メニュー「月刊児童文学翻訳」バックナンバー>2021年07月号   オンライン書店
※8月は定期休刊です。次回は2021年9月号になります。どうぞお楽しみに!

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2021年7月号
   =====☆                    ☆=====
  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.207
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2021年7月15日発行 配信数 2470 無料
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●2021年7月号もくじ●
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◎賞情報:2021年カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞、
                       シャドワーズ・チョイス賞発表!
◎訳者が語る! 注目の本(邦訳読み物):
 『列車探偵ハル 王室列車の宝石どろぼうを追え!』
              M・G・レナード、サム・セッジマン作/武富博子訳
◎世界の本棚(イタリア語):"Prima che sia notte" シルヴィア・ヴェッキーニ作
◎mikiron の親ばか絵本日誌:第3回 『たんじょうびのふしぎなてがみ』
◎賞速報
◎イベント速報:★やまねこ翻訳クラブ協力企画のお知らせあり★
◎読者の広場

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●賞情報●2021年カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞、
                       シャドワーズ・チョイス賞発表!
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 英国図書館・情報専門家協会(CILIP: The Chartered Institute of Library and
Information Professionals)が主催する、イギリスで最も権威ある児童文学賞、カ
ーネギー賞およびケイト・グリーナウェイ賞が6月16日に発表された。また、各候補
作品を読んだ子どもたちが図書館や学校などの読書グループを通じて投票するシャド
ワーズ・チョイス賞も同時に発表された。
 本号では各賞の受賞作品をご紹介する。

▼カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞公式ウェブサイト
http://www.carnegiegreenaway.org.uk/

▼同ウェブサイト内、2021年受賞作品発表ページ
https://carnegiegreenaway.org.uk/2021-cilip-ckg-medal-winners-announced/

▼同ウェブサイト内、「Stream the 2021 CKG Awards Ceremony」(動画)
    (発表の様子がオンタイムで流された。2021年7月15日現在も視聴できる)
https://carnegiegreenaway.org.uk/take-part/stream/

▽カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞について
               (本誌1999年7月号情報編「世界の児童文学賞」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/1999/07a.htm#a1bungaku

【カーネギー賞】(作家対象)

★The CILIP Carnegie Medal 2021 Winner

  "Look Both Ways" by Jason Reynolds (Knights Of)

☆The Shadowers' Choice Award 2021 Winner

  "Run, Rebel" by Manjeet Mann (Penguin Random House Children's)

 今年のカーネギー賞に輝いたのは、米国のアフリカ系YA作家 Jason Reynolds
(ジェイソン・レナルズ(レノルズ))の連作短編集 "Look Both Ways"。2019年の
"Long Way Down"(『エレベーター』青木千鶴訳/早川書房)に続く同賞ショートリ
スト入りで、今回初の受賞を果たした。町の10本の通りを、歩いて学校から帰宅する
少年少女たち。その道すがら、いじめ問題や家族のトラウマ、同性愛への戸惑いなど
子どもたちが十人十色に抱える心の内が、小気味よいブラックイングリッシュの語り
で浮き彫りになる。作者が「大人の目が届かないときの子どもたちを描きたかった」
と語るとおり、家でも学校でもない「下校中」というユニークな着眼点が見事だ。作
品のレビューは本誌2020年3月号をご覧いただきたい。
▽本誌バックナンバー(2020年3月号)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2020/03.htm#myomi

 シャドワーズ・チョイス賞に選ばれたのは、近年注目される韻文スタイルによる小
説 "Run, Rebel" だ。主人公は走ることが大好きな10代の少女 Amber。アスリートと
しての才能を秘めながらも、支配的にふるまう父親からの虐げに苦しむ日々を送って
いる。やがて陸上競技への挑戦も父親に禁じられてしまい……。Amber は自分のため、
そして母親や姉のため、自由を勝ち取ろうと立ち上がる。ページの余白を活かした韻
文の連なりが、主人公の心の叫びをより際立たせる印象的な作品だ。「自分の10代の
体験をもとにした」と語る作者の Manjeet Mann は女優や脚本家としても活動し、本
作で小説デビュー。同賞のほかに2021年のブランフォード・ボウズ賞ショートリスト
にも選出されており、こちらの賞情報(7月中旬に発表予定)にも注目したい。

