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※1月は定期休刊です。号外を1月下旬に発行予定です。どうぞお楽しみに!

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2016年12月号
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  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
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                                No.175
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2016年12月15日発行 配信数 2570 無料
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●2016年12月号もくじ●
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◎特集:第19回やまねこ賞──会員が選んだ、今年の児童書ベスト5は?
◎注目の本(邦訳絵本):『300年まえから伝わるとびきりおいしいデザート』
       エミリー・ジェンキンス文/ソフィー・ブラッコール絵/横山和江訳
◎賞情報:2016年全米図書賞児童書部門発表
◎賞速報
◎イベント速報
◎お菓子の旅:第66回 熱い紅茶と一緒にどうぞ 〜プリャーニク〜
◎読者の広場

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    ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のライフスタイルブランド ☆☆
 独創的なデザインで世界120ヶ国以上で愛用されているフォッシルはアメリカを代
表するライフスタイルブランドです。1984年、時計メーカーとして始まったフォッシ
ルは時計をファッションアクセサリーのひとつと考え、カジュアルでポップなライン
からフォーマルなシーンにも使えるアイテムまで、年間300種類以上のモデルを発売
し続けています。またフォッシル直営店では、時計以外にもレザーバッグや革小物な
どのラインを展開しています。
TEL 03-5992-4611
http://www.fossil.com/      (株)フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社

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●特集●第19回やまねこ賞            協賛:(株)フォッシルジャパン
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 さる11月1日から17日までの間、やまねこ翻訳クラブ恒例のやまねこ賞の投票が、
当クラブ特設掲示板にて開催されました。やまねこ賞は、前年10月から本年9月まで
に出版された邦訳児童書、未訳・既訳・言語を問わない原書、および、過去1年間に
読んだ邦訳児童書を対象に、会員がベスト5を選び、大賞作品を決定するものです。
新刊を対象とする読み物部門と絵本部門の大賞に輝いた作品の翻訳者には、賞状と副
賞が贈られます。今年も株式会社フォッシルジャパンより、副賞の時計をご提供いた
だきました。

