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2015年9月号
   =====☆                    ☆=====
  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.166
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2015年9月15日発行 配信数 2550 無料
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●2015年9月号もくじ●
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◎特別企画:2016年国際アンデルセン賞の候補者たち その1
 "Dunger" ジョイ・カウリー作
◎注目の本(邦訳絵本):『あかいはねのふくろう』
                  フェリドゥン・オラル文・絵/広松由希子訳
◎注目の本(邦訳絵本):『ちいさなメリーゴーランド』
                   マーシャ・ブラウン文・絵/こみやゆう訳
◎賞速報
◎イベント速報:★やまねこ翻訳クラブ協力企画のお知らせあり★
◎音楽のしおり:第2回 オペラの裏方 プロンプター
◎読者の広場

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●特別企画●2016年国際アンデルセン賞の候補者たち その1
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 今年3月、2016年国際アンデルセン賞候補者が国際児童図書評議会(IBBY)よ
り発表された。隔年で表彰されるこの賞は「児童文学界のノーベル文学賞」と評され
る権威ある賞で、今回ノミネートされたのは、34か国から、作家賞28名、画家賞29名。
これらの中から、作品はもちろんのこと全業績をふまえて厳正に審査され、各賞1名
が選ばれる。受賞者の発表は、2016年4月4日の予定だ。
 本誌では、候補者の未訳作品を何号かに分けてご紹介していく。今月号で取り上げ
るのは、ニュージーランドの作家、ジョイ・カウリー。

【参考】
▼国際児童図書評議会(IBBY)公式ウェブサイト
http://www.ibby.org/

▼2016年国際アンデルセン賞審査員および候補者リスト(IBBY内)
http://www.ibby.org/1492.0.html 

▽国際アンデルセン賞について(本誌1999年10月号情報編)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/1999/10a.htm#a1bungaku

▽国際アンデルセン賞受賞者リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/andersen/index.htm

▽本誌2009年9月号「特別企画:2010年国際アンデルセン賞の候補者たち」
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2009/09.htm#kikaku

▽本誌2011年11月号「特別企画:2012年国際アンデルセン賞の候補者たち その1」
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2011/11.htm#kikaku

▽本誌2012年3月号「特別企画:2012年国際アンデルセン賞の候補者たち その2」
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2012/03.htm#kikaku

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〜ジョイ・カウリー(ニュージーランド)〜

"Dunger" 『ウィルとリシーのポンコツ夏休み』(仮題)
by Joy Cowley ジョイ・カウリー作
Gecko Press, 2013, 156pp. ISBN 978-1877579462 (PB)
★2014年ニュージーランド・ポスト児童図書賞児童読み物部門受賞作品
★2014年LIANZAエスター・グレン賞受賞作品
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 11歳の少年ウィルと、姉で14歳のリシーは、ニュージーランド南島の都市クライス
トチャーチで両親と暮らしている。理屈っぽいウィルと、オシャレと男の子に目がな
いリシーは、まるで気が合わず、けんかばかり。そんなふたりが、夏休みを海辺の別
宅で過ごす祖父母の手伝いにかりだされた。10日で千ドルという破格の報酬目当てで
引き受けたけれど、海辺の家は思った以上に原始的。電気はないし、トイレは屋外、
水道は自前のシステムだ。元ヒッピーで変わり者の祖父母は、見た目はヨボヨボなの
に口は達者で遠慮がない。この夏休み、いったいどうなることやら……。
 原題の Dunger(ダンガー)とは、ニュージーランドのスラングで、「ポンコツ車」
という意味だ。作中で祖父は、この言葉を車だけに使うのはもったいないといって、
古くてガタがきているもの全般に当てはめている。都会っ子のウィルとリシーが、ポ
ンコツ屋敷でポンコツ夫婦と過ごすポンコツづくしの夏休み。経験するのは、料理、
掃除、写真の整理、水道の配管、枝の伐採、車の運転(!)など、家事や作業ばかり。
水泳や釣りもするが、祖父母のサポート役としてだ。
 田舎で過ごす夏休みを描いたこの作品、スケールこそ大きくないが、ディテールが
光っており、読みごたえたっぷりだ。章ごとに交互に語るウィルとリシーの独白から、
戸惑い、怒り、喜びなどがまっすぐに伝わってくるし、お互いの様子を語る部分から
も、気持ちの変化や成長が読み取れる。仲の良くないこの姉弟、最初のうちは相手の
失敗をあざ笑うばかりだったが、慣れない環境でさまざまな経験をするうちに、同情
したり、共感したり、意外な面を知って相手を見直したりするようになる。千ドルと
いう大金をめぐる心の動きもリアルに描かれ、説得力がある。祖父母の描写もふるっ
ていて、口の悪い老夫婦の豪快な日常会話や祖父のおやじギャグのパワフルなこと!
祖父母が遠慮なく孫たちをこき使うのは、若者に対する偏見や、年寄りであることを
卑下する気持ちがないからこそだろう。そんなまっすぐな生き方がユーモアとなって
はじけており、なんとも愉快、痛快なのだ。
 一大事が起こる終盤も、展開自体はあっと驚くほどのものではないが、前半で語ら
れた小さなエピソードがそこここで見事につながり、テンポよく結末まで導いてくれ
る。笑いあり、ハラハラドキドキあり、ほろりとさせられる場面あり。現代の子ども
たちに向けた作者のメッセージは、さりげなくもじんわりと伝わってくる。ジョイ・
カウリーの持ち味が、遺憾なく発揮された作品といえるだろう。

