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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2009年5月号 =====☆ ☆===== =====★ 月 刊 児 童 文 学 翻 訳 ★===== =====☆  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ☆===== No.110 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌 http://www.yamaneko.org 編集部:mgzn@yamaneko.org 2009年5月15日発行 配信数 2350 無料 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●2009年5月号もくじ● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎プロに訊く:第32回 もとしたいづみさん(作家・翻訳家) ◎プロに訊く連動レビュー:『みーんな いすの すきまから』 マーガレット・マーヒー文/ポリー・ダンバー絵/もとしたいづみ訳 ◎賞情報:2009年カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞候補作発表 ◎注目の本(邦訳読み物):『パパの電話を待ちながら』 ジャンニ・ロダーリ作/内田洋子訳 ◎注目の本(未訳読み物):"Broken Soup" ジェニー・ヴァレンタイン作 ◎賞速報 ◎イベント速報 ◎お菓子の旅:第48回 バレリーナの舞いのように軽い口あたり 〜パヴロバ〜 ◎読者の広場 |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●プロに訊く●第32回 もとしたいづみさん(作家・翻訳家) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2008年やまねこ賞絵本部門大賞受賞の『みーんな いすの すきまから』(マーガ レット・マーヒー文/ポリー・ダンバー絵/フレーベル館)を翻訳された、もとした いづみさん。創作・翻訳ともに数多くの作品を手がけられていますが、1冊目は絵本 の翻訳だったとか。今回は、雑誌編集者から作家・翻訳家になられたいきさつや、翻 訳と創作との相違点、共通点などをおうかがいしました。明るいお人柄に惹きこまれ、 作品を読んでいるときと同様に、笑いのたえないインタビューでした。お忙しいなか、 インタビューに応じてくださった、もとしたさんに心から感謝いたします。 【もとした いづみ(本下いづみ)さん】 +――――――――――――――――――――――――――――――――――――+ |1960年生まれ。西東京市在住。子どものころから文章を書くことと、人を喜ばせ| |ることが好きだった。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーの編集者、ライタ| |ーとなる。1992年、『おれは長ぐつをはいた猫である』(トニー・ロス作/架空| |社)で初めて翻訳にたずさわる。その後、創作絵本や読み物を数多く手がけ『ど| |うぶつゆうびん』(あべ弘士絵/講談社)で産経児童出版文化賞ニッポン放送賞| |を、『ふってきました』(石井聖岳絵/講談社)で、講談社出版文化賞絵本賞、| |日本絵本賞を受賞。ポリー・ダンバーを中心とした絵本の翻訳作品も数多い。 | +――――――――――――――――――――――――――――――――――――+ 【もとしたいづみさん作品リスト】 http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/imotoshi.htm ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ Q★まず、編集者になられたいきさつを教えてください。 A☆大学時代、「本の雑誌」(本の雑誌社)で配本のお手伝いをしていたときに、初 めて出版業界に触れました。ときどき校正作業もさせていただけたので、とても勉強 になりました。そのおかげで出版に興味を持ちましたが、大学卒業後はサンリオに入 社して、商事部で商品企画などをしていました。仕事の一環でキャラクターの背景と なるストーリーを考えたのが最初の創作といえるかもしれません。その後、月刊誌の 「MOE」(当時は偕成社。現、白泉社)でグッズの企画をしているうちに編集部の 仕事をするようになり、インタビュー記事やお店の取材記事などを手がけるようにな りました。 Q★その後はどのような形でお仕事をされたのですか? A☆フリーランスで編集やライターの仕事をしていました。結婚して専業主婦だった 期間もあります。子どもといっしょに過ごす時間を第一に考えてのことでしたが、先 輩編集者から「少しずつでも仕事を続けておかないと復帰できない」とアドバイスさ れ、かなり悩みました。でも、離れている時間があっても親子のきずなを育めるとい う結論に達して、ひとりめの子どもが3歳のころからライターの仕事を再開しました。 児童書の編集もしましたが、当時はライターのほうが楽しいと思っていました。 Q★翻訳に関わられるようになったいきさつを教えてください。 A☆編集者時代に、翻訳の仕事をしてみないかと声をかけられたのがきっかけです。 実績を示す本があると創作の仕事をする際の名刺代わりになるからと勧めてくださっ たようなんです。当時わたしは、創作をしたいとはまだ考えていなかったので「なぜ、 編集なのに翻訳を?」と思わなくもなかったのですが、偶然、ちょっとしたお話を書 いてみた時期でもあり、昔から文章を考えるのが好きだったので挑戦してみました。 