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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2022年7月号 =====☆ ☆===== =====★ 月 刊 児 童 文 学 翻 訳 ★===== =====☆  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ☆===== No.214 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌 http://www.yamaneko.org 編集部:mgzn@yamaneko.org 2022年7月15日発行 配信数 2500 無料 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●2022年7月号もくじ● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎賞情報:2022年カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞、 各シャドワーズ・チョイス賞発表! ◎特集:2022年カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞、 各シャドワーズ・チョイス賞受賞作品レビュー 【カーネギー賞、カーネギー賞シャドワーズ・チョイス賞】 "October, October" カーチャ・ベイレン作 【ケイト・グリーナウェイ賞】 "Long Way Down" ジェイソン・レナルズ作/ダニカ・ノヴゴロドフ絵 【ケイト・グリーナウェイ賞シャドワーズ・チョイス賞】 "The Midnight Fair" ギデオン・ステラ作/ マリアキアラ・ディ・ジョルジョ絵 ◎賞情報:2022年国際アンデルセン賞発表! ◎mikiron の親ばか絵本日誌:第9回 『プールのひは、おなかいたいひ』 ◎賞速報 ◎イベント速報:★やまねこ翻訳クラブ協力企画のお知らせあり★ |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●賞情報●2022年カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞、 各シャドワーズ・チョイス賞発表! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 英国図書館・情報専門家協会(CILIP: The Chartered Institute of Library and Information Professionals)が主催する、イギリスで最も権威ある児童文学賞、カ ーネギー賞およびケイト・グリーナウェイ賞が6月16日に発表された。また、各候補 作品を読んだ子どもたちが図書館や学校などの読書グループを通じて投票するシャド ワーズ・チョイス賞も同時に発表された。 本号では各賞の受賞作品をご紹介する。 ▼カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞公式ウェブサイト http://www.carnegiegreenaway.org.uk/ ▼同ウェブサイト内、2022年受賞作品発表ページ https://carnegiegreenaway.org.uk/2022-yoto-carnegie-greenaway-winners- announced/ ▼同ウェブサイト内、 「Stream the 2022 Yoto Carnegie Greenaway Awards Ceremony」(動画) (発表の様子がオンタイムで流された。2022年7月15日現在も視聴できる) https://carnegiegreenaway.org.uk/take-part/stream/ 【カーネギー賞】(作家対象) ★2022 Yoto Carnegie Medal Winner "October, October" by Katya Balen (Bloomsbury Publishing Plc) ☆2022 Shadowers' Choice Award Winner "October, October" by Katya Balen (Bloomsbury Publishing Plc) 今年、カーネギー賞とそのシャドワーズ・チョイス賞をダブル受賞する快挙を達成 したのは、英国の作家 Katya Balen による "October, October"。現代の英国を舞台 に詩的な美しい言葉でつづられる物語だ。主人公の少女 October は森の中で生まれ 育ったが、ある日突然、灰色の大都会ロンドンでの生活を強いられる。慣れない環境 に戸惑う主人公の不安や葛藤を通して、自由とは何か、生きづらさとどう向き合うべ きかを問いかける作品だ。自然への憧憬をかき立てる秋の森の描写や、主人公の内面 をみごとに捉えた一人称の語りが高い評価を受けた。October が読書家で、森で見つ けた宝物をヒントに物語を作っているという設定も、本好きのシャドワー(子ども審 査員)たちの心をつかんだようだ。2019年に作家デビューし、本作が2作目となる Balen は授賞式で、物語は子どもたちが自由に生きられる大切な場所であり、「物語 の力を最もよく知る図書館員が選ぶ賞を受賞できて光栄だ」と語った。 作品の詳しい内容は、本誌今月号のレビューをご覧いただきたい。 