【ジョイ・カウリー(Joy Cowley)について】
 1936年、ニュージーランド北島のレヴィンに生まれ、病弱な両親のもと、生活保護
を受けて育った。アルバイトをしながら高校に通い、薬剤師修行をしながら薬局で働
いたのち、20歳で農家に嫁ぐ。農作業、家事、子育てと多忙な中、夜中にペンをとっ
て作家をめざし、小説 "Nest in a Fallen Tree" で1967年にデビューを果たした。
 大人向け作品を数冊出したのちに、読み書きが苦手だった息子のために物語を書い
たことがきっかけで、学習教材のプロジェクトに参加。以来、小学校の学習教材とし
ての短編読み物(16ページ程度の絵本)を執筆し続け、その総数は千編を超える。ニ
ュージーランドのみならず、アメリカでも広く採用されるなど、国際的に評価が高い。
 市販の絵本作品には、"Mrs. Wishy-Washy"(『せんたくおばさん』エリザベス・フ
ラー絵/かとうやすひこ訳/チャイルド本社)や "Greedy Cat"(ロビン・ベルトン
絵/未訳)のシリーズなど、学習教材にルーツを持つものも多い。1969年に反戦の気
持ちを込めて発表した絵本 "The Duck in the Gun" は、「世界・平和の絵本シリー
ズ」の1冊に選ばれ、1990年に邦訳出版された(『大砲のなかのアヒル』ロビン・ベ
ルトン絵/ロニー・アレキサンダー、岩倉務訳/平和のアトリエ)。
 読み物では、初めて執筆した子ども向けの長編 "The Silent One"(『サンゴしょ
うのひみつ』百々佑利子訳/冨山房)が、1982年ニュージーランド年間最優秀児童文
学賞(現ニュージーランド児童書及びヤングアダルト小説賞)を受賞。その後も3作
品が年間最優秀図書賞に輝き、いずれも邦訳されている。最新作は、第2次世界大戦
をモチーフにしたフィクション "The Bakehouse"(未訳)。
 読書推進活動や新人作家育成にも積極的に携わり、国内外でさまざまな功労賞を受
賞。児童文学団体の活動にも貢献しており、2016年にニュージーランドで開催される
IBBYの世界大会にも参加予定だ。
 子どもは4人、孫は13人、曾孫が数人おり、大勢で集まることも少なくない。本書
の舞台であるマールボロサウンドに長年住んでいたが、現在は北島南部の町フェザー
ストンで夫とふたり暮らし。趣味は木工、編み物、料理などで、どれもプロ級の腕前。
小型船舶の操縦ができて、マニュアル車を運転する。

※『せんたくおばさん』の作者名表記はジョイ・コーリー、『大砲のなかのアヒル』
はジョイ・コウレイ。

【参考】
▼ジョイ・カウリー公式ウェブサイト
http://www.joycowley.com

▼第35回国際児童図書評議会(IBBY)世界大会公式ウェブサイト
http://www.ibbycongress2016.org

▼同ウェブサイト内ジョイ・カウリー紹介ページ
http://ibbycongress2016.org/joy_cowley.html

                                (大作道子)

