、開会式の前日、11月5日に計画は発覚し、逮捕されたガイ・フォークスらは翌年処刑されました。爆破計画を失敗に終わらせ、大事件を未然に防ぐことができたのを記念して行われるようになったのが、ガイ・フォークス・デーのお祭りです。
 この日が別名、「花火の夕べ(Fireworks' Night)」「焚き火の夕べ(Bonfire Night)」とも呼ばれるのは、花火を打ち上げ、大きな焚き火をたいてガイ・フォークスの人形を焼くという、このお祭りの祝い方に関係があります。子どもたちは、ぼろ布で作ったガイ・フォークス人形を引き車などに乗せて通りを練り歩き、「ガイのために小銭を(Penny for the Guy?)」と、通行人にねだります。そうして得たお金で、子どもたちは、自宅や公園で使う花火を購入します。また花火大会では、ガイたちが企てた陰謀に火薬が使われたことを忘れないようにと、夜空に大輪の花火が打ち上げられ、大がかりな移動遊園地や、的当て、輪投げのような出店も並びます。
 そして、このお祝いに欠かせない食べ物が、焼いた皮付きポテトにチーズなどをトッピングした「ジャケットポテト」や糖蜜タフィーなど。ソーセージやマシュマロも「焼いて食べる」のがこの日のやり方です。クライマックスには大きなガイ人形が焚き火にくべられ、祭りは終焉を迎えます。
 ガイ・フォークス・デーはいろいろな物語の中に登場してきます。等身大の人形たちが人間と同じように命を持って日常生活を送る「メニム一家の物語」シリーズ第2巻『荒野のコーマス屋敷』(シルヴィア・ウォー作/こだまともこ訳/講談社)には、こんなくだりが出てきます。

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「燃やすに決まってるじゃん」ジョーはいう。「おまえ、こわくなったのかよ。ガイ・フォークスの人形ってのは、燃やすためにあるんだぞ」
 スービーはくたっと横になったままでいた。もし略奪者の手から家族を救おうと思ったら、自分が恐ろしいたき火の上で生きたまま焼かれるよりほかない。

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 他にも、「パディントン」シリーズの第2巻『パディントンのクリスマス』(マイケル・ボンド作/松岡享子訳/福音館書店)や、『鏡の国のアリス』(ルイス・キャロル作)にも出てきます。また、マザーグースや『魔法使いはだれだ』(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作/野口絵美訳/徳間書店)には、元となった火薬陰謀事件が出てきます。イギリスの人々にとって、なじみのあるお祭りであり、事件なんですね。

(村上利佳/笹山裕子)

★参考ウェブサイト
大好きマザーグース 歳時唄
http://www2u.biglobe.ne.jp/~torisan/fawkes1.html

Guy Fawkes and Bonfire Night
http://www.bonfirenight.net/index.php

『荒野のコーマス屋敷』の情報をオンライン書店でみる

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●読者の広場●海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!

 今月はペンネーム、とあ丸さんからいただいたメールをご紹介します。どうもありがとうございました。

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 こんにちは、初めてメールします、とあ丸です。私は学生のころ創作絵本を何冊か作ったのをきっかけに、絵本に興味を持ち、いつしか絵本の翻訳をしたいと夢をもちはじめました。2年ほど前に胸を打たれた素敵な台湾の絵本にも出会い、それから北京語も勉強し始めました。英語と北京語、話せるようになったけれど、私の絵本翻訳の夢は物凄く遠い気がします。これからいったいどうやって翻訳の道に進めばいいのか、どうやって、どのくらい能力をつければいいのかまったく分かりません。誰かの胸にぎゅっと抱きしめられるようなそんな絵本をいつか私の手で翻訳したい!という思いだけが空回りしてます。

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

【編集部から】
 本誌でも何度か翻訳家になるにはどうしたらよいかという特集を組んだことがあります。翻訳家のみなさんや、出版社のインタビューもありますので、バックナンバーも参考になるのではないでしょうか。どの出版社から、どんな台湾の絵本がすでに日本で紹介されているかといった情報収集も必要ですね。読者のみなさまからのアドバイスもお待ちしています。

▽「月刊児童文学翻訳」バックナンバー コーナー別インデックス
http://www.yamaneko.org/mgzn/bncorner.htm#a

 

 このコーナーでは、海外児童書にまつわるお話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。

  • メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
  • タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
  • 掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
  • 回答も読者のみなさまから募集し、こちらに掲載させていただきます。編集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。


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●編集後記●

インタビューに参加して、翻訳学習意欲に火がついたひとりです。ロングバージョンもぜひご覧ください。(た)

発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 杉本詠美(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 竹内みどり/赤塚きょう子(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 井原美穂 蒲池由佳 笹山裕子 清水陽子 早川有加 林さかな 
村上利佳 森久里子
協 力: 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
ながさわくにお ハイタカ
html版担当 ワラビ

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