Q★はじめて絵本の翻訳に取りくまれて、いかがでしたか? A☆『おれは長ぐつをはいた猫である』で、学校で勉強したような訳を出したところ、 もっと原文から思い切り離れていいといわれました。それで、ためしに原文は気にせ ずに絵を見て文章を書いてみました。でも、何年かたってその話をしたときに、やは り原文を尊重すべきでは? と、ある人に指摘されたことがあります(笑)。 Q★お得意でない英語の翻訳を依頼されたというエピソードを雑誌に書いていらっし ゃいましたが、翻訳の仕事についてご自身はどう思われますか? A☆翻訳の仕事はできればやめておこうと思っているんですが(笑)、1冊訳すと 「翻訳をする人」と受け取られて、作品を読んだ編集者の方から声をかけていただき、 また次の話が来てという感じで現在にいたっています。フレーベル館さんとおつきあ いをはじめるときに、ポリー・ダンバーによる『ケイティー』を訳しましたが、まさ かこんなにたくさん彼女の絵本を訳すことになるとは思ってもみませんでした。今で も英語が得意とはいえないけれど、翻訳をはじめる前よりは英語力が上がっているよ うな気がします(笑)。それに、海外在住の友人など、いざとなれば相談できる人が たくさんいるので心強いです。 Q★ポリー・ダンバーの作品の魅力は、どこにあると思われますか? A☆ダンバーの作品は、初期と比べると画風が変化しているところもあり、発展途上 の印象を受け、それがまた魅力でもあります。次々と作品を出しているので今後の展 開が楽しみですね。児童書界の大御所、マーガレット・マーヒーが文章を書いた『み ーんな いすの すきまから』は、完成度の高い作品だと思いました。言葉遊びの絵 本だったので訳出する際の苦労も多かったけれど、満足のいく邦訳絵本になりました。 Q★翻訳されるときの手順を具体的に教えてください。 A☆はじめに本をぱらぱらめくって内容を把握し、この時点では一字一句丁寧に読み 込みません。また、全体を訳したあとは、作品と少し距離を置いて見直し、印刷した 訳文を原書にはりつけて全体のバランスを見ています。そして、原文にとらわれない 日本の絵本としての完成形を目指します。 最終的には、日本人の子どもたちが読んで楽しいものになるよう意識し、現地の子 どもでないと分からないような固有のものは、読者が立ち止まらないように省略した り内容を補足したりします。原作から受ける感覚を優先しつつ、編集者と相談して、 結末を少し変えたり、文の順番を入れ替えたりすることもあります。 訳すための調べ物はすごく好きですが、調べたら、そこからいったんはずれないと 自分の言葉は出せないですね。辞書を引いたり人に聞いたりして理解できたら、具体 的な言葉は忘れてから訳すようにしています。同様に、下訳してもらうとその人の訳 にひきずられてしまうので自分には向かないようです。 Q★探している言葉は、どのような時に思いつくことが多いですか? A☆創作や翻訳などさまざまな作品を同時進行で考えており、ふとした瞬間に思いつ くことが多いです。また、推敲中の訳文を時間をおいて見たときに「ちがう」と違和 感を持ったものは、やはりあとで見てもちがうことが多いです。そういう言葉は「ほ かに何かあるんじゃないかな」とずっと考えています。 Q★創作と翻訳との相違点や共通点をうかがえますか? A☆創作は、なにもないところから雲をつかむような広い範囲での手探りだけれど、 翻訳はもう少し狭い範囲での手探りだと思います。翻訳は、もともとあるものを受け 入れることからはじまるのですよね。そこに受け入れにくいものが入っているときは、 苦労してしまうように思います。 以前短歌をやっていましたが、基本的に縛りがあるのが好きなんです。絵本を翻訳 するには、行数の制約もあるし、デザイン的バランスもあるし、絵の雰囲気も入れな いといけないので、かなり制限がありますよね。また、講談社の「狂言えほん」シリ ーズで文章を手がけましたが、長い脚本を短く分かりやすいようにまとめる点が絵本 の翻訳と共通しているなと思いました。 Q★昔から子どもの本がお好きだったのでしょうか? A☆子どものころは特に本好きでもなく、大学の授業を通して、はじめて「メアリー ・ポピンズ」、「クマのプーさん」、「ナルニア国物語」のおもしろさを知りました。 それも「読みふけった」という感じではなかったし、一般の小説も普通に読む程度で 読書好きとまではいきませんでした。昔、大学の後輩に「どうしたらそんなおもしろ いことを考えつくのか」と聞かれたとき、横から先輩が「決まってるじゃないか、も としたさんは読書量がちがうんだよ」と即答したエピソードがありましたが、そんな ことはぜんぜんなかったんです(笑)。 絵本は子どもが生まれてからじっくり読むようになりました。読み聞かせを通して、 子どもはどういう受け止め方をするのか、どこで喜ぶのかなどに気づきました。 基本的に好きな作家や作品は決まっていなくて、そのときどきによって変わります が、いつでも好きだなあと思う絵本は「フランシス」シリーズですね。『フランシス とたんじょうび』(ラッセル・ホーバン文/リリアン・ホーバン絵/松岡享子訳/好 学社)に出てくる〈チョムポ〉がすごくおいしそうだったので、いまだに輸入食品の お店に行くと「もしかしてこれがそうかも」と子どもといいあっています(笑)。 Q★今後の翻訳作品の出版予定を教えてください。 A☆すでに2冊でている「ティリーとおともだちブック」シリーズの続編が刊行され る予定です。『かくれんぼタンプティ』『おしゃれなプルー』のあとに、『かみつき ドゥードゥル』『ねないこティップ』が出版されます。 Q★翻訳家を目指すみなさんへのアドバイスをお願いします。 A☆あまり肩の力を入れすぎないのがいいかもしれません。わたしは小心者でまじめ なので、意識してゆるませておくようにしています。また、狭いところで苦しまず、 出したいものを出し、ふってくるものは受け入れることにしています。がちがちにし てしまうと、いざ運命の神様が呼んでくれたときに、動きがとれないように思うから です。