副賞の時計の写真1      副賞の時計の写真2

「読み物」「絵本」の分類については、原則として各出版社、書店などの種別を参考 に、当クラブの判断で決定しています。  記事中に記載した、本誌の過去のレビューについては、やまねこ翻訳クラブウェブ サイトに掲載のバックナンバーをご参照ください。 http://www.yamaneko.org/mgzn/bncorner.htm  すべての投票と感想はこちらでご覧いただけます。 http://www.yamaneko.org/yn_award/index.htm  やまねこ翻訳クラブは、会員・非会員を問わず、海外児童書を主とした本の話題が 書き込める「読書室掲示板」を運営しております。 http://www.yamaneko.org/dokusho/index.htm      ★☆★☆【2016年 第19回やまねこ賞 読み物部門】☆★☆★ ★大賞 『ペーパーボーイ』ヴィンス・ヴォーター作 原田勝訳 岩波書店 Amazonで検索する:書名と作者名  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  1959年の夏休み、吃音の少年は友人に代わって新聞配達を引き受けることになった。 配達先で個性豊かな人たちと出会い、さまざまな出来事を経て、少年は成長していく。 主人公がタイプライターで打ちこんだという設定で書かれた本作では、せめて文章で は息継ぎをしたくないと、コンマがほとんど使われていない。そんな主人公の気持ち が、邦訳では読点なしという形で表現されている。作者自身も吃音症で、その経験が 随所に織り交ぜられているという。2014年ニューベリー賞オナー作品。 ◎11歳の吃音の少年が、ひと月の新聞配達を通じて大人の弱さや社会の影、そして人 間の強さや聡明さに出会ってゆく。いろいろな要素がとても自然にからみあっていて ひきこまれた。(BUN) ◎少年が出会った個性的な人々や、彼を温かく見守る大人たちがすてき。(おとむと む) ◎吃音の少年がひと夏の新聞配達を通して大人たちと関わり、心豊かに成長していく。 吃音の苦しみ、人種差別、ほんものの愛情、そして言葉の大切さが深く切なく描かれ る。読点を使わずにこれほど読みやすく綴った訳者の手腕にただただ脱帽!(モーモ ー) ◎吃音障害を持つ少年が、ひと夏の経験でたくましく成長する姿を描く。日常のささ やかな冒険のなかで劇的なできごとがあり、しみじみと読み、後半は一気に読んだ。 主人公が素直なよい子なのも好印象。(ちゃぴ) ◎「ぼく」のもどかしさ、焦り、困惑、あこがれ、怒り、疑問などなどの、さまざま な気持ちが痛いほど伝わってきた。(shoko) ☆~~~~~~~~~~~~~~~~~【受賞のことば】 翻訳家 原田勝さん  ~~~~~~~~~~~~~~~☆ |                                    | | やまねこ賞、ありがとうございます! そして、何より、もちこみ企画だった| |『ペーパーボーイ』が認められたことがうれしい。やまねこ翻訳クラブも、そし| |てやまねこ賞も、ずっと気になる存在で、横目で見ながら仕事をしてきました。| |同じ児童文学翻訳というジャンルで活躍する会員の皆さんに選んでいただいたこ| |と、とても励みになります。これからも読みごたえのある作品を発掘し、翻訳し| |ていきたいと思います。                         | ☆                                    ☆  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ◆2位 『世界を7で数えたら』            ホリー・ゴールドバーグ・スローン作 三辺律子訳 小学館  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  育ての両親を突然の交通事故で亡くした天才少女ウィロー。天涯孤独の身となった ウィローは、やる気ゼロのスクールカウンセラー、しっかり者のベトナム人少女とパ ワフルなその母親など個性豊かな人々に出会い、生活を共にすることになる。奇妙な 共同生活でそれぞれの個性と才能が影響しあって、すべてが変わりはじめるミラクル な物語。アメリカで大好評を博し、映画化も決定している。 ◎育ての両親を事故で亡くした天才少女ウィローが、周囲の人々と新しい関係を築き、 それぞれの人生を変えていく。現代のおとぎ話のようで楽しく読んだ。(キジトラ) ◎世界がくだけちったときに出会った、個性豊かな人々。完璧なヒーロー/ヒロイン はいないけど、みんながそれぞれ作用を及ぼしあって新しい世界がひらけていく。笑 えて痛快でじんとするYA。(BUN) ◎大きな悲しみに直面した天才少女ウィローが、それをどうにか乗り越えながら、同 時に周囲の人たちも変えていくところがよかった。(コアラン) ◎登場人物がみな魅力的で、ストーリーもミラクルな感じが、どストライク。(おと むとむ) ◎主人公に負けず劣らず個性的な周囲の面々と、ウィローの変わっていく様に目が離 せない。力や元気がもらえる、ビタミン剤のような作品。(shoko) ◆3位 『エレナーとパーク』レインボー・ローウェル作 三辺律子訳 辰巳出版  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  奇抜な服装でぽっちゃり体形のエレナー。音楽とコミック好きのアジア系男子パー ク。周囲から浮いた存在のふたりは、スクールバスで隣り合ったことをきっかけに、 少しずつ惹かれあっていく。ぎこちなく距離を縮めていくにつれ、エレナーの抱えて いる問題が見えてきて……。ティーンエイジャーの男女それぞれの視点で交互に語ら れる、ピュアで切ない青春恋物語。作者による脚本で映画化が進められている。2013 年ボストングローブ・ホーンブック賞フィクション部門受賞。 ◎1986年、アメリカのあるティーンエイジャーの恋物語。確固としたスクールカース ト、女の子の過酷な家庭環境のなか、はぐくまれていくふたりの関係は揺るぎないも のに思われたけれど……。未知数なラストへ向かいながら、脇役、主役のハッとする ような言動に希望を感じた。(Incisor) ◎エレナーの内に秘めた情熱や溢れる思いを表現しているような表紙が印象的。パー クの恋心が愛に変わる瞬間をカセットテープの乾電池のエピソードから感じて、互い を想うふたりのピュアな気持ちがまぶしかった。(まなみ) ◎エレナーとパーク、ふたりのピュアな恋愛は、切なくてまぶしくて。こういう話、 好みです。(コアラン) ◎二人の視点がでてくることで関係がうまく表現されていて、のめりこんで読んだ。 映画化が楽しみなような、こわいような。(ワラビ) ◆4位 『14番目の金魚』ジェニファー・L・ホルム作 横山和江訳 講談社  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ある日突然、エリーの家に中学生くらいの男の子が転がりこんできた。それはなん と研究で若返りに成功したおじいちゃん! 超天才のおじいちゃんに振り回されなが らも、一緒に暮らすうちに、エリーの心に科学への興味が芽生えていく。コミカルな 物語を通して、家族、科学の良い面と悪い面、世界平和、不老不死などについて考え させられる。 ◎超天才へんくつ科学者のおじいちゃんが面白い。科学を軸にしながら、エリーの友 情や恋、家族の物語でもある。最後にタイトルの秘密がわかって感動しました。