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●注目の本(邦訳絵本)●トルコ発、キュートなコンビが日本を席巻
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『あかいはねのふくろう』 フェリドゥン・オラル文・絵/広松由希子訳
復刊ドットコム 定価2,000円(本体) 2015.05 32ページ ISBN 978-4835452081
"Kirmizi Kanatli Baykus" by Feridun Oral
Yapi Kredi Yayinlari, 2012

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 遠い国の大きな森に、ふくろうの夫婦がすんでいた。夜になると、ひなのためにえ
さを探しに飛んでいく。ある風の強い晩に、木の上に残された1羽のひな。飛びたく
てもまだ飛べなくて、友だちがいたら一緒に遊べるのにと、悲しそうだ。そこへ、小
さなねずみが木を登ってやってくる。「ぼくが友だちになってあげる。飛べるように
もしてあげる」さて、どうすれば飛べるようになるだろう。親ふくろうの羽は赤いけ
ど、ひなの羽はやわらかく、先がまだらに赤いだけ。ねずみは、野原に咲く赤いけし
の花をつんできてふくろうの羽一面にぺたぺたくっつけた。でも、風で花はふきとば
されてしまう。ねずみが次に思いついたものは?
 本作品は、国際児童図書評議会(IBBY)のトルコ支部である児童・青少年出版
協会(CGYD)主催のトルコ最優秀絵本賞を2012年に受賞し、第24回ブラティスラ
ヴァ世界絵本原画展にも原画が出品された。その後、原画展として日本国内5つの美
術館を巡回した際に、絵を見た子どもたちの間で大人気になったという。つぶらな目
をしたふくろうも、友だちのために奮闘するねずみも、抱きしめたくなるほど愛らし
いうえに、作者オラル考案の飛べるようになった印の「赤」い色は、紺色の夜空に映
えて絵本の魅力をひきたてている。ねずみがりんごの皮を歯でむいてふくろうの体に
まいた場面では、赤いりんごの皮がガウンのようにも打ち掛けのようにも見え、ふた
りに対する慈しみの思いがあふれてきてほほ笑まずにはいられない。器用なねずみと、
まだ動きのぎこちないふくろうのコンビは、トルコ、日本だけでなく他の国々でも旋
風を巻き起こすに違いない。
 オラルの絵本は動物を主人公にしたものが多い。本作品のように写実的な描き方の
ものから、少しデフォルメしたもの、擬人化したものまでさまざまだが、色合いも内
容も全体的に落ち着いた印象を受ける。上記の最優秀絵本賞をこれまでに合計3度受
賞しており、トルコでも注目の絵本作家である。また2012年国際アンデルセン賞画家
賞ではトルコからの候補者となった。今後も世界に羽ばたくことを期待したい。

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【文・絵】フェリドゥン・オラル(Feridun Oral):1961年トルコ共和国生まれ。マ
ルマラ大学美術学部を卒業。絵本のほか、絵画、彫刻なども手掛ける芸術家である。
1992年ユネスコ・アジア文化センター主催の野間国際絵本原画コンクールで佳作とな
った絵本が、『森のこえ』(遠山博文訳/蝸牛新社、作者名表記はフェリドゥン・オ
ラール)として1996年邦訳出版された。フランス、ドイツ、韓国、中国などでも作品
が紹介されている。イスタンブール在住。

【訳】広松由希子(ひろまつ ゆきこ):1963年ロサンゼルスに生まれ、東京に育つ。
編集者、文庫主宰、ちひろ美術館学芸部長などを務めたあと、フリーに。絵本の執筆、
評論、展示企画、国内外の絵本審査員、雑誌への記事掲載など多彩な活動をしている。
絵本の翻訳には『かあさんあひるのたび』(エリック・バトゥー文・絵/講談社)、
『はしれ、トト!』(チョ・ウンヨン文・絵/文化出版局)がある。

【参考】
▼フェリドゥン・オラル公式ウェブサイト
http://www.feridunoral.com/

▼広松由希子公式ウェブサイト
http://www.y-poche.com/

【特殊文字】
「Kirmizi」「Kanatli」「Yapi」「Yayinlari」:すべての「i」に点はつかない
「Baykus」:「s」の下にセディーユがつく
「CGYD」:「C」の下にセディーユがつく

                               (植村わらび)