【ケイト・グリーナウェイ賞】(画家対象)

★The CILIP Kate Greenaway Medal 2021 Winner

  "Small in the City" by Sydney Smith (Walker Books)

☆The Shadowers' Choice Award 2021 Winner

  "Starbird" by Sharon King-Chai (Two Hoots)

 今年のケイト・グリーナウェイ賞には、Sydney Smith(シドニー・スミス)による
"Small in the City"(『このまちのどこかに』せなあいこ訳/評論社)が輝いた。
スミスは2018年の "Town Is by the Sea"(『うみべのまちで』ジョアン・シュウォ
ーツ文/岩城義人訳/BL出版)に続き2回目の受賞となるが、今回初めて、絵だけ
でなく文も手掛けている。降りしきる雪の中をさまよう少年は、「ちいさなもの」に
思いをはせる。巨大なビルがそびえ、車のクラクションが鳴り響く都会では、少年自
身もちっぽけな存在だ。凍てつく街を歩きまわりながら「きみ」に語りかける少年の
姿を、冬らしい抑えた色調の絵と詩的な文章で淡々と描いた絵本。作者は、本作の制
作中に友人を亡くし、そのときの想いを主人公に投影させたという。寒々とした都会
の雪景色が続くにもかかわらず、人の優しさや心のつながりを感じさせる、ぬくもり
に満ちた作品だ。2019年カナダ総督文学賞児童書(絵)部門受賞、2019年度ニューヨ
ークタイムズ/ニューヨーク公共図書館・ベストイラスト賞受賞。

 シャドワーズ・チョイス賞に選ばれたのは、中国系マレーシア人を両親に持つ
Sharon King-Chai が手掛けた美しい絵本 "Starbird" だ。伝説の鳥 Starbird の歌
声は、聴く者すべての胸にすばらしい夢と喜びを抱かせるという。わがままな王 the
Moon King は愛する娘のために Starbird を手に入れた。だが、姫はその美しい鳴き
声に宿る悲しみに気づいて心を痛め、鳥を外の世界へ解き放った。故郷をさがして世
界中を旅してまわり、行く先々であらゆる生き物を魅了した Starbird だったが、執
拗に追う王にふたたび捕らえられてしまう――。青を基調とした絵は力強さと繊細さ
を兼ねそなえ、効果的に用いられた銀の箔印刷が物語に奥行きと輝きを与えている。
愛と自由、正義のために立ち上がることの大切さについて、静かに語りかける作品だ。

※邦訳がある作家、画家については初出の際に片仮名表記を併記しています。

【参考】
▼Jason Reynolds 公式ウェブサイト
https://www.jasonwritesbooks.com/

▼Manjeet Mann 公式ウェブサイト
https://www.manjeetmann.com/

▼Sydney Smith 公式ウェブサイト
https://www.sydneydraws.ca/

▼Sharon King-Chai 公式ウェブサイト
https://www.sharonkingchai.com/

▽カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品リスト
                        (やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/carnegie/
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/greenawy/

▽ショートリスト(最終候補作品)紹介記事(本誌2021年4月号「賞情報」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2021/04.htm#sokuho

                           (松倉真理/山本みき)

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●訳者が語る! 注目の本(邦訳読み物)●
              『列車探偵ハル 王室列車の宝石どろぼうを追え!』
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 今月号から「注目の本」のコーナーに、新しく「訳者が語る!」が加わりました。
こちらでは、やまねこ翻訳クラブ会員である訳者本人が、訳した作品の魅力や翻訳に
まつわるエピソードを語ります。
 今回の執筆者は武富博子さん。取り上げるのは、原書が今年5月に全英図書賞年間
最優秀児童書賞を受賞した、話題の作品です。