翻訳に関しても、原文に忠実に訳そうとするあまり掘り下げていくと、きりが ありませんよね。読み手にとって大切なものを考えるのが、一番だと思います。 また、何かに役立たせようという下心なく、やりたいことをいろいろやってみては いかがでしょう? 続けるうちに幅も出てくるでしょうし、行きたい方向が分かって くるように思います。とはいえ、わたしも少し前、無声映画に短い文章をつけるのは、 絵本の勉強になるはず、という下心まんまんで(笑)活弁の勉強を始めました。でも、 実際やってみると、無声映画のおもしろさと、人前で「語る」おもしろさにはまり、 デイケアセンターに語りに行ったりもしました。 今思うと、高校生や専業主婦の時期に、外に向けて発散することができずにエネル ギーを内側にためていたのが、ある時を境にはじけたように思います。悶々としてい た経験も、決してむだではなかったのでしょうね。 *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** 創作絵本の仕事は、交友のある画家の方からお声がけされることが多いとか。人間 関係を大切にされていらしたことのたまものだと思いました。また、編集者の経験か ら、作る側・出す側両方の立場を理解し配慮されるお仕事ぶりも勉強になりました。 今回は、大きい視点で翻訳に対する姿勢を教えていただいたような気がします。 (取材・文/横山和江) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●特別企画連動レビュー●幸せは、思わぬところからやってくる!? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『みーんな いすの すきまから』 マーガレット・マーヒー文/ポリー・ダンバー絵/もとしたいづみ訳 フレーベル館 定価1,365円(税込) 2007.12 24ページ ISBN 978-4577034484 Amazonで詳細を見る bk1で詳細を見る "Down the Back of the Chair" text by Margaret Mahy, illustrations by Polly Dunbar Frances Lincoln Limited,2006 Amazonで詳細を見る ★2007年(2006年度)ケイト・グリーナウェイ賞ロングリスト作品 ★2008年やまねこ賞絵本部門大賞受賞作品 さて、ご紹介しますのは、ビンボー家族とすてきないすの物語。ことの起こりは、 パパが車のかぎをなくしたこと。車がなければ、仕事がない。仕事がなければ、お金 もない。軽快なリズムに乗せて語られる一家のヒサンな窮状に、ついついクスリとさ せられます。でも、一家は笑っちゃいられない。なにしろパパはストレスのせいか、 いつのまにやらハゲ寸前! そのとき、二女のマリーがいうことには、「いすのすき まをみてみれば?」。「いす」というのは、なかなか立派なひとりがけのソファー。 その座面と背もたれのあいだに手を入れて、マリーが取り出してみせたのは、キラキ ラ光る3枚のコイン! さっそくパパもまねをして、いすのすきまの奥まで、ずずい と片手をつっこみました。さあ、出てくる、出てくる、何が出る? 次から次へと飛び出すものは、奇想天外、びっくり仰天、奇妙きてれつ、まか不思 議。ナンセンスに展開するストーリーが、七五調をベースに緩急をつけたリズミカル な文でテンポよく語られます。頭韻、脚韻、語呂合わせにダジャレ、五感を刺激する 擬音語・擬態語――レトリックを駆使した遊び心満載の訳文には、座布団1枚2枚と いわず、10枚まとめてさしあげたい。愉快な言葉に心がほぐれたら、ぜひとも遠慮な くツッコミを。「えー、なんで!?」「それはない、ない!」「ありえなーい!」絵 本とのそんな掛け合いが、ますます楽しみを広げてくれるはず。 もちろん、絵の楽しさも負けてはいません。にぎやかでカラフルな画面は、ページ をめくるたびに気持ちを浮きたたせてくれます。いすから飛び出したあれこれを、い ったいどこに描かれているかとひとつひとつ探してみるのもおもしろく、そうしてじ っくり見れば見るほど、随所に施されたユーモラスな表現に笑いを誘われます。 ところでくだんの一家はというと、いすのすきまから出てくるものに、初めビック リ、たちまちニッコリ。さっきまでの暗ーい気分はどこへやら。笑う門には福来る。 いすのすきまは、さらにとっておきの品で、一家に天にものぼる喜びをもたらしてく れました。え? その品物は何かって? それは読んでのお楽しみでござんすよ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【文】マーガレット・マーヒー(Margaret Mahy):1936年、ニュージーランド生ま れ。大学卒業後、図書館勤務時代の1969年に作家デビューし、現在までに、絵本から YA向けまで200を超える作品を発表。"The Haunting"(『足音がやってくる』青木 由紀子訳/岩波書店)、"The Changeover"(『めざめれば魔女』清水真砂子訳/同) でカーネギー賞を受賞。2006年には、国際アンデルセン賞作家賞を受賞した。 【絵】ポリー・ダンバー(Polly Dunbar):幼いころから絵を描くのが好きで、16歳 で出版デビュー。ブライトン大学でイラストレーションの学位を取得後、続々と絵本 作品を発表する。"Shoe Baby"(『くっくちゃん』もとしたいづみ訳/フレーベル館) などで、母ジョイス・ダンバーとも共作。自身で文も手がけた "Penguin"(『ペンギ ンさん』同上)では、2008年チルドレンズ・ブック賞幼年向け部門を受賞した。 【訳】もとした いづみ(本下いづみ):本誌今月号「プロに訊く」参照。 