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●注目の本(邦訳絵本)●マーシャ・ブラウン、デビュー作の新訳版
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『ちいさなメリーゴーランド』 マーシャ・ブラウン文・絵/こみやゆう訳
瑞雲舎 定価1,400円(本体) 2015.06 32ページ ISBN 978-4907613068
"The Little Carousel" by Marcia Brown
Charles Scribner's Sons, 1946

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 1940年代のニューヨーク、サリバン・ストリート。通りの両側にはアパートが立ち
並び、路上では男の子たちがビンのふたを投げて遊んでいる。アパートの屋上ではた
こ揚げをする子どもたちが走り回り、向かいの建物の窓辺には、幸せそうなお母さん
と赤ちゃんの姿。とても気持ちのよい午後、大人も子どももみんな楽しそうだ。だけ
ど、アンソニーはちょっぴりつまらない。家族がみんな忙しくて、今日はひとりぼっ
ちなのだ。そこへ、通りの向こうから、にぎやかな音楽が聞こえてきた。手まわしオ
ルガン? それともパレード? 「メリーゴーランドだ!」馬に引かれて、ちいさな
メリーゴーランドがやってきた。おこづかいをもっている子どもは、次々と馬やライ
オンにまたがっているのに、アンソニーはただ見ていることしかできなくて……。け
れども、メリーゴーランドのおじさんは、そんなアンソニーにちゃんと気が付いてい
たのだ。
 この作品は『三びきのやぎのがらがらどん』(せたていじ訳/福音館書店)や『ち
いさなヒッポ』(うちだりさこ訳/偕成社)などで知られるマーシャ・ブラウンが、
1946年に自身の体験をもとに書き下ろしたデビュー作の新訳版だ。第2次世界大戦が
終わってお祭りムードの街の様子と、そこで生活する人々の姿が、控えめな色彩とや
わらかな画風で細かく描かれている。通り全体をとらえた挿絵をじっくり眺めている
と、子どもたちの笑い声や、商店の日よけが風にはためく音までが聞こえてくるよう
だ。たいくつな午後を特別な時間にしてくれたメリーゴーランドのおじさんと、笑顔
いっぱいのアンソニー。2人がふれあう場面は、心に灯がともるように温かだ。突然
あらわれ、子どもたちを楽しませてスマートに去っていくおじさんが、ちょっと粋で
かっこいい。
 本作でマーシャ・ブラウンは、日本の読者のために、デビュー作の生まれた背景を
解説にしたため、その3か月後にカリフォルニアの自宅で亡くなった。亡くなる直前
の仕事がデビュー作の解説であったという事実は、絵本作家としての最後の仕事をや
りきったと言わんばかりだ。運命のような巡り合わせを感じずにはいられない。

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【文・絵】マーシャ・ブラウン(Marcia Brown):米国の絵本作家。オールバニ大学
を卒業し、ニューヨーク公共図書館の児童室司書を務める。"Once a Mouse"(『もと
はねずみ…』晴海耕平訳/童話館出版)、"Shadow"(『影ぼっこ』ブレーズ・サンド
ラール文/おのえたかこ訳/ほるぷ出版)などで、3度のコールデコット賞を受賞。
2015年4月、96歳で没。

【訳】こみや ゆう(小宮由):1974年生まれ。児童書出版社勤務を経て、フリーの
翻訳家、編集者となる。2004年より東京・阿佐ヶ谷で家庭文庫「このあの文庫」を主
宰。訳書に『せかいいちおいしいスープ』(マーシャ・ブラウン文・絵/岩波書店)、
「ぼくは めいたんてい」シリーズ(マージョリー・W・シャーマット文・絵/大日
本図書)など多数。

【参考】
▼オールバニ大学公式ウェブサイト内マーシャ・ブラウン特設ページ
https://library.albany.edu/speccoll/marciabrown/index.htm

▼このあの文庫公式ウェブサイト
http://konoano.tumblr.com/

                                (安田冬子)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2015年ミソピーイク賞児童書部門発表
★2015年ニュージーランド児童書及びヤングアダルト小説賞発表
★2015年オーストラリア児童図書賞発表
★2015年度ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)賞発表

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 安曇野ちひろ美術館「『はしれ、トト!』チョ・ウンヨンの絵本づくり展」
 みやざきアートセンター「生誕100年ターシャ・テューダー展」 など

★講演会情報
 仙台文学館「清水真砂子と読む児童文学」 など

★コンクール情報
 「第22回いたばし国際絵本翻訳大賞」 など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