6歳 の娘がもう少し大きくなったら一緒に読みたい。(まなみ) ◎エリーが科学の素晴らしさに目覚めながらも、科学の悪い面にもしっかり目を向け ていくところがすばらしい。(モーモー) ◎突飛な始まり、ユーモラスな展開。おしまいははじまりなんだ。(ちゃぴ) ◎11歳のエリーの世界が開けていく様や、おじいちゃん?のメルヴィンの考えが変わ っているところが見もの。14番目の金魚というタイトルもうまい。(shoko) ◎主人公の物事に向き合う姿勢がすごく良かった。科学(者?)の責任という難しい 問題を扱っているのに、とてもわかりやすいのは主人公のおかげ。(モリー) ◆5位 『空飛ぶリスとひねくれ屋のフローラ』       ケイト・ディカミロ作 K・G・キャンベル絵 斎藤倫子訳 徳間書店  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ある日、10歳のフローラは掃除機に吸い込まれたリスを助けだした。その事故によ って、リスはスーパーリスになっていた! 力持ちで、人の言葉が理解できて、空ま で飛べるリスと、家庭環境のせいでさびしい思いを抱えている自称「ひねくれ屋」の 少女のユーモラスで心温まる友情物語。漫画調の挿絵で物語が進む場面もあり、ユニ ークで楽しい。2014年、本作で作者2度目となるニューベリー賞を受賞。 ◎ひょんなことからスーパーリスになったリスのユリシーズと、自称ひねくれ屋の女 の子フローラの、おかしくも心あたたまる物語。たくさん挿入されている漫画調のイ ラストがとっても楽しい。(コアラン) ◎家庭環境のせいで自ら「ひねくれ屋」というフローラと、掃除機に吸い込まれたせ いで不思議なパワーを持ったリスとの友情物語。グラフィックノベルの要素があるの で邦訳は難しいと思っていましたが、さすが徳間書店!(SUGO) ◎10歳の女の子とリスの友情を軸に、個性豊かな登場人物がユニークかつ心に沁みる エピソードを紡ぎ出していく。(ロールちゃん) ◆6位以下の作品 6位『ダーウィンと旅して』 7位『ぼくたちの相棒』 8位『霧のなかの白い犬』『モンスーンの贈りもの』(2作同点) 10位『十三番目の子』       ★☆★☆【2016年 第19回やまねこ賞 絵本部門】☆★☆★ ★大賞 『300年まえから伝わるとびきりおいしいデザート』 エミリー・ジェンキンス文 ソフィー・ブラッコール絵 横山和江訳 あすなろ書房 Amazonで検索する: 書名と作者名  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  18世紀初頭のイギリス、野原で女の子とお母さんがブラックベリーを摘む場面から 始まるお話。クリームを泡立て、砂糖と混ぜ合わせ、冷たい穴倉に入れておけば、今 日のデザート、ブラックベリー・フールの出来上がり! それから舞台はアメリカに 移り、100年後、200年後、300年後。どの時代にも、同じデザートを手づくりする親 子が登場する。材料のそろえ方や調理器具に変化が見られ、食卓を囲む人々からも歴 史背景が感じられる。デザートのもたらす幸福感が存分に伝わってくる作品。 (本誌今月号「注目の本(邦訳絵本)」のレビューをご参照ください) ◎300年もの長い間愛されるデザート。作り方や入手の方法などは変わっていっても、 みんなでにぎやかに食べる風景や、ボウルを(こっそり)なめてご満悦の姿といった、 変わらないものがうれしくも思える作品。(ゆま) ◎ブラックベリー・フールをつくる4組の親子の様子を楽しみ、それぞれの時代に思 いをはせて、味わいながら読んだ。(みちこ) ◎お菓子作りを通してアメリカの衣食住の歴史も学べる。絵がとても丁寧で、服のデ ザインやインテリアをながめるのが楽しい。何よりこのお菓子が食べたくてたまらな くなり、作ってみたら格別の味でした!(Incisor) ◎作り方の変遷に歴史を感じました。どれもおいしそう。(みーこ) ◎子どもの本だからといって手を抜かない姿勢が素晴らしい。巻末にレシピが載って いるので、わたしも作ってみました。(hanemi) ☆~~~~~~~~~~~~~~~~~【受賞のことば】 翻訳家 横山和江さん ~~~~~~~~~~~~~~~☆ |                                    | | はじめて訳書を出してから、1冊ずつ大切に訳すうちに、いつのまにか10年に| |なりました。節目の年に選んでいただき、ほんとうにうれしいです。これからも| |児童書一筋に、選書力と翻訳力を鍛えて、よい作品を紹介していこうと想いを新| |たにいたしました。大げさですが、ネットで本書を見かけたとき、運命を感じま| |した。刊行を決めてくださった、あすなろ書房さま、本書を選んでくださったみ| |なさまへ、深く感謝申し上げます。                    | ☆                                    ☆  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ◆2位 『天女銭湯』ペク・ヒナ文・絵 長谷川義史訳 ブロンズ新社  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  主人公の女の子ドッチは、おかあちゃんに連れられて銭湯「長寿湯」へ。目当ては、 あかすりの後に買ってもらえるヤクルトと、水風呂遊びだ。ある日、羽衣をなくした という天女のばあちゃんが、どこからともなく現れる。二人はすっかり仲良くなって、 水風呂で楽しく遊ぶのだった。人形や小道具をセッティングした写真で構成される、 韓国発の愉快な作品。懐かしさを感じさせる銭湯空間をファンタジーの世界に転換し た本書に、日本の読者も大興奮! ◎とにかく強烈! 一度読んだら忘れられない作品。人形たちが本当に生きているよ う。(MOMO) ◎精緻な人形、すごい迫力!(モリー) ◎魅惑の銭湯。湯につかった肌感もみごとな天女から目が離せない。(たろたろ) ◎表紙につられて衝動買いしましたが、本当に面白い! 娘のお気に入りです。関西 弁の訳がぴたりとはまって、声に出しても楽しい絵本です。思わず銭湯に行きたくな ります。(まなみ) ◎やられました! 韓国出身の絵本作家、おそるべし。(ワラビ) ◆3位(2作同点) 『スワン アンナ・パブロワのゆめ』   ローレル・スナイダー文 ジュリー・モースタッド絵 石津ちひろ訳 BL出版  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  20世紀初頭に活躍した偉大なバレリーナ、アンナ・パブロワの伝記絵本。ロシアの 大きな町で母親と暮らすアンナは、ある夜、初めて劇場でバレエの公演を観る。それ 以来、アンナの体は自然と動き、洗濯干しや掃除をしながらも、くるくる、ひらひら。 念願かなってバレエの道に進んだ後は、美しい舞で人々を魅了する。代表作〈ひん死 の白鳥〉によって世界的に有名となったアンナだが、貧しい子ども時代を忘れること はなかった。そして、世界中をめぐり、深い森や小さな村、あらゆる場所で心を込め てバレエを踊るのだった。 ◎一目でほれこんでしまった美しい絵本。(anya) ◎表紙で一目惚れ。繊細な美しい絵で、アンナ・パブロワの生涯を描いている。何度 見てもきれい。(BUN) ◎世界最高のバレリーナといわれたアンナ・パブロワの人生が、美しく繊細な絵とと もに描かれる。有名になっても奢ることなく、自分のやりたいことを追求して突き進 んだ、美しくしなやかな生き方に心を動かされた。