【参考】 ▼マーガレット・マーヒー紹介ページ(New Zealand Book Council 内) http://www.bookcouncil.org.nz/writers/mahym.html ▼ポリー・ダンバー公式ウェブサイト http://www.pollydunbar.com/ ▽マーガレット・マーヒー作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/m/mmahy.htm ▽ポリー・ダンバー作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/d/pdunbar.htm (杉本詠美) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●賞情報●2009年カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞候補作発表 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4月24日、カーネギー賞およびケイト・グリーナウェイ賞のショートリスト(最終 候補作)が発表された。英国図書館協会が主催するこの賞は、イギリスでは最も権威 ある児童文学賞である。昨年11月にロングリストが発表され、カーネギー賞に44作品、 ケイト・グリーナウェイ賞に39作品が挙がっていた。受賞作の発表および、授賞式は 6月25日。ショートリストは以下の通り。ロングリストは、やまねこ翻訳クラブウェ ブサイトの「速報(海外児童文学賞)」コーナーに掲載中。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award ※両賞は、2007年より、出版年度(前年)の表記から授賞年表記に変わりました。そ れにならい、当メールマガジンも2007年以降の表記方法を改めました。なお、やまね こ翻訳クラブウェブサイト内資料に関しましては、2007年以降も年度表記となってい るリストがあります。ご了承ください。 【カーネギー賞候補作】〜 Carnegie Medal 〜(作家対象) "Cosmic" by Frank Cottrell Boyce (Macmillan) "Black Rabbit Summer" by Kevin Brooks (Puffin) "Airman" by Eoin Colfer (Puffin) "Bog Child" by Siobhan Dowd (David Fickling Books) "Ostrich Boys" by Keith Gray (Definitions) "The Knife of Never Letting Go" by Patrick Ness (Walker) "Creature of the Night" by Kate Thompson (Bodley Head) ロングリスト44作品中、最終候補に選ばれたのは7作品。すべて、すでに他の賞の 候補に名を連ねた作品であった。本賞受賞経験があるのは、2004年度に "Millions" (『ミリオンズ』池田真紀子訳/新潮社)で受賞した Frank Cottrell Boyce ひとり だが、Kevin Brooks は3度目、Siobhan Dowd は2度目のショートリスト入り。また、 今回初めてショートリストに残った Keith Gray と Kate Thompson は、ここ数年何 度もロングリストに名を連ねていた作家である。そのなかで、ロング、ショートリス トともに初登場の Patrick Ness の健闘が光る。 2008年ガーディアン賞ショートリストにも残った Frank Cottrell Boyce の "Cosmic" は、11歳で大人にまちがわれるほど体の大きな少年の冒険物語。ユーモラ スな筆致で少年と父との関係が描かれている。 Kevin Brooks の "Black Rabbit Summer" では、ある夏の晩に再会した旧友5人組 が、悪夢のような事件に巻きこまれる。ミステリータッチなストーリーに、ドラッグ、 飲酒、ホモセクシュアリティなど現代の若者をとりまく問題が織りこまれた作品。 「アルテミス・ファウル」シリーズ(大久保寛訳/角川書店)で人気の Eoin Colfer は、ビスト最優秀児童図書賞ショートリストにも入った "Airman" が選ばれた。1800 年代のアイルランドの島国で、国王殺しの罪を着せられた少年が脱獄を企てる。方法 はたったひとつ、空を飛ぶしかなかった。 Siobahn Dowd は、デビュー作 "A Swift Pure Cry" に続いて、3作目の "Bog Child" が選ばれた。アイルランド紛争さなかの北アイルランドを舞台に、泥炭のな かから見つかった古代の子どもの遺体(ボッグ・チャイルド)の謎と、それを見つけ た少年をとりまく世相と家族の問題が重なりあうようにして物語が展開する。 2008年コスタ賞ショートリストにも残った Keith Gray の "Ostrich Boys" は、少 年3人が、亡くなった親友の遺灰を盗みだして、彼の好きだった場所まで運ぼうとす る。ユーモアたっぷりながら、人生や死、友情について考えさせてくれる作品。 Patrick Ness の "The Knife of Never Letting Go" は2008年ガーディアン賞受賞 作。男ばかりの、人や生き物の考えがすべて聞こえてしまう町に住む少年が、13歳に なる直前に、町の隠されていた秘密を知って逃げだすことを決意する。 Kate Thompson の "Creature of the Night" では、14歳の少年が都会の悪い仲間 から引き離されて、母と弟とともに田舎に移り住む。過去に殺人事件があったという 家で、弟が見たという小さな女の人は妖精なのか、はたまた……? 