★★やまねこ翻訳クラブ協力企画のお知らせ★★

「読書探偵作文コンクール2015」
  主催 読書探偵作文コンクール事務局
  協力 翻訳ミステリー大賞シンジケート、やまねこ翻訳クラブ

 7月1日から募集を開始した今年のコンクールの応募期間は、9月24日までです。
 提出にむけてがんばってくださっているお子さんも多いことと思います。
 郵送は24日の消印有効、メールでは日付が変わるまで受け付けますので、ふるって
ご応募いただけるよう、まわりのお子さんの背中をおしてあげてください。
 詳しくは、読書探偵作文コンクールのウェブサイトをご参照ください。
 ツイッター、フェイスブックページでも、随時情報を提供しています。

読書探偵作文コンクール公式ウェブサイト
http://dokushotantei.seesaa.net/

読書探偵作文コンクール公式ツイッター
https://twitter.com/Dokusho_Tantei

読書探偵作文コンクールフェイスブックページ
https://www.facebook.com/dokushotantei

                           (冬木恵子/笹山裕子)

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●音楽のしおり●第2回 舞台下にひそむ、もうひとりのマエストロ
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           〜オペラの裏方 プロンプター〜

 オペラの華やかな表舞台は、時に数百人もの裏方によって支えられているといいま
す。その中で、実は舞台中央に位置しながらも人目につかず、その存在をあまり知ら
れることのないプロンプターという仕事に、今回はスポットライトを当てたいと思い
ます。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
ほら、そこのプロンプター・ボックスにいるのが、ペトリーニです。歌い手に合図を
おくるプロンプター氏のかわりに、楽譜めくりの手つだいをしているのです。

プロンプター・ボックスは、ステージのフットライトのまん中にある、ほら穴のよう
なところです。観客からは見えない場所で、プロンプター氏の合図する声も、うしろ
にはきこえません。
でも、とてもだいじな人なのです。歌い手はたえずこの人の合図に耳をすまし、もし
も歌詞や曲をわすれたときには、すぐにたすけてもらえるのですから。

                        『オペラハウスのなかまたち』
 リディア・フリーマン、ドン・フリーマン文・絵/山下明生訳/BL出版/2008年

                  
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 ニューヨークはメトロポリタン歌劇場(通称メト)を舞台としたこの絵本。お話の
中でプロンプターの助手を務めるのは、白いネズミのマエストロ・ペトリーニです。
メトの屋根裏部屋にあるハープケースで暮らしながら、おくさんと3匹の子どもたち
のために、こうして毎日のチーズを稼いでいるのでした。
 ペトリーニの仕事場でもあるプロンプター・ボックスは、舞台最前部の中央に埋ま
っている箱型の小部屋で、客席からは見えないように黒い覆いが付いています。舞台
の側から見ると、四角い穴が開いていて、そこからプロンプターの顔だけがのぞいて
いるのです。通常、大人ひとりが座るだけで一杯になってしまうほどの狭い空間なの
で、小さなネズミは助手として適任かもしれません。プロンプター・ボックスへは、
オーケストラピットを通り抜けて入るのが一般的なようです。踏み段をのぼると中に
はまず高さを調節できる椅子があり、正面には楽譜を載せる譜面台が置かれています。
プロンプターは指揮者に背を向けているので、指揮を直接確認することができません。
近年では、ビデオモニターで指揮者の様子や舞台の全景を確認できるようになってお
り、さらにオーケストラの音を出すスピーカーもあります。これらを使って、オペラ
の進行を細部まで把握するのです。
 引用部分にもあるように、プロンプターの主な仕事は、舞台上の歌手に歌い出しの
歌詞を伝えることと、歌い始めるタイミングを合図すること。そこには、職人芸とも
いえる、熟練した技術が求められます。歌詞を伝える際には、歌手が歌いやすいよう
に、呼吸を邪魔しないタイミングを見極めなければいけません。とくにメトの場合、
舞台上から指揮者を見るのが難しかったり、オーケストラの音が聞こえにくかったり
することがあるので、プロンプターの合図がとても重要です。単に指揮に合わせるの
ではなく、舞台とオーケストラとのタイムラグまで考慮する必要もあります。また、
客席にプロンプターの声が聞こえないよう、オーケストラの音量に応じて声の大きさ
にも気を配らなければいけません。さらに、オペラの作品ではイタリア語、ドイツ語、
フランス語、英語、ロシア語、チェコ語など、多くの言語が使われているため、高い
語学力も求められるのです。作品を熟知していないとできないこの仕事は、副指揮者
や、リハーサルで伴奏を担当するピアニストが務めることも多いようです。
 もちろん、舞台に立つ歌手たちは、作品を完全に自分のものにしてから臨んでいる
のですが、大きな作品だと4時間を超えるものもあるオペラの場合、歌詞や曲を忘れ
てしまうことがないとも限りません。それに舞台には思いがけない出来事も付き物で
す。実は、本書の主人公ペトリーニも、モーツァルトのオペラ『魔笛』を上演中に魔
法の笛の音色に引き込まれ、舞台で踊り出してしまいます。しかもそれをネコに見つ
かって絶体絶命! ところが、ネコの方も魔笛の音色に酔ってしまい、おかしなこと
に。そんなハプニングの後、ペトリーニをボックスに引き戻し、魔法をといてあげた
のも、もちろんプロンプター氏でした。舞台のスムーズな進行を陰で支えるのが、プ
ロンプターの使命なのです。そのおかげで、ソリストたちも安心して、最高のパフォ
ーマンスを発揮できるのでしょう。
 劇場や演目によって、必ずしもプロンプターが舞台の下にいるわけではありません
が、もしオペラを観にいくことがありましたら、プロンプター・ボックスを探してみ
てください。もしかしたら、小さなしっぽがチョロリとのぞくかもしれませんよ。