(ロールちゃん) ◎絵が美しい!(うりこひめ) ◎バレエ好きには外せない一冊。美しく繊細な絵にうっとり。(おとむとむ) ◆3位(2作同点) 『ねこがおおきくなりすぎた』               ハンス・トラクスラー文・絵 杉山香織訳 徳間書店  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  一人息子が外国に行き、家が大きく感じられるようになったローマイヤー夫妻は、 農家の子猫をもらってくる。「チビ」と名付けた小さな猫は、近所でも大人気。だけ ど、ぐんぐん大きくなって、普通の猫から大型犬サイズ、さらにライオンを超え、怪 物のような大きさに! しまいには、警察が出動する大騒ぎになってしまう。規格外 の大きさになっていく猫と、戸惑う老夫妻の様子が、とぼけた風合いのイラストでユ ーモラスに描かれる。家族のあり方を温かく描いた愛情いっぱいの作品。 ◎ねこ好きにはたまらない一冊。どんなに大きくなっても猫は猫。わかるなぁ、この 気持ち。(おちゃわん) ◎大きいモフモフがかもしだす幸福感! どんなに大きくなっても、かわいい存在で あることは間違いないのです(うちの犬も大きい小型犬なので)。(Chicoco) ◎ひとり息子が巣立ったさみしさをまぎらわそうと子猫を飼ったところ、大きくなり すぎて! かしこい猫だから、夫婦の気持ちをくんで大きくなっていくのだなあ。そ の後の展開もステキ♪(キジトラ) ◎どんどん大きくなっていくねこが妙にかわいい。心がほんわかする結末も好き。 (コアラン) ◆5位 『船を見にいく』   アントニオ・コック文 ルーカ・カインミ絵 なかのじゅんこ訳 きじとら出版  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ぼくは、船を見るのがすきだ。でも、こわいと思うこともある――。港で造られる 船や重機の存在感、暗くて静かな海の色がリアルに描かれ、鉄や海のにおいが立ち上 るかのような作品。語り手の少年は、船の運ぶ物や行き先に思いをはせ、目に見えな い旅人のことを想像する。港へはパパと行くことも、一人で行くこともある。パパも おじいちゃんも、みんな船を見て育ったらしい。港を、そしてその先の海を見る少年 の目は、自分の未来を見据えている。 ◎表紙と題名、もうそれだけで心を打たれたかんじ。(winter) ◎船と海にロマンを感じる、男前の絵本。(コアラン) ◎船の迫力、大きさを感じさせる絵に魅力を感じた。少年の気持ちが丁寧に描かれて いるのも印象に残った。(asayaka) ◎船は生きている。そして、透明な旅人が船出を待っている……今までとちがう目で 船を見ることになりそう。(モーモー) ◆6位以下の作品 6位『バンブルアーディ』 7位『おばあちゃんとバスにのって』『プーさんとであった日 世界でいちばんゆう    めいなクマのほんとうにあったお話』(2作同点) 9位『かえってきたクレヨン』 10位『あおのじかん』       ★☆★☆【2016年 第19回やまねこ賞 原書部門】☆★☆★  原書部門には、出版年、邦訳の有無、言語に制限はなく、投票条件は児童書の原書 であることのみである。この1年で読んだものに、順位をつけずに最大5作品まで投 票できる。今年は17名が投票し、作品数は37に上った。会員があげた作品は、歴代の 海外児童文学賞受賞作品から、精密な鉛筆画が美しい文字なし絵本までと幅広く、会 員の読書傾向を反映した結果となった。ここでは唯一の複数票(3票)を獲得した作 品について、投票に添えられたコメントとともにご紹介する。残りの作品については、 やまねこ賞受賞作品リストをご覧いただきたい。 ★ "The War That Saved My Life" by Kimberly Brubaker Bradley  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  第2次世界大戦下の英国を舞台に描かれた家族の物語。生まれつき右足に障害があ る9歳の少女は、家に閉じ込められ、母親から虐待を受けてきた。唯一、外の世界を 教えてくれる弟が学童疎開で家を出るのを機に、少女は母親と決別する。たどり着い た疎開先で、受け入れてくれた女性から姉弟は無償の愛をうける。やがて少女は……。  ほんとうの家族とは、自分自身を生きるとは、作品は少女の一人称で語られている。 ◎虐待を受けて育ったため、知らないことづくしの主人公の境遇に胸が痛んだ。2016 年ニューベリー賞オナー作品。(モリー) ◎第二次世界大戦中、虐待する母から逃れてロンドンから疎開した主人公と弟が、疎 開先の村で人々と心を通わせていく物語。(anya) ◎生まれつき足が不自由なせいで母親から虐待を受けていた少女が疎開先で愛を知る 物語です。第二次世界大戦をきっかけに母親から逃れられたので、この題名がついた のだと思います。(SUGO)     ★☆★☆【2016年 第19回やまねこ賞 オールタイム部門】☆★☆★  オールタイム部門の対象となるのは、会員がこの1年で読んだ新刊以外の邦訳児童 書。投票者は24名で、あげられた作品数はなんと73に上った。例年、この部門の票は 分散する傾向にあるのだが、それを覆し、今年の産経児童出版文化賞翻訳作品賞を受 賞した作品が8票を得てトップとなった。2位の作品はタイトルのみ、お伝えする。 ★1位『テンプル・グランディン 自閉症と生きる』               サイ・モンゴメリー著 杉本詠美訳 汐文社 2015年  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  生命への尊厳と科学的視点を持つ食肉処理施設の設計者であり、米国の動物学者で もあるテンプル・グランディンを描いた伝記作品。彼女が3歳で自閉症と診断されな がらも自身の目指す道を懸命に歩んできた姿はとても力強い。それを支えた、母親、 恩師、友人たちのまなざしは、厳しくも優しさにあふれている。 (本誌2016年9月号「特集:第63回(2016年)産経児童出版文化賞翻訳作品賞受賞作 品レビュー」をご参照ください) ◎自閉症について、多くを教えてくれる作品。自閉症という個性を活かしてキャリア を築いたグランディンの、並々ならぬ努力に感服した。(キジトラ) ◎テンプルから自閉スペクトラム症の子どもたちへのアドバイスは、どんな子でもど んな人でも当てはまりますね!(モリー) ◎自閉症や食肉処理施設など、難しいテーマながらとても読みやすく、テンプルの行 動力に魅せられながらあっという間に読みました。テンプル直筆の、動物たちの描写 も見事です。(まなみ)  2位は3票を獲得した、『Wonder ワンダー』(R・J・パラシオ作/中井はるの 訳/ほるぷ出版)、『ブロード街の12日間』(デボラ・ホプキンソン作/千葉茂樹訳 /あすなろ書房)、『ハーレムの闘う本屋 ルイス・ミショーの生涯』(ヴォーンダ ・ミショー・ネルソン作/R・グレゴリー・クリスティ絵/原田勝訳/あすなろ書房) の3作品。昨年の読み物部門で上位にランクインした作品が並ぶ結果となった。 【参考】 ▽やまねこ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/yn/index.htm ▽やまねこ賞大賞受賞作品一覧(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/yn/ichiran.htm                       (森井理沙/小島明子/三好美香)