【参考】 ▼Frank Cottrell Boyce 参考ページ http://www.contemporarywriters.com/authors/?p=auth5181CF7D1b2672A314GNGK48BABB ▼Eoin Colfer 公式ウェブサイト http://www.eoincolfer.com/ ▼Siobhan Dowd 公式ウェブサイト http://www.siobhandowd.co.uk/ ▼Keith Gray 公式ウェブサイト http://keith-gray.com/ ▼Patrick Ness 公式ウェブサイト http://www.patrickness.com/ ▽ケヴィン・ブルックス作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/b/kbrooks.htm ▽シヴォーン・ダウド作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/d/sdowd.htm ▽ケイト・トンプソン作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/t/kthompso.htm (児玉敦子) 【ケイト・グリーナウェイ賞候補作】〜 Kate Greenaway Medal 〜(画家対象) "Snow Goose" by Angela Barrett (Hutchinson) "Varmints" by Marc Craste (Templar) "Little Boat" by Thomas Docherty (Templar) "How to Heal a Broken Wing" by Bob Graham (Walker) "The Way Back Home" by Oliver Jeffers (Harper Collins) "The Savage" by Dave McKean (Walker) "Harris Finds his Feet" by Catherine Rayner (Little Tiger Press) "Molly and the Night Monster" by Chris Wormell (Jonathan Cape) ロングリスト39作品中、今年は8作品が残った。このうち Bob Graham は2002年度 の受賞者。そのほか、過去にもショートリストに選ばれたことがある画家や世界的に 活躍している画家が多く含まれており、実力者ぞろいといえる。 Angela Barrett は、陰影のある独特の雰囲気を持った絵が印象的な画家。1993年 度に "Beware, Beware" でショートリストに入っている。今回選ばれた "Snow Goose" (『スノーグース』片岡しのぶ訳/あすなろ書房)は、ポール・ギャリコが1941年に 発表した作品に新たに絵をつけたもので、第二次世界大戦中のイギリスを舞台に、傷 ついた渡り鳥を助ける少女と画家の交流を描いている。 Marc Craste は、ロンドンのアニメーション製作会社 Studio AKA のアニメーショ ン・ディレクターとして知られる。ショートリスト入りした "Varmints" は、動物た ちが穏やかに暮らす自然が、ビルや騒音に脅かされていく様子を描く、映像がそのま ま絵本になったような作品。工業化の脅威によって明るさと静けさを失っていく世界 の中で、自然を守ろうとする生き物たちの無垢でかわいらしい姿が印象的だ。 美術大学で金属細工と彫刻を学んだという Thomas Docherty は、明るい色あいと、 躍動感のある絵が持ち味。"Little Boat" では、広い海へと漕ぎ出した小さなボート の大冒険が繰りひろげられる。 オーストラリアの絵本作家 Bob Graham は、2001年度に "Let's Get a Pup!" (『いぬがかいた〜い!』木坂涼訳/評論社)でショートリスト入りし、2002年度に "Jethro Byrde, Fairy Child" で本賞を受賞しているベテラン。今回のノミネート作 "How to Heal a Broken Wing"(『きずついたつばさをなおすには』まつかわまゆみ 訳/評論社)は、マンガのようなコマ割りを巧みに使い、たっぷりの絵と必要最小限 の文章で、傷ついた鳥を見つけた男の子の物語を描いている。 2005年度に "Lost and Found"(『まいごのペンギン』三辺律子訳/ソニー・マガ ジンズ)でショートリスト入りした Oliver Jeffers は、"The Way Back Home" で再 びショートリストに選ばれた。月に出かけて地球に帰れなくなった男の子が、同じ境 遇の火星人と知りあう様子をコミカルに描いている。はっきりとした色づかいと、登 場人物の顔などを細部まで描きこまないシンプルな絵が特徴で、前作同様小さな子ど もにも親しみやすい絵本である。 漫画家や写真家、グラフィックデザイナーなど、多彩な顔を持つ Dave McKean は、 2005年度にも "Mirrormask" でショートリストに選ばれている。今回の "The Savage" は、David Almond の散文詩に絵をつけたもの。抑え目の色調と、ほとばしるような 力あふれる筆づかいで、父を亡くした少年の激しい感情に満ちた精神世界を表現して いる。 2007年(2006年度)にほほ笑みをなくしたトラの物語 "Augustus and his Smile" (『オーガスタスのたび』すぎもとえみ訳/アールアイシー出版)でショートリスト に選ばれた Catherine Rayner は、今回は大きな足の小さな野ウサギの絵本 "Harris Finds his Feet" でショートリスト入りした。祖父に誘われて広い世界に出た野ウサ ギの男の子の経験を、柔らかな春の空気を感じさせる色彩で表情豊かに描いている。 Chris Wormell も、2003年度の "Two Frogs" に続いて2度目のショートリスト入 り。"