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『列車探偵ハル 王室列車の宝石どろぼうを追え!』
M・G・レナード、サム・セッジマン作/武富博子訳
早川書房 定価1,300円(本体) 2020.10 382ページ ISBN 978-4152099761
"Adventures on Trains: The Highland Falcon Thief"
by M. G. Leonard and Sam Sedgman
Macmillan Children's Books, 2020
Amazonで検索する:書名と作者名  Amazonで検索する:ISBN

 11歳の少年ハルは列車に興味なんてありませんでした。けれども鉄道好きな旅行作
家のナットおじさんに連れられて、しぶしぶ3泊4日の列車の旅に出かけます。それ
は歴史的な蒸気機関車が引く豪華な王室列車で、乗客も英国のロイヤル・カップルや
貴族、大金持ちの有名人などとにかく華やかです。ところがその列車内で宝石盗難事
件が発生し、なんとハルが疑われてしまいます。やむなく真犯人をさがしだそうとす
るハルは、鉄道が大好きな少女レニーと友だちになり、王室列車のなかを大冒険する
ことになります。はたして犯人を突きとめることができるのでしょうか?
 この作品にはいろんな魅力がつまっています。第1は、少年少女の冒険物語として
のおもしろさ。ハルとレニーが出会うあたりから、物語はがぜん輝きを増します。第
2は、宝石をめぐる事件の謎に最後までドキドキハラハラすること。まさにページタ
ーナーのミステリ作品です。第3は、鉄道に興味のない人までファンにしてしまうよ
うな、かっこいい列車の描写。もともと鉄道好きでなくても楽しめる、間口の広い作
品だからこそ、原書が2021年全英図書賞の年間最優秀児童書賞に輝いたのではないか
と思っています。第4は、英国らしさ。お菓子や料理、地名や風景、階級社会の雰囲
気、文化などをたっぷり感じることができます。非白人の登場人物が活躍するのも、
現代の英国の作品ならではでしょう。そして第5は……ぜひ発見してみてください!
 翻訳していて楽しかったのは、ハルがレニーやナットおじさんとやりとりする場面
です。ハルにとって、レニーもナットおじさんも、新しい扉をひらいてくれる人たち。
特にナットおじさんのセリフには、わたしのお気に入りが多々あります。
 一方、苦労したのは鉄道にまつわる部分です。この本に登場する流線形の蒸気機関
車(モデルは英国の「マラード号」)の構造に関する日本語の情報は少なく、昔の愛
好家が著した本が参考になりました。ネットで図面を見たり、マニア向けと思われる
英国の冊子を取り寄せたりもしました。日本語版の自慢は、冒頭に絵入りの登場人物
紹介とともに、原書にはない、車両の並びの図解が入っていること。多くの方に手に
取っていただけたらうれしく思います。続編も進行中です!

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【作】M・G・レナード(M. G. Leonard):英国の児童書作家。2016年に "Beetle
Boy"(『裏庭探偵クラブ 密室で消えた父をさがせ!』河井直子訳/KADOKAWA)でデ
ビュー。同シリーズはベストセラーとなり、40以上の言語に翻訳された。また、絵本
の邦訳に『ハブラシのサミー 海のなかのプラスチック』(ダニエル・リエリー絵/
青山南訳/化学同人)がある。作家になる前は音楽業界で働き、後に劇場のデジタル
プロデューサーとなった。夫と2人の息子とともにブライトン在住。

【作】サム・セッジマン(Sam Sedgman):英国の児童書作家、脚本家、劇場のデジ
タルプロデューサー。仕事仲間で友人のM・G・レナードと意気投合して本作を執筆
し、2020年に本作で児童書作家としてデビューを果たす。鉄道とミステリが大好きで、
本作では鉄道の蘊蓄とミステリのプロットを担当している。ロンドン在住。