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●注目の本(邦訳絵本)●300年前から変わったこと、変わらないこと
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『300年まえから伝わるとびきりおいしいデザート』
エミリー・ジェンキンス文/ソフィー・ブラッコール絵/横山和江訳
あすなろ書房 定価1,600円(本体) 2016.05 37ページ ISBN 978-4751528150
"A Fine Dessert" text by Emily Jenkins, illustrations by Sophie Blackall
Schwartz & Wade, 2015

 泡立てたクリームにブラックベリーを混ぜ込んだ、300年前から伝わるデザート、
ブラックベリー・フール。イギリスやアメリカの家庭でおなじみの簡単なお菓子だけ
れど、昔はどうやって作っていたのだろう? 1710年のイギリスのライム、1810年の
アメリカ南部のチャールストン、1910年のボストン、2010年のサンディエゴの4つの
時代と場所を舞台に、ブラックベリー・フールをめぐる4つの物語が語られる。
 表紙をめくると、そこに広がるのは緑ゆたかな田園風景。今から300年ほど前のラ
イムで、母親と小さな娘がブラックベリーを摘んでいる。かごがいっぱいになったら、
次はいよいよお菓子作り。しぼっておいた牛乳からクリームをすくって泡立て、つぶ
して砂糖を加えたブラックベリーと混ぜ合わせればできあがり! 100年後も、その
100年後も、そのまた100年後も、材料の調達からお菓子作り、みんなでデザートを味
わう様子、後かたづけまで、4つの物語はまったく同じ構成になっている。しかし、
時代とともに技術や道具が発達し、それにともなってお菓子作りにかかる時間は短縮
され、労力も軽減されていく。変化はお菓子作りにとどまらない。料理の担い手も家
族の形も変わっていく。柔らかな色調の絵には、それぞれの時代の暮らしぶりが、家
の中の調度品から服装に至るまで細かく再現されていて、ページをめくるたびにさま
ざまな発見がある。画家ソフィー・ブラッコールはこの本を手がけるにあたって、当
時の生活習慣を丁寧に調べ上げ、ブラックベリー・フールも300年前の方法で実際に
作ってみたという。そんなこだわりがあちこちに感じられ、何度も読み返したくなる。
 4つの物語を通して描かれているのは時代の移り変わりだけではない。テーブルを
囲み、デザートを口にしたときのみんなの笑顔、リフレインのように繰り返される
「わぁ、おいしいね!」という歓声は、300年前も今もまったく同じだ。そしてもち
ろん、後かたづけの密やかな喜びも! それぞれの時代に思いをはせながら、大切な
人のためにデザートを作り、一緒に味わう喜びを伝えたい――巻末のレシピにはそん
な作者の願いが込められているのだろう。「とびきりおいしいデザート」をめぐる
2110年の物語へとつながるように。

