フランスの賞レビュー集一覧 クロノス文学賞 アンコリュプティブル賞 ソルシエール賞 |
このレビュー集について 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メルマガ「月刊児童文学翻訳」や「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていな作品については原作を参照して書かれています。
やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集
クロノス文学賞(フランス) レビュー集 |
★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★
最終更新日 2009/10/03 レビューを1点追加
★クロノス文学賞の概要 |
"Lettres d'Amour de 0 a 10 〔Lettres d'Amour de 0
à
10〕"『秘密の手紙0から10』 * "Mercredi mensonge"『水曜日のうそ』 * "Loulette"『ルウとおじいちゃん』
"La Greve De La Vie 〔 La Grève
De La Vie 〕"『あたしが部屋から出ないわけ』 * "Le lievre qui avait de tres grands pieds 〔Le lièvre
qui avait de très grands
pieds〕" *
"Joker"『ノエル先生としあわせのクーポン』 追加
1997年(第2回)クロノス文学賞(中学生の部※)受賞作 ※第2回当時、セクションは 3つのみ(幼稚園児・小学1年生の部、小学校4、5年生の部、中学生の部)
"Lettres d'Amour de 0 a 10 〔Lettres d'Amour de 0
à 10〕" (1996) by
Susie Morgenstern シュジー・モルゲンステルン 『秘密の手紙0から10』 河野万里子訳 白水社 2002 (邦訳読み物) |
その他の受賞歴 |
10歳のエルネストは、生まれてからずっと祖母と暮らしている。母がエルネストの出産で亡くなり、絶望した父が家を出ていってしまったからだ。祖母との生活は単調で、毎日毎日がまったく同じように過ぎていく。息子が出ていってしまってからというもの、祖母は家に引きこもり、ほとんど話をしないし、笑わない。家にはテレビも電話もない。あるのは、第一次世界大戦で戦死した祖父の遺した、判読できない手紙だけ。自分はずっとこうして暮らしていくのだと、エルネストは思っていた。だが、そんなある日、クラスに転校生のヴィクトワールがやってきて、すべてが変わりはじめる。
生まれてから10年間というもの、エルネストは、他人やまわりの世界と、ほとんど関わることなく生きてきた。かたや、転校生のヴィクトワールは、14人きょうだいの13番目(自分以外は全員男の子)で、生存競争の中で育った、まるでコミュニケーション魂のかたまりのような、元気いっぱいの女の子だ。となりの席に突然やってきた、このヴィクトワールのおかげで、エルネストははじめて、他人と言葉を交わし、コミュニケーションすることの喜びを知る。こうして開かれた扉は、いつのまにか、かたくなな祖母の心までも解きほぐしていき、エルネストを全く新しい、思いもかけなかった世界へと導いていく。その過程がとても楽しい。はじまるときはモノクロの寂しい画面だったのに、だんだんと色彩を帯び、にぎやかになって、最後はフルカラーになって終わる、そんな映画を観ているようだ。 (山田智子) 2008年10月公開 |
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★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★ このレビュー集について
"Mercredi mensonge"(2004) by Christian Grenier クリスチャン・グルニエ 『水曜日のうそ』 河野万里子訳 講談社 2006 (邦訳読み物) |
やまねこ公式レビュー その他の受賞歴 |
パリ郊外のマンションで暮らすイザベラ15歳。近所には、おじいちゃんがひとりで住んでいる。毎週水曜日12時きっかりにイザベラのマンションに来て30分だけおしゃべりをしていくのが、こ
こ何年かのおじいちゃんの習慣だ。イザベラは82歳になるおじいちゃんのことが大好きだけれど、忙しいパパは、実の父親を邪険に扱う。体が痛いという愚痴や、毎度おなじみの昔話を嫌がり、それが顔や行動に出てしまうのだ。
「今が幸せだということは、過ぎ去ってからでないとわからない」大人になるとよく理解できることだけれど、それでも普段は忘れてしまいがちだ。この本を読むと、そのことを再度かみしめることができる。自分の年齢のせいか、私はイザベラのパパのことが気になって仕方がなかった。父親のことを大事に思ってはいる
ものの、忙しさにかまけて、また、自分の父親のことなんて何でもわかっているつもりで、きちんと向き合わなかったパパ。実の親子は、なかなか難しいよね、これまでに培われたわだかまりのようなものもあるかもしれないし、老いていく親への寂しさもあるかもしれないし、と自分と重ねて考えてしまう。血のつながらない他人のほうが、父親
をよく理解してくれていた、父親が行きたがっていた生まれ故郷に連れていってくれていた、そんなエピソードにも涙が浮かんできた。 (植村わらび) 2008年10月公開 |
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★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★ このレビュー集について