Molly and the Night Monster" は、夜中に足音を聞きつけた女の子モリーが、 足音の主をクマか、ワニか、はたまた巨大な闇夜の怪物かと想像しておびえるという 物語。青い色の濃淡だけを用いて、主人公が感じる不安を巧みに表現している。 【参考】 ▼カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞公式ウェブサイト http://www.carnegiegreenaway.org.uk/home/ ▼Thomas Docherty 公式ウェブサイト http://www.thomasdocherty.co.uk/Illustration.htm ▼Oliver Jeffers 公式ウェブサイト http://www.oliverjeffers.com/ ▼Catherine Rayner 公式ウェブサイト http://www.catherinerayner.co.uk/ ▽カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞について (本誌1999年7月号情報編「世界の児童文学賞」) http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/1999/07a.htm#a1bungaku ▽カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品リスト (やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/carnegie/index.htm http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/greenawy/index.htm (笹山裕子) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●注目の本(邦訳読み物)●シュールとナンセンスの中にあるのは ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『パパの電話を待ちながら』 ジャンニ・ロダーリ作/内田洋子訳 講談社 定価1,470円(税込) 2009.04 191ページ ISBN 978-4062149716 Amazonで詳細を見る bk1で詳細を見る "Favole al telefono" by Gianni Rodari Einaudi, 1962 Amazonで詳細を見る 月曜日から土曜日までイタリア中を旅しているセールスマンのビアンキ氏が、毎晩 娘に電話でお話をひとつ聞かせるという設定の短編集。ナンセンスな話やシュールな 話、ほのぼのとした話など、いろいろな味わいの物語が計56話収録されている。 いつもうっかりしているジョヴァンニは、散歩中、いろいろなことに気をとられて いるうちに、手をなくし、腕1本まるごとなくし、脚や耳、鼻もなくしてしまう。そ のたびに親切な人たちが拾って、ジョヴァンニの母親のところへ届けてくれる。息子 のうっかりぶりを嘆く母親に、拾ってくれた人たちはそろってこう言う。「子どもっ てみんなそういうものですよ」(「うっかり坊やの散歩」) 偉大な旅行家、ジョヴァンニーノ・ペルディジョルノが訪れたのは、とんがりのな い国。バラのとげさえ、ゴムのようにやわらかい。うっかりバラを折ってしまった罪 で、ジョヴァンニーノは刑罰を受けることになるが、それは警備員のほっぺたを二度 ひっぱたくことだった。(「とんがりのない国」) 読みながら、子どものことがよくわかっているなあ! とうなってしまう。前述の 「うっかり坊やの散歩」では、好奇心旺盛の子どもがやりそうなことがシュールに誇 張され、「日曜日の朝」では、ひげそり中に父親がうっかりけがをしたらすぐに治療 できるよう、救急箱を持ってそばで待機している息子と、息子の期待に応えてやりた いけれど、わざとけがをしては意味がないと悩む父親の姿が描かれ、子どもと大人と のあるべき関係を教えてくれる。一方、「とんがりのない国」や、7か国にいる7人 の男の子が実は同じ男の子で、だから大人になっても戦争など起こらないのだという 「ひとりだけど七人」などを読むと、平和への思いを感じずにはいられない。 原書 "Favole al telefono" が邦訳出版されるのはこれで3度目。ロダーリお得意 の言葉遊びを日本語に翻訳するのは難しいが、翻訳者が奮闘努力し、またYA以上を 対象としたおかげもあって、楽しく仕上がっている。イタリアを代表する児童文学作 家でありながら、日本では知名度が低く、過去に邦訳された作品のほとんどが絶版に なっているロダーリ。この本が、ロダーリの魅力を広めてくれることを願う。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【作】ジャンニ・ロダーリ(Gianni Rodari):1920年、イタリア、ノヴァーラ県の オメーニャで生まれ、ヴァレーゼ県で育つ。小学校の教員を経て、戦後、左派新聞に 児童文学を書き始め、人気作家となる。1970年に国際アンデルセン賞作家賞を受賞。 邦訳に『猫とともに去りぬ』(関口英子訳/光文社)、『二度生きたランベルト』 (白崎容子訳/平凡社)などがある。1980年、ローマにて死去。 【訳】内田洋子(うちだ ようこ):1959年神戸市生まれ。東京外国語大学イタリア 語学科卒業。ウーマンアソシエイツ代表。著書に『イタリア人の働き方』(光文社)、 『トマトとイタリア人』(文藝春秋、いずれもシルヴィオ・ピエールサンティ氏と共 著)などがある。ミラノ在住。 【参考】 ▼ジャンニ・ロダーリ公式ウェブサイト(イタリア語) http://www.giannirodari.it/ ▽ジャンニ・ロダーリ作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/r/grodari.htm (赤塚きょう子) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●注目の本(未訳読み物)●ぐちゃぐちゃになったスープの行方は? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『スープと写真とわたしの家族』(仮題) ジェニー・ヴァレンタイン作 "Broken Soup" by Jenny Valentine HarperCollins, 2008 ISBN 978-0007229659 (UK) 256pp. Amazonで詳細を見る HarperTeen, 2009 ISBN 978-0060850715 (US) 224pp. Amazonで詳細を見る ★2009年カーネギー賞ロングリスト作品 ★2008年ブックトラスト・ティーンエイジ賞ロングリスト作品 ★2008年コスタ賞児童書部門ショートリスト作品 ★2009年チルドレンズ・ブック賞高学年向け部門ショートリスト作品 (このレビューは UK 版を参照して書かれています) デビュー作 "Finding Violet Park" で話題をさらったヴァレンタインの2作目は、 1作目のご近所版といえるような設定。今回は骨つぼではなく、写真のネガから話が はじまる。主人公の少女ローワンは、「君がネガを落とすところを見た」と初対面の 少年にネガを押し付けられた。ローワンは身におぼえがなかったが、そのことに興味 を持って声をかけてきた18歳の少女ビーと一緒に現像してみると、思いもよらない人 の顔が……。ローワンは動揺する。彼女の家庭は、原題にあるように、ひっくりかえ ってどうにもならなくなったスープのような状態だった。2年前、兄のジャックが死 に、母親はそのショックから立ち直れず、ひたすら眠ることで自分を守っている。15 歳のローワンは、家を出てしまった父親にはそのことをだまったまま、5歳の妹と母 親の世話、そして家事のすべてを、たったひとりで背負いこんでいた。 ばらばらになった家族の再生というテーマは重いものの、感傷に流されることなく、 まじめすぎることもなく、かといってドタバタにもならず、物語は進行する。ローワ ンの魅力的な等身大の語りが大いに成功しているといえるだろう。早い段階で写真の 謎が提示され、誰が? どうして? と疑問が大きくふくらむ。ミステリの要素を効 果的におりこんだ展開は実に見事だ。写真の秘密やローワンの家族の行方が気になっ て、夢中で読み進めていった。イギリス版原書の表紙デザインが、にぎやかで生き生 きとしていて目をひくが、その印象通り前向きな作品だ。 心に強く残ったのは、息子を亡くし、ふたりの娘を含めたすべてのことから逃げて いる母親と、母親に背を向けられたまま2年間を過ごした主人公の姿だ。死んだ兄は、 本当の姿からどんどん離れて聖人のような存在になってしまった、と冒頭で考えるロ ーワン自身も、母親同様、兄の死にしばられていた。しかし、写真をきっかけに、ビ ーとその家族やネガを拾った年上の少年ハーパーの助けをかりながら、兄が残したも のに目を向け、ためこんでいた自分の気持ちをはき出すようになっていく。ローワン の大きく揺れる気持ちのひとつひとつが、日本の中学生や高校生の心にも届き、ごく 身近なものとして共感を得るだろう。若い人たちに、ぜひ読んでほしい作品である。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【作】Jenny Valentine(ジェニー・ヴァレンタイン):ロンドン大学ゴールドスミ ス・カレッジで英文学を学ぶ。ロンドン、プリムローズヒルの無添加食品店で15年間 働いた後、ウェールズの無添加食品店のオーナーになった。デビュー作 "Finding Violet Park" が2007年ガーディアン賞を受賞するなど高い評価を得て、2作目の "Broken Soup" もさまざまな賞の候補にあがっている。 【参考】 ▼作品紹介ページ(ガーディアン紙ウェブサイト) http://www.guardian.co.uk/books/2008/feb/16/featuresreviews.guardianreview31 ▽ジェニー・ヴァレンタイン作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/v/jvalenti.htm ▽"Finding Violet Park" のレビュー(本誌2007年12月号「注目の本」) http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2007/12.htm#myomi2 (植村わらび) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●賞速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★2009年エズラ・ジャック・キーツ賞発表 ★2008年度アンドレ・ノートン賞発表 ★2009年ローカス賞ファイナリスト発表(受賞作の発表は6月27日) ★2009年ブランフォード・ボウズ賞ショートリスト発表(受賞作の発表は7月9日) ★2008年度アガサ賞発表 ★2009年MWA賞(エドガー賞)受賞作発表 ★2009年産経児童出版文化賞発表 ★2009年アメリカス児童・ヤングアダルト文学賞発表 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を ご覧ください。