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【文】エミリー・ジェンキンス(Emily Jenkins):ニューヨーク生まれ、ニューヨ
ーク在住。初めての絵本『わたしのいえはごにんかぞく』(トメク・ボガツキ絵/木
坂涼訳/講談社)は、2001年にボストングローブ・ホーンブック賞オナーに選ばれて
いる。また、E・ロックハートの名で書いたYA作品 "The Disreputable History
of Frankie Landau-Banks" が、2008年全米図書賞児童書部門ファイナリスト、2009
年プリンツ賞オナーに選ばれるなど、文筆活動は多岐にわたる。

【絵】ソフィー・ブラッコール(Sophie Blackall):オーストラリア生まれ。シド
ニーでデザインを勉強し、現在はニューヨークに暮らす。2016年に『プーさんとであ
った日 世界でいちばんゆうめいなクマのほんとうにあったお話』(リンジー・マテ
ィック文/山口文生訳/評論社)でコールデコット賞を受賞。

【訳】横山和江(よこやま かずえ):埼玉県生まれ、山形市在住の翻訳家。「クマ
さんのおことわり」シリーズ(ボニー・ベッカー文/ケイディ・マクドナルド・デン
トン絵/岩崎書店)、『わたしの心のなか』(シャロン・M・ドレイパー作/鈴木出
版)など、子どもの本の翻訳を数多く手がけている。やまねこ翻訳クラブ会員。

【参考】
▼エミリー・ジェンキンス公式ウェブサイト
http://www.emilyjenkins.com/

▼ソフィー・ブラッコール公式ウェブサイト
http://www.sophieblackall.com/

▽横山和江さんインタビュー
    (本誌2015年10月号「この人に聞きたい! やまねこ会員インタビュー」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2015/10.htm#shinjin

▽横山和江訳書リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/kyokoyam.htm

                               (手嶋由美子)

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●賞情報●2016年全米図書賞児童書部門発表!
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 11月16日、2016年全米図書賞の受賞作品が発表された。本号では、全4部門のうち
児童書部門について取り上げる。なお、同部門のファイナリストおよびロングリスト
作品は、本誌2016年10月号「賞情報:2016年全米図書賞児童書部門 ファイナリスト
発表」を参照のこと。

The National Book Awards 2016 Winner

★児童書部門(Young People's Literature)

"March: Book Three" text by John Lewis & Andrew Aydin,
            illustrations by Nate Powell (Top Shelf Productions)