【ケイト・グリーナウェイ賞】(画家対象) ★2022 Yoto Kate Greenaway Medal Winner "Long Way Down" by Danica Novgorodoff, written by Jason Reynolds (Faber) ☆2022 Shadowers' Choice Award Winner "The Midnight Fair" by Mariachiara Di Giorgio, written by Gideon Sterer (Walker Books) 今年のケイト・グリーナウェイ賞は、米国のアーティスト Danica Novgorodoff に よるグラフィック・ノベル "Long Way Down" に贈られた。原作は Jason Reynolds (ジェイソン・レナルズ)の同名作品(『エレベーター』青木千鶴訳/早川書房)。 グラフィック・ノベルの受賞は1973年の "Father Christmas"(『さむがりやのサン タ』レイモンド・ブリッグズ文・絵/すがはらひろくに訳/福音館書店)以来、ほぼ 50年ぶりとなる。Novgorodoff は受賞に際し、「原作の美しい文章を絵で表現できた こと自体が大変名誉なことだったが、それが読者の共感を呼んだことを知って嬉しく 思う」と述べている。作品の詳しい内容は、本誌今月号のレビューをご覧いただきた い。 シャドワーズ・チョイス賞に選ばれたのは、イタリアのローマ出身のアーティスト Mariachiara Di Giorgio(マリアキアラ・ディ・ジョルジョ)が手掛けた "The Midnight Fair"。夜になって人がいなくなった遊園地に野生の動物たちが集まり、楽 しそうに遊ぶ姿をイラストのみで美しく表現した文字なし絵本だ。原案は米国の作家 Gideon Sterer。作品の詳しい内容は、本誌今月号のレビューをご覧いただきたい。 ※邦訳がある作家、画家については初出の際に片仮名表記を併記しています。 【参考】 ▼Katya Balen 公式ツイッター https://twitter.com/katyabalen/ ▼Katya Balen 紹介ページ(Bloomsbury ウェブサイト内) https://www.bloomsbury.com/uk/author/katya-balen/ ▼Danica Novgorodoff 公式ウェブサイト https://www.danicanovgorodoff.com/ ▼Mariachiara Di Giorgio 公式ウェブサイト https://cargocollective.com/mariachiaradigiorgio ▽カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品リスト (やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/carnegie/ http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/greenawy/ ▽ショートリスト(最終候補作品)紹介記事(本誌2022年4月号「賞情報」) http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2022/04.htm#sokuho (綿谷志穂/平尾陽子) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●特集●2022年カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞、 各シャドワーズ・チョイス賞受賞作品レビュー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ "October, October" 『オクトーバー、オクトーバー』(仮題) by Katya Balen カーチャ・ベイレン作 Bloomsbury Publishing Plc, 2021, 290pp. ISBN 978-1526601933 (PB) ★2022年カーネギー賞受賞作品 ★2022年カーネギー賞シャドワーズ・チョイス賞受賞作品 Amazonで検索する:ISBN Amazonで検索する:書名と作者名 森の木々が色づきはじめるとわたしの誕生日がやってくる。10月に生まれたからわ たしの名前はオクトーバー。いつもパパはその名前を2回呼ぶ──オクトーバー、オ クトーバー。わたしはパパとふたりで森の中の家に住んでいる。わたしを産んだ女の 人は何年も前に森を捨てて出て行った。だからわたしはその人をこう呼ぶ──「母親 ってことになってる人」。 もうすぐ11歳になるというころ森で迷子のフクロウのひなを見つけた。うちで育て ることになり家族が増えて誕生日がますます楽しみになる。なのに当日パパが大けが で入院してしまい、わたしは「母親ってことになってる人」とロンドンで暮らすこと になった。ひなは手放さなきゃいけないし学校にも通わなきゃならない。こんなに狭 くてうるさい街で、大好きな家族と離れて、どうやって生きていけばいいんだろう。 本作の主人公オクトーバーは、自分を「野生(wild)」と形容し、森でのびのびと 暮らしている。現代の英国に生まれながら集団生活を知らず、学校に行くかわりに家 にある大量の本を繰り返し読んでいる。秋の冷たい池で泳ぎ、夜空に向かって遠吠え をする。森で石やがらくたを拾い、その「宝物」にまつわる物語を作っている。 そんな生活がうらやましいほど魅力的に感じられるのは、語り手であるオクトーバ ーが森を心から愛しているからだろう。カンマや引用符をほとんど使わない滑らかな 一人称の語りは、主人公の心を直接のぞきこんでいるようで、どんなとっぴな行動も 当然のことに思えてくる。字下げや改行を多用した空白の多い紙面は、彼女の自由さ や森の解放感を表しているようだ。しかし都会に行ったとたん、自由な生き方を否定 され、空白は孤独や喪失感の表現に変わる。読者は彼女の喜びや悲しみを追体験する ことで、自分に合わない場所で生きることがどんなに難しいかを実感する。 