★参考文献・ウェブサイト
『劇場・音楽堂で働く人のための舞台用語ハンドブック』
                        全国公立文化施設協会編集発行
メトロポリタン歌劇場公式ウェブサイト
http://www.metopera.org/
メトロポリタン・オペラ・ナショナル・カウンシル・オーディション
              東部地域旧ブログ内プロンプター・ボックス紹介記事
http://operaidols.blogspot.jp/2013/03/inside-prompters-box.html

                          (増山麻美/加賀田睦美)

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●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・
 10月号では、「この人に聞きたい! やまねこ会員インタビュー」第3回をお届け
する予定です。
 詳細は10日頃、出版翻訳ネットワーク内「やまねこ翻訳クラブ情報」のページに掲
載します。どうぞお楽しみに!
          http://litrans.g.hatena.ne.jp/yamaneko1/

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▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽

  やまねこ翻訳クラブ(yagisan@yamaneko.org)までお気軽にご相談ください。

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    ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のライフスタイルブランド ☆☆
 独創的なデザインで世界120ヶ国以上で愛用されているフォッシルはアメリカを代
表するライフスタイルブランドです。1984年、時計メーカーとして始まったフォッシ
ルは時計をファッションアクセサリーのひとつと考え、カジュアルでポップなライン
からフォーマルなシーンにも使えるアイテムまで、年間300種類以上のモデルを発売
し続けています。またフォッシル直営店では、時計以外にもレザーバッグ、革小物、
ファッションサングラスなどのラインを展開しています。
TEL 03-5992-4611
http://www.fossil.co.jp/     (株)フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社
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★☆     出版翻訳ネットワークは出版翻訳のポータルサイトです     ☆★
             http://www.litrans.net/
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     ★☆メールマガジン『海外ミステリ通信』 隔月15日発行☆★
          http://honyakuwhod.blog.shinobi.jp/
未訳書から邦訳新刊まで、あらゆる海外ミステリの情報を厳選して紹介。翻訳家や
編集者の方々へのインタビューもあります!    〈フーダニット翻訳倶楽部〉
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★広報ブログ「やまねこ翻訳クラブ情報」(litrans グループ ブログ内)
                  http://litrans.g.hatena.ne.jp/yamaneko1/
 ※各掲示板の話題やクラブの動きなど、HOTな情報をご紹介しています。

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●編集後記●今月号より編集人として参加させていただきます。どうぞよろしくお願
いします。児童文学という同じ方向を見つめ集う仲間の力を存分に感じた編集期間を
過ごしました。この思いを胸に前進していきたいとおもいます。(み)
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発 行 やまねこ翻訳クラブ
編集人 三好美香/大作道子/蒲池由佳(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 植村わらび 尾被ほっぽ 加賀田睦美 かまだゆうこ 小島明子 笹山裕子
    佐藤淑子 手嶋由美子 冬木恵子 増山麻美 森井理沙 安田冬子
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    からくっこ くらら ながさわくにお
    html版担当 ayo
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