 グラフィックノベル "March" シリーズ3部作の3作目、"March: Book Three" が
児童書部門の栄誉に輝いた。全米図書賞でグラフィックノベルの受賞は本書が初めて。
本シリーズはアメリカ公民権運動の指導者のひとり John Lewis を主人公に、人種差
別撤廃を求めて闘う人々の姿を描いた歴史ノンフィクションだ。現米国下院議員でも
ある John Lewis 本人と、彼の政策アドバイザーを務める Andrew Aydin が共同で執
筆し、グラフィックノベルでの活躍が目覚ましい Nate Powell が絵を担当した。第
3作では、1963年のアラバマ州バーミングハムの教会爆破事件から、1964年の公民権
運動家殺害事件、1965年のセルマのデモ行進(血の日曜日事件)を経て、投票権法の
成立に至るまでの様子が描かれる。なお、1作目の "March: Book One" は、2014年
にコレッタ・スコット・キング賞作家部門のオナーに選ばれている。

【参考】
▼2016年全米図書賞発表ページ(National Book Foundation ウェブサイト内)
http://www.nationalbook.org/nba2016.html

▼John Lewis 紹介ページ(Top Shelf Productions ウェブサイト内)
http://www.topshelfcomix.com/catalog/congressman-john-lewis

▼Andrew Aydin 公式ウェブサイト
http://www.andrewaydin.com/

▼Nate Powell 公式ウェブサイト
http://www.seemybrotherdance.org/

▽全米図書賞児童書部門について(本誌2003年12月号情報編「世界の児童文学賞」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2003/12a.htm#bungaku

▽本誌2016年10月号「賞情報:2016年全米図書賞児童書部門 ファイナリスト発表」
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2016/10.htm#sokuho

▽全米図書賞(児童書部門)受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/nba/index.htm

                                (蒲池由佳)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2017年度アストリッド・リンドグレーン記念文学賞候補発表
                   (受賞者の発表は2017年4月4日の予定)
★2017年ケイト・グリーナウェイ賞ノミネート作品発表
★2017年カーネギー賞ノミネート作品発表
(カーネギー賞および、ケイト・グリーナウェイ賞ロングリストの発表は2017年2月
16日、ショートリストの発表は3月14日、受賞作品の発表は6月19日の予定)
★2016年ドイツ児童文学賞発表
★2016年オランダ金の石筆賞発表
★2016年ニルス・ホルゲション賞発表
★2016年エルサ・ベスコフ賞発表
★2016年度ニューヨークタイムズ・ベストイラスト賞発表
★2016年ガーディアン賞発表
★2016年カナダ総督文学賞児童書部門発表
★2016年コスタ賞児童書部門ショートリスト発表
     (受賞作品の発表は2017年1月3日、最優秀賞の発表は1月31日の予定)

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 軽井沢絵本の森美術館「アメリカ絵本のあゆみ展」
 長島美術館「2016 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」 など

★講演会情報
 クレヨンハウス「とよたかずひこさん講演会」
 京都・旭川・東京「絵本『ARE YOU AN ECHO?』出版記念トークイベントツアー2017」
                                    など

★イベント情報
 イイノホール&カンファレンスセンター
 「言語活動推進フォーラム『ことばと体験のキッズフェスタ』in東京」
 コカ・コーラウエストスポーツパーク県民体育館「絵本ワールドinとっとり2016」
                                    など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

                          (冬木恵子/山本真奈美)

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●お菓子の旅●第66回 熱い紅茶と一緒にどうぞ 〜プリャーニク〜
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ねこが こねこに、ビスケットを やいてやろうと、おもいました。
こなに はちみつを いれて、こねました。
ぷうんと はなの においのする おおきな なまぱんが できました。
     『おかしのくに』
     タチアーナ・アレクセーブナ・マブリナ(※)文・絵/みやかわやすえ訳
                             福音館書店/1971年

※ほかにタチヤーナ・アレクセーエヴナ・マーヴリナなどの表記がある
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

 このあと、ねこはビスケット生地を伸ばし、押し型で人や動物の形をつけて焼くの
ですが、焼き上がったビスケットは次から次へと逃げていきます。シュールな話が躍
動感あふれる色あざやかな絵で描かれ、結末はさらにシュール。
 ここに出てくる「ビスケット」とは、ロシアで古くから食べられているプリャーニ
クという焼き菓子のこと。名前は香辛料を意味する「プリャーノスチ」に由来します。
プリャーニクの元祖といえる、はちみつとライ麦粉を使った焼き菓子は、9世紀には
すでにロシア人の生活に登場していましたが、スパイスが入るようになったのはロシ
アに香辛料がもたらされた12世紀以降です。
 特に有名なのは、紅茶をいれる湯沸かし器サモワール発祥の地、トゥーラで作られ
るプリャーニクで、シラカバの木などで作られた押し型を使って、模様やメッセージ
などを浮き彫りにして焼きます。もともと儀礼的な意味をもつお菓子だったので、刻
まれる言葉は祝祭日に関係するものが多いようです。
『おかしのくに』は、作者マブリナが博物館に保存してある古い押し型に興味を持っ
たことから生まれました。プリャーニクの形や大きさはさまざまで、果物の砂糖漬け
やドライフルーツが中に入ったものもありますが、今回はシンプルなものをご紹介し
ます。日本では押し型が手に入りにくいため、クッキーの抜型で模様をつけました。