森はいつも、帰るべき場所、心のよりどころとしてオクトーバーを支えている。誰 もが彼女のように、本物の森を持てるわけではない。けれどオクトーバーは、「自由 と野生の意味はひとりひとり違う」と語る。わたしたちもそれぞれ、自分の森を見つ けなくてはならないのかもしれない。たとえばそう、物語の中に。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【作】Katya Balen(カーチャ・ベイレン):1989年、英国に生まれる。大学では英 文学を専攻し、文学が自閉症の子どもに与える影響を研究。特別支援学校に勤めた後、 2019年に "The Space We're in" で作家デビューを果たした。NPOの共同代表とし て自閉症やADHDの人々の主体的な芸術活動を支援する傍ら、毎年のように新作を 発表し、精力的に執筆活動を続けている。邦訳はまだない。 【参考】 ▼カーチャ・ベイレン公式ツイッター https://twitter.com/katyabalen/ ▼カーチャ・ベイレン紹介ページ(Bloomsbury ウェブサイト内) https://www.bloomsbury.com/uk/author/katya-balen/ (綿谷志穂) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ "Long Way Down" 『エレベーター』(仮題) text by Jason Reynolds, illustrations by Danica Novgorodoff ジェイソン・レナルズ作/ダニカ・ノヴゴロドフ絵 Atheneum/Caitlyn Dlouhy Books, 2020, 208pp. ISBN 978-1534444973 (eBook) Faber, 2020, 208pp. ISBN 978-0571366019 (PB) ★2022年ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品 (このレビューは電子書籍版を参照して書かれています) Amazonで検索する:ISBN Amazonで検索する:書名と作者名 主人公のウィルは都市部の貧しい地区に住む15歳の少年。あるとき、兄が射殺され た。ウィルのいる世界には掟があった。絶対に泣かないこと。そしてやられたら必ず 復讐をすること。掟には絶対に従わねばならない。兄のかたきを討つと決めたウィル は銃を手に自宅のあるアパートメントの8階から階下へ向かうエレベーターに乗る。 しかし、エレベーターが止まるたびに、会えるはずのない人が次々と乗り込んできた。 彼らにさまざまな問いを投げかけられるうちに、ウィルは自分の行動に自信がなくな ってくる。混乱するウィルの前に、最後に現れたのは──。 ウィルたちの縛られている「掟」とはいったいなんだろう。誰が作ったのかもわか らないのに、誰もが絶対だと思い込み、まるで人を支配する鎖のようだ。人の集まる ところには多かれ少なかれルールが生まれ、従わせようとする圧力ができるのは自然 なことだが、もしそれが人を不幸にするものだとしたら? この物語は、固定観念に とらわれる若者に対し、負の連鎖を自ら断ち切れと背中を押す。 ジェイソン・レナルズによる自由詩形式の原作をダニカ・ノヴゴロドフが美しい水 彩画で表現したこのグラフィック・ノベルは、原作の世界観はそのままに、視覚を通 して登場人物の焼け付くような心情をより直感的に読者に訴える。冒頭の曇った夕暮 れ時を描いた空の絵は印象的で、そこに使われている仄暗いブルー、グレー、紫とい った色合いが作品全体の基調となっている。その中で、銃声や心の叫びを表す文字な どは、血と同じ赤で描かれ目を奪う。暗い背景に白抜きで描かれた人物、弾痕で装飾 されたシーンといった、人々の苦悩を表現した絵には迫力があり、こちらまでヒリヒ リした気持ちにさせられる。 原作者のレナルズは、少年院にいる少年少女にこの物語を捧げている。グラフィッ ク・ノベル版が加わったことにより、この作品が子どもたちに届く機会がさらに増え たのはすばらしいことだ。グラフィック・ノベルは近年評価が高まっているが、今回 の受賞はその地位を確かなものにし、可能性をさらに広げてくれた。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【作】Jason Reynolds(ジェイソン・レナルズ(レノルズ)):1983年米国ワシント ンD.C.生まれの作家、詩人。主にヤングアダルトおよび児童書を手掛け、本作の 原作 "Long Way Down"(『エレベーター』青木千鶴訳/早川書房)で2018年MWA賞 YA小説部門賞などを受賞。2021年には "Look Both Ways"(未訳)でカーネギー賞 に輝く。ほかの邦訳作品に『ゴースト』(ないとうふみこ訳/小峰書店)などがある。 【絵】Danica Novgorodoff(ダニカ・ノヴゴロドフ):ニューヨークとケンタッキー 州を拠点とするアーティスト、作家、グラフィック・ノベル作家。グラフィック・ノ ベルには本作のほか "The Undertaking of Lily Chen"、"Slow Storm" など、絵本に は "Alexander von Humboldt: Explorer, Naturalist & Environmental Pioneer" (いずれも未訳)などがある。 