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●イベント速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★展示会情報 木城えほんの郷「インド太陽の光 ラマチャンドランの絵本と民族画の世界展」 ブックハウス神保町 「『ちいさなよるのおんがくかい』ヨゼフ・パレチェク原画展」 など ★講座・講演会情報 教文館 子どもの本のみせ ナルニア国「上田真而子氏講演会」 など ★イベント情報 劇団うりんこ公演「バイバイ、わたしのおうち」 など 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、 空席状況については各自ご確認願います。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event (笹山裕子/冬木恵子) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●お菓子の旅●第47回 バレリーナの舞いのように軽い口あたり 〜パヴロバ〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ We children were snuggled up safe in our beds, While dreams of pavlova danced'round in our heads; And Mum in her nightie, and Dad in his shorts, Had just settled down to watch TV Sports, "An Aussie Night Before Christmas" by Yvonne Morrison/Kilmeny Niland Scholastic Australia(2005) Amazonで詳細を見る *-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-* 1920年代、バレエ界に旋風を巻き起こしたロシアのバレリーナ、アンナ・パヴロワ。 彼女は当時、バレエのすばらしさを広く知らせるために世界各国を精力的に巡業し、 1926年にニュージーランド、1929年にオーストラリアでも公演を行いました。ニュー ジーランドではこの名バレリーナの訪問を記念して、ゼリーやメレンゲを使ったお菓 子が数種類作られ、それぞれパヴロバ(Pavlova の英語読み)と呼ばれていたという 記録が残っています。しかし一方、現在のパヴロバは、1935年に西オーストラリアの シェフがニュージーランドの雑誌に紹介されたメレンゲケーキからヒントを得てデザ ートを考案し、それが「パヴロワのように軽やか」と表現されて生まれたのだ、とい う説も聞かれます。このようないきさつから、今でもニュージーランドとオーストラ リアの間では「どちらが生みの親か」について議論になることもあるほど。これから も決着がつくのはむずかしそうですが、それも両国がこのお菓子に強い愛着を感じて いる証拠なのかもしれません。 引用文は、オーストラリアのクリスマス前夜の様子を描いた絵本から。次の日のプ レゼントを楽しみに眠る子どもたちの夢の中では、お菓子のパヴロバがバレリーナの ように、ふわふわと楽しげに踊っているのでしょう。真夏の国を訪れるサンタさんが、 短パンにビーチサンダル姿で登場するのもユーモラスです。「まるで背中に羽が生え たように舞う」と評されたパヴロワのイメージ通り、メレンゲと生クリームだけを使 ったお菓子はとても軽い口あたり。材料も作り方もシンプルですが、色とりどりのフ ルーツを飾れば華やかなデザートに変身します。おもてなしにも、ぜひどうぞ。 *-* パヴロバの作り方 *-* 画像はこちら(やまねこ翻訳クラブ喫茶室) 材料(直径約20センチ) 卵白 4個分 塩 ひとつまみ グラニュー糖 1カップ 酢 小さじ1 バニラエッセンス 少々 コーンスターチ 小さじ2 生クリーム 100cc くだもの(いちご、キーウィフルーツなど) 適量 1.オーブンを200度にセットする。 2.卵白に塩を加え、さらに砂糖、酢、バニラエッセンスを少しずつ加えながら、角 がしっかり立つまであわ立てる。最後にコーンスターチを加えて、さっと混ぜる。 3.クッキングシートを敷いた天板の上に、2を直径約20センチの円形に広げる。 4.3をオーブンに入れて10分焼き、その後130度に下げて約1時間焼く。 5.焼きあがったらオーブンを止め、取り出さずにそのまま冷ます。 6.泡立てた生クリームを5の表面にぬり、好みのフルーツを飾る。 ★参考図書、ウェブサイト "The Pavlova Story A Slice of New Zealand's Culinary History" by Helen Leach(Otago University Press, 2008) "inmamaskitchen.com" http://www.inmamaskitchen.com/pavmay2.html ★「やまねこ翻訳クラブお菓子掲示板」 http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=okashi (かまだゆうこ/冬木恵子) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ ください。 ※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。 ※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。 ※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。 ※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編 集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。 |
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