*-* プリャーニクの作り方 *-*
                    画像はこちら(やまねこ翻訳クラブ喫茶室)

材料(12個分)
 はちみつ    150g     〈アイシング〉
 グラニュー糖  60g      卵白     1/2個
 水       25cc     粉砂糖    70g
 ライ麦粉    225g     レモン汁   大さじ1/2
 バター     45g
 卵黄      1個
 重曹      小さじ1/2
 スパイス(シナモン、クローブ、ナツメグ、スターアニス、ブラックペッパー、
 カルダモンなど好みで)
         合わせて大さじ1/2

1.ライ麦粉はふるっておく。バターは冷蔵庫から出し、小さく切っておく。スパイ
  スは混ぜておく。
2.はちみつを鍋に入れて中火にかける。沸騰する前に火を止め、スパイスを加える。
3.フライパンにグラニュー糖を入れて中火で炒める。茶色くなってきたら、水を少
  しずつ注いで固まった部分を溶かし、シロップ状にする。
4.3を2に加える。ライ麦粉の半量を入れて、よく混ぜる。バターを加え、溶けた
  ら、卵黄を加えてさらによく混ぜる。重曹を少量の水(分量外)でよく溶かして
  から、加える。残りのライ麦粉を足してさらによく混ぜる。丸めてラップで包み、
  冷蔵庫で15〜30分寝かせる。
5.台と生地に打ち粉(分量外)をして、めん棒で7mm程度の厚さに伸ばし、12個の
  四角形に切る。表面にクッキー型などで模様をつける。
6.180度に予熱したオーブンで15分焼く。
7.卵白と粉砂糖とレモン汁をスプーンで混ぜてアイシングを作る。
8.粗熱がとれたら、はけでアイシングをぬる。1日おくと、さらにおいしくなる。

★参考図書・ウェブサイト
『ロシア文学の食卓』(沼野恭子著/日本放送出版協会)
『ロシアのパンとお菓子』(荻野恭子著/WAVE出版)
『おいしいロシア』(シベリカ子著/イースト・プレス)
ロシア料理研究家 Maxim Syrnikov 氏による作り方紹介(ロシア語)
http://www.the-village.ru/village/food/chief-at-home/
120527-maksim-syrnikov-pryaniki-i-sbiten

お菓子の話題は喫茶室掲示板へどうぞ。
★「やまねこ翻訳クラブ喫茶室掲示板」
        http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=kissa

                 (赤塚きょう子/加賀田睦美/かまだゆうこ)

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●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
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※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
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※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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 ご愛読いただきまして、ありがとうございます。当メールマガジンは、来年も発行
月を3月、4月、6月、7月、9月、10月、12月の年7回とさせていただきます。ま
た、1月には号外を発行する予定です。毎月の発行とはなりませんが、毎号、充実し
た内容でお届けできるよう、編集部一同、努力してまいります。今後ともご愛読のほ
ど、よろしくお願い申し上げます。

                         「月刊児童文学翻訳」編集部

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 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 ニューベリー賞・コールデコット賞・プリンツ賞の発表にともなう号外を1月下旬
に発行する予定です。どうぞお楽しみに!

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  やまねこ翻訳クラブ(yagisan@yamaneko.org)までお気軽にご相談ください。

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                  http://litrans.g.hatena.ne.jp/yamaneko1/
 ※各掲示板の話題やクラブの動きなど、HOTな情報をご紹介しています。

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●編集後記●今月号でご紹介した19回やまねこ賞。今年もたくさん投票され、邦訳作
品から原書作品まで幅広いジャンルの作品が並び、編集作業はとてもにぎやかでした。
これからも、読者のみなさまに魅力的な作品をお届けできるように編集部一同、努力
して参ります。2017年も「月刊児童文学翻訳」をよろしくお願いいたします。次号は
1月号外になります。こちらもお楽しみに。(み)
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発 行 やまねこ翻訳クラブ
編集人 三好美香/蒲池由佳(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 赤塚きょう子 牛原眞弓 尾被ほっぽ 加賀田睦美 かまだゆうこ
    小島明子 相良倫子 武富博子 手嶋由美子 平野麻紗 冬木恵子
    増山麻美 森井理沙 山本真奈美
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    ながさわくにお みちこ
    html版担当 ぐりぐら
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