【参考】 ▼ジェイソン・レナルズ公式ウェブサイト https://www.jasonwritesbooks.com/ ▼ダニカ・ノヴゴロドフ公式ウェブサイト https://www.danicanovgorodoff.com/ (平尾陽子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ "The Midnight Fair" 『まよなかのゆうえんち』(仮題) written by Gideon Sterer, illustrated by Mariachiara Di Giorgio ギデオン・ステラ作/マリアキアラ・ディ・ジョルジョ絵 Walker Books Ltd, 2022, 48pp. ISBN 978-1406394658 (PB) ★2022年ケイト・グリーナウェイ賞シャドワーズ・チョイス賞受賞作品 Amazonで検索する:ISBN Amazonで検索する:書名と作者名 野原に移動遊園地がやってきた。たくさんの人があそぶ様子を、そばにある暗い森 の中から見つめるいくつもの目。森に住む動物たちだ。真夜中になって、人がだれも いなくなると、動物たちはみんなでこっそり遊園地にしのびこんだ。あるものは店員 やスタッフとして、あるものは客として、遊園地を楽しみはじめる。乗り物に乗った り、屋台のグルメを味わったり、ゲームで景品をもらったり……。うれしそうな動物 たちの背後で、月に照らされながらフクロウやミミズクが飛んでいく。空が白みはじ めるころ、もどってきたフクロウたちが、この楽しい時間が終わりに近づいているこ とを知らせた……。 ギデオン・ステラによるプロットを、絵のみで表現した本作は、遊園地へのあこが れを美しくえがいている。明るく光り輝く遊園地と、暗い森や夜の闇という光と影の コントラストが効果的に用いられ、動物たちのひとときの夢を幻想的に見せる。登場 する動物たちはとてもユーモラスだ。顔出しパネルから顔をのぞかせるオオカミ。体 じゅうの針にお菓子を刺して歩くハリネズミ。メリーゴーラウンドに乗る我が子を見 つめる親クマ。そんな動物たちの幸せな一瞬を、マンガのようなコマ割りでとらえて いるページもあれば、見開きで大きく、アトラクションの動きを大胆にえがいている ページもある。前後の見返しページにまで、あそび心がふんだんに盛りこまれており、 見ているだけで自然と笑顔になってしまう。 特に見事だと感じるのは、夜明けの描写だ。楽しい時間には必ず終わりがやってく る。そのさびしさと、興奮の余韻。心地よい疲れの中で、動物たちは眠りにつき、森 に静寂がおとずれる。その森にさす朝日のようにさわやかな読後感だ。 くりかえしになるが、本作は絵のみで文章のない作品だ。一読すればこの物語に言 葉は不要だということが伝わってくる。ページをめくるたびに、新たな面白さが発見 できる1冊だ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【作】Gideon Sterer(ギデオン・ステラ):米国在住の作家。主に絵本のストーリ ーを担当。両親は野生動物保護センターの運営をしており、幼いころから自然の中で 多くの動物に囲まれて育った。邦訳作品はまだない。 【絵】Mariachiara Di Giorgio(マリアキアラ・ディ・ジョルジョ):1983年、ロー マ生まれ。大学在学中からアニメ映画制作や広告代理店でイラストレーターとして活 動。イタリア・ボローニャ国際絵本原画展で2度入選。邦訳作品には、『どれもみー んなアントニオ!』(スザンナ・マッティアンジェリ文/ふくやまよしこ訳/山烋、 春陽堂書店)がある。 【参考】 ▼ギデオン・ステラ公式ウェブサイト https://www.gideonsterer.com/ ▼マリアキアラ・ディ・ジョルジョ公式ウェブサイト https://cargocollective.com/mariachiaradigiorgio (池田幸子) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●賞情報●2022年国際アンデルセン賞発表! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 3月21日、2022年国際アンデルセン賞の受賞者が発表された。この賞は、児童文学 に貢献してきた作家/画家の全業績を称え、国際児童図書評議会(IBBY)が2年 に1度、西暦偶数年に発表するものである。今年度のショートリストには、各国から 推薦された候補者の中から作家賞6名、画家賞6名が選ばれ、2月21日に発表されて いた。授賞式は、9月5日から8日にかけてマレーシアのプトラジャヤで開催予定の、 IBBY世界大会にてとりおこなわれる。 本号では、作家賞と画家賞の受賞者を紹介する。 ※受賞者の日本語読みは、日本国際児童図書評議会(JBBY)の発表に準ずる。 ▼国際児童図書評議会(IBBY)公式ウェブサイト http://www.ibby.org/ ▼上記ウェブサイト内、2022年国際アンデルセン賞のページ https://www.ibby.org/awards-activities/awards/ hans-christian-andersen-award/hans-christian-andersen-awards-2022 ▼記者会見のライブストリーム(BolognaFiere の YouTube チャンネル) (発表の様子がオンタイムで流された。2022年7月15日現在も視聴できる) https://www.youtube.com/watch?v=N992RTqvTsE&list=PLDFFCB44487E15805&index=8 ▽国際アンデルセン賞受賞者リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/andersen/index.htm ▽ショートリスト一覧(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/andersen/nomin_au2.htm#au_2022 http://www.yamaneko.org/bookdb/award/andersen/nomin_il2.htm#il_2022 ■作家賞■ 〜 The Hans Christian Andersen Author Award 2022 〜 ★Winner Marie-Aude Murail マリー=オード・ミュライユ (フランス) 2022年の作家賞には、フランスが誇る児童文学作家、マリー=オード・ミュライユ が輝いた。