【訳】武富博子(たけとみ ひろこ):英米児童文学翻訳者。訳書に『ゴースト・ボ
ーイズ ぼくが十二歳で死んだわけ』(ジュエル・パーカー・ローズ作/評論社)、
「動物探偵ミア」シリーズ(ダイアナ・キンプトン作/ポプラ社)など。やまねこ翻
訳クラブの元スタッフ。読書探偵作文コンクールの運営に携わっている。

                                (武富博子)

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●世界の本棚(イタリア語)●詩と散文で描かれる、兄と妹と犬のはなし
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『夜になるまえに』(仮題) シルヴィア・ヴェッキーニ作
"Prima che sia notte" by Silvia Vecchini
Bompiani, 2020, ISBN 978-8858788721 (EPUB) (Italy)
Bompiani, 2020, 128pp. ISBN 978-8830102064 (HB) (Italy)
★2020年チェント賞小学生向け部門3位
★2021年ストレーガ・ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞〈+11〉部門一次選考通過作品
(このレビューは電子書籍版を参照して書かれています)

 お兄ちゃんは耳が聞こえない。目もかたほうしか見えない。前はあたしといっしょ
に学校に通っていたけれど、今はいろいろと助けてくれる先生がいないから、ずっと
家にいる。お兄ちゃんがベッドの上でぼんやりしていると、犬のルルが横にいく。お
兄ちゃんの気持ちがわかるのかな。勉強はお父さんとお母さんが家で教えている。
 学校で、昔からよく知っている男の子が、お兄ちゃんどうしてる?って聞いてきた。
お兄ちゃんに会いたいからって、家に来てくれて、3人で遊んだ。あんなに笑ったの
は久しぶり。うれしかったから、その子の誕生日にプレゼントをあげた。とても喜ん
でくれた。
 お兄ちゃんのいいほうの目がどんどん悪くなっている。遠い町の病院で手術を受け
ることになって、お父さんとお母さんがつきそうから、あたしも学校を休んでついて
いく。急に決まって、お兄ちゃんと遊んでくれた、あの男の子に話せずにいたら、空
港へ向かうとちゅう、ほかの子たちといるところをたまたま見かけた。声をかけると、
なんだかそっけなくて、それに、お兄ちゃんのことをさけているみたいだった。プレ
ゼントなんかあげなきゃよかった。あのブレスレット、カモメにとられて、海に捨て
られてしまえばいいのに……。
 目と耳に障がいがある男の子カルロとその妹の物語が、詩と散文で構成されている。
詩の部分の語り手は妹で、たわいないできごとや兄への思いが素直に――ときにはユ
ーモラスに、ときには怒りをこめて――綴られている。散文のほうは三人称で、視点
は、カルロや妹のほか、父親、スーパーの店員、看護師、学校の用務員など、章ごと
に異なる。一瞬を切り取ったスナップ写真のようなエピソードを読み進めるうちに、
カルロやカルロの家族の置かれている状況が少しずつ見えてくる。
 イタリアでは、障がいのある子どもと、障がいのない子どもが同じ場所で学ぶ、イ
ンクルーシブ教育が実施されており、専門の資格を有する支援教員が障がいのある子
どもをサポートしている。しかし、予算の関係もあり、支援教員を配置できるとは限
らず、また、カルロのように複数の障がいがある場合、障がいのない子どもたちと同
じ学校で学ぶのが難しいこともあるらしい。
 障がいのあるきょうだいをもつゆえ、ときには不本意なことも起きるが、妹が兄を
思う気持ちは変わらない。困難な状況でも、両親は希望を捨てない。そして、カルロ
たちを見守るまわりの人びとの視線のなんと温かいこと。あの子を、あの家族を何と
かしてあげたいという気持ちが人を動かし、状況を変えていく。