"Loulette"(2006) by Claire Clement クレール・クレマン 『ルウとおじいちゃん』 藤本優子訳 講談社 2008.08 (邦訳読み物) |
その他の受賞歴 |
おじいちゃんは詩人だ。いつもすてきな詩を頭のなかの安全な場所にしまいこみ、わたしたちに分けてくれる。わたしはおじいちゃんの「幸運の女神」。だってわたしがいれば、おじいちゃんはいつだってカードに勝つのだ。
ルウの考えた計画はとても危なっかしくて、信じられないものなのだが、ルウのおじいちゃんを思う気持ちが痛いほど伝わってきて、はらはらしながら応援する。施設にいれることが、最もよい解決方法だと信じる母親に対して、登場人物の一人ルウたちの世話にくる近所の大学生ヤスミナは、どうやら異国の人で彼女の国では年寄りが一人っきりになることはないと批判的だ。だから、たとえ一言も発しない年寄りでさえ、敬意をもって世話をする。ヤスミナの存在と、彼女がルウに言う言葉が、老人問題の奥深さを垣間見せる。 (尾被ほっぽ) 2008年12月公開 |
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"La Greve De La Vie 〔 La Grève
De La Vie 〕"(2002) by Amelie
Couture 〔 Amélie
Couture 〕
アメリー・クーテュール 『あたしが部屋から出ないわけ』 末松氷海子訳 (小泉るみ子絵) 文研出版 2008.08 (邦訳読み物) |
その他の受賞歴 |
夏休みの最初の日、9歳のリシューはストライキをはじめた。サマー・スクールなんか行きたくない! お父さんと義理の母のイザベルとお母さんのちがう、半分だけの弟と暮らすのはいやだ。都会に暮らすのもいや。そして何よりも、去年の12月に、おばあちゃんが死んじゃったのがいやだ。おばあちゃんと一緒に暮らした農家にもどりたい。でもそれはもう、できない……。何もかも面白くなくリシューには全部のことに怒って、部屋に閉じこもってしまった。 (吉崎泰世) 2009年3月公開 |
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★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★ このレビュー集について
2009年クロノス文学賞(幼稚園児・小学校1年生の部)最終候補作
フランス語タイトル:"Le lievre qui avait de tres grands pieds 〔Le lièvre
qui avait de très grands
pieds〕" 追加 by Catherine Rayner キャサリン・レイナー 英語:"Harris Finds his Feet" (2008) からの翻訳 by Tania Capron |
その他の受賞歴 |
ケイト・グリーナウェイ賞のレビュー集を参照のこと |
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★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★ このレビュー集について
"Joker"(1999) (未訳絵本) by Susie Morgenstern
シュジー・モルゲンステルン 『ノエル先生としあわせのクーポン』 宮坂宏美、佐藤美奈子訳 西村敏雄(絵) 講談社 2009年 |
その他の受賞歴 |
バチェルダー賞のレビュー集を参照のこと |
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やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集 アンコリュプティブル賞(フランス) レビュー集 |
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最終更新日 2008/10/01 新規公開
アンコリュプティブル賞の公式サイト → 受賞作一覧はこちらから
★アンコリュプティブル賞の概要 |
2003年(第15回)アンコリュプティブル賞(中学2・3年生の部)受賞作
"35 kilos d'espoir"(2002) by Anna Gavalda アンナ・ガヴァルダ 『トトの勇気』" 藤本泉訳 鈴木出版 2006 (邦訳読み物) |
その他の受賞歴 |
3歳までは、ぼくは幸せだった。でも、幼稚園と学校に行くようになってから、ぼくの人生は変わってしまった。ぼくは自分の手で、なにかを作り出すのがとても好きだけど、勉強は大嫌いだ。学校も嫌いだ。ぼくの学校のことになると、パパもママもどなったり泣いたりするばかり。ぼくのことをわかってくれるのは、たったひとり、おじいちゃんだけ。おじいちゃんがいなければ、ぼくはきっと、やってこれなかった。
グレゴワール(トト)は13歳で、中学一年生(日本でいうと小学六年生)だ。フランスは小学校が五年間、中学校が四年間。学校制度は日本よりも厳しく、小学校から落第や退学があり、グレゴワールもそれで2度退学させられている。勉強が苦手な子にとっては辛すぎる環境だ。そんな彼の一人称で語られている物語は正直で、切なくて、すぐに引き込まれてしまう。多くの子どもたちの共感を得たことも充分うなずける。 (山田智子) 2008年10月公開 |
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