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【作】Silvia Vecchini(シルヴィア・ヴェッキーニ):1975年、イタリアのペルー
ジャに生まれる。詩や子ども向けの読み物、グラフィックノベルといった、さまざま
な分野の作品を手がける。ディスレクシアの少女が主人公の "Le parole giuste" は
2015年バンカレリーノ賞候補作となった。執筆活動のほか、学校や図書館、書店で、
朗読会や創作のワークショップもおこなっている。邦訳された作品はまだない。

【参考】
▼シルヴィア・ヴェッキーニ公式ウェブサイト(イタリア語)
http://www.silviavecchini.it

▽ストレーガ・ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞受賞作品リスト
                        (やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/it/strega/index.htm

▽チェント賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/it/cento/index.htm

▽バンカレリーノ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/it/banca/index.htm

                              (赤塚きょう子)

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●mikiron の親ばか絵本日誌●第3回『たんじょうびのふしぎなてがみ』
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 本コーナーでは、わたくし mikiron が親ばかを承知のうえで、もうすぐ5歳の息
子「青(しょう)ちゃん」との日常を記しつつ、お気に入りの絵本をご紹介していき
ます。どうぞおつきあいくださいませ。

 先日5月23日、エリック・カールさんが91歳でお亡くなりになりました。『はらぺ
こあおむし』(もりひさし訳/偕成社)は青ちゃんも大好きで、赤ちゃんのころから
一緒に親しんだ思い出がいっぱい。まだまだお元気だと思っていたので、ニュースを
読んだときは思わず涙ぐみました。心よりお悔やみ申し上げます。エリック・カール
さんの作品で、もうすぐ5歳の誕生日を迎える青ちゃんにぴったりの絵本はないかな
と探してみたところ、もちろんありました! 『たんじょうびのふしぎなてがみ』
(もりひさし訳/偕成社)です。
 チムという男の子が、誕生日の前の晩、枕の下からなぞの手紙を見つける場面でお
話がはじまります。「【半円形】が のぼったら、いちばん あかるい【星形】を
さがしなさい。そのましたに おおきな【楕円形】が あります」といったぐあいに
つづられた、暗号のような手紙です(【】内は実際には★のようなマークが描かれて
います)。チムが窓から外を見ていると、月がのぼってきました。手紙の冒頭の【半
円形】とは、月のことだったのです。手紙に出てくるいろんな形をチムが次々に見つ
けていくと……、というお話。宝探しの要領で、わくわくしますね。『はらぺこあお
むし』と同様こちらもしかけ絵本で、各ページがそれぞれの形に切り取られていたり、
穴があいていたりと楽しい作品です。青ちゃんも気に入ったようで、立て続けに5回
も読まされ、喉が痛くなりました。
 誕生日が近づくなか、プレゼントに何をあげようか、本人に希望を聞いてもはっき
り答えてくれず、目下悩み中のわたし。けれど、この絵本を読んで、わかった気がし
ます。子どもがほんとうに喜ぶのって、おもちゃや本など買い与える「もの」それ自
体ではなくて、それを使って家族やお友だちと一緒に遊んだり、この絵本のようにヒ
ント片手に何かを探す過程を楽しんだりという、「もの」にまつわる体験や思い出な
んじゃないかと。今年はわたしもふしぎなてがみを書いて、宝探しのわくわく感を贈
ろうと思います。うまく見つけられるかな?

【参考】
▽本誌バックナンバー「親ばか絵本日誌」コーナー
「mikiron の親ばか絵本日誌」(2021年4月号〜連載中)
http://www.yamaneko.org/mgzn/corner/oyabaka.htm#mikiron

「Chicoco の親ばか絵本日誌」(2000年6月号〜2004年7月号掲載)
http://www.yamaneko.org/mgzn/corner/oyabaka.htm#chicoco

『たんじょうびのふしぎなてがみ』をAmazonで検索する:書名と作者名
                                (山本みき)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2021年ボストングローブ・ホーンブック賞発表

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 うらわ美術館「ブラチスラバ世界絵本原画展」
 ひろしま美術館「ムーミン コミックス展」 など

★講座・講演会情報
 アートエリアB1(会場・オンライン)
    「児童図書の役割〜18世紀ドイツ児童文学の成立ちから」
 オンライン「読書探偵作文コンクール 2020年度最優秀作品を選考委員が語る!」
                                    など

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、イベントは中止や延期になる場合がありま
す。最新の開催情報は「児童書関連イベント情報掲示板」掲載の各参考ウェブサイト
でご確認ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

 ツイッターアカウントでも最新情報を提供しています。
▽やまねこ翻訳クラブ*イベント情報 Twitter
https://twitter.com/YamanekoEvent

★★やまねこ翻訳クラブ協力企画のお知らせ★★

「読書探偵作文コンクール2021」
  主催 読書探偵作文コンクール事務局
  協力 翻訳ミステリー大賞シンジケート、やまねこ翻訳クラブ

 いつも「読書探偵作文コンクール」にご協力いただき、ありがとうございます。
 小学生部門、中高生部門ともに、今年も募集を開始いたしました。
 応募締切は★9月30日★です。詳細は各部門の公式ウェブサイトをご覧ください。
 また、コンクール開催に伴うオンラインイベントを7月18日に企画しています。詳
細はコンクール公式ウェブサイトおよび、児童書関連イベント情報掲示板をご覧くだ
さい。

 公式ツイッター、フェイスブックページ、 note では随時最新情報をお伝えしてい
ます、どうぞ併せてご利用ください。

▼「読書探偵作文コンクール」小学生部門 公式ウェブサイト
http://dokushotantei.seesaa.net/

▼「読書探偵作文コンクール」中高生部門 公式ウェブサイト
https://dokutanchuko.jimdofree.com/

▼「読書探偵作文コンクール」公式ツイッター
https://twitter.com/Dokusho_Tantei

▼「読書探偵作文コンクール」公式フェイスブックページ
https://www.facebook.com/dokushotantei

▼「読書探偵作文コンクール」公式 note
https://note.com/dokutan

 お子さんに、お友だちに、お知り合いに、ぜひお知らせください!

 過去の受賞作をもとに2017年に出版した『外国の本っておもしろい! 子どもの作
文から生まれた翻訳書ガイドブック』(サウザンブックス社)も、引き続きよろしく
お願いいたします。
http://thousandsofbooks.jp/project/dokutan/

                          (冬木恵子/山本真奈美)

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●読者の広場●海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 詳細は10日ごろ「やまねこ翻訳クラブ・喫茶室掲示板」に掲載します。お楽しみに!
    http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=kissa

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▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽

 やまねこ翻訳クラブ( yagisan@yamaneko.org )までお気軽にご相談ください。

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編集者の方々へのインタビューもあります!    〈フーダニット翻訳倶楽部〉
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●編集後記●今年もコロナ禍の感染対策をとりながら過ごす夏休みになりそうですね。
今月号では新しく、訳者による訳書を紹介するコーナー「訳者が語る!」がはじまり
ました。また、各国の児童文学賞受賞作品の紹介や、親子で楽しむ絵本など、幅広い
ジャンルの作品をお届けしました。この機会に、気になる作品を手に取ってみてはい
かがでしょう。編集部は8月はお休みをいただき、次回は9月号になります。(み)
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発 行 やまねこ翻訳クラブ
編集人 三好美香/森井理沙/平野麻紗(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 赤塚きょう子 尾被ほっぽ かまだゆうこ 蒲池由佳 小島明子 小原美穂
    相良倫子 佐藤淑子 武富博子 冬木恵子 古市真由美 松倉真理
    安田冬子 山本真奈美 山本みき
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    ながさわくにお みちこ
    html版担当 shoko
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・このメールマガジンは、「まぐまぐ」( http://www.mag2.com/ )を利用して配信
しています。購読のお申し込み、解除は下記のページからお手続きください。
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・ご意見・ご感想は mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。
・無断転載を禁じます。
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