フランス内外で高く評価され、その作品は27を超える言語に翻訳されてい る。1954年、詩人の父とジャーナリストの母のあいだに生まれた彼女は、ソルボンヌ 大学で文学を学んだのち、女性向け雑誌に小説を書きはじめた。1987年、初めての児 童書 "Mystere"(『青い髪のミステール』セルジュ・ブロッシュ絵/末松氷海子訳/ 偕成社)が出版されてからは、子ども向けの作品の執筆に専念している。その作品は 読者をひきつける魅力的な登場人物と、ユーモアにみちた心あたたまる物語が特徴だ。 100冊にのぼる作品は政治や歴史、愛をテーマとするものから、冒険物語やファンタ ジーに至るまで幅広く、映画化や舞台化もされている。文学と教育における功績が認 められ、2004年にはレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ(5等)、2017年にはオフ ィシエ(4等)が授与された。執筆のかたわら、子どもたちの読書推進のための活動、 難民や移民の子どもたちの権利拡大に向けた活動なども精力的に行っている。同じく 児童書作家の兄と妹がおり、妹エルヴィールとの共作には『サンタの最後のおくりも の』(クェンティン・ブレイク絵/横山和江訳/徳間書店 ※本誌2006年11月号「特 集」のレビュー参照)がある。 ※「Mystere」:最初の「e」の上に(`)がつく 【参考】 ▼マリー=オード・ミュライユ紹介ページ (L'ecole des loisirs ウェブサイト内、フランス語) https://www.ecoledesloisirs.fr/auteur/marie-aude-murail ※「L'ecole」:最初の「e」の上に(´)がつく ▽『サンタの最後のおくりもの』レビュー(本誌2006年11月号「特集」) http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2006/11.htm#hyomi + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + ■画家賞■ 〜 The Hans Christian Andersen Illustrator Award 2022 〜 ★Winner Suzy Lee スージー・リー (韓国) 2022年画家賞は、2016年の同賞ショートリストにも選ばれた、韓国のスージー・リ ーに贈られた。1974年に韓国のソウルに生まれ、本とアートに囲まれて育った彼女は、 ソウル大学で絵画を学んだのち、児童書の挿絵を描きはじめた。ロンドン芸術大学キ ャンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツで修士号を取得した際の作品が "Alice in Wonderland"(未訳)として刊行されてからは、絵本の制作に精力的に取り組む。力 強さと繊細さを兼ね備えた、シンプルな線による絵が持ち味だ。中でも文字なし絵本 の三部作 "Mirror"(未訳)、"Wave"(『なみ』講談社)、"Shadow"(『かげ』講談 社 ※本誌2010年12月号「注目の本」のレビュー参照)は、見開きページの境目を現 実と空想の世界の境に見立て、双方を行き来する少女の姿を見事に表現し評価が高い。 本誌2016年3月号「2016年国際アンデルセン賞の候補者たち その2」もご参照いた だきたい。 【参考】 ▼スージー・リー公式ウェブサイト http://www.suzyleebooks.com/ ▽スージー・リー作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/l/suzylee.htm ▽『かげ』レビュー(本誌2010年12月号「注目の本(邦訳絵本)」) http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2010/12.htm#hehon ▽スージー・リー紹介記事(本誌2016年3月号 「特別企画:2016年国際アンデルセン賞の候補者たち その2」) http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2016/03.htm#suzylee (山本みき) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●賞速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★2022年KPMGアイルランド児童図書賞発表 ★2022年ボストングローブ・ホーンブック賞発表 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を ご覧ください。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●イベント速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★展示会情報 萬鉄五郎記念美術館「五味太郎作品展 絵本の時間3」 かごしまメルヘン館「わくわく!どきどき!絵本のふくぶくろ展」 など ★講座・講演会情報 山梨県立美術館「宮城県美術館所蔵 絵本原画の世界2022&記念講演会」 オンライン対談「絵本で平和を考える」 など ★イベント情報 国立オリンピック記念青少年総合センター 「第54回 日本子どもの本研究会全国大会 未来をひらく子どもと本─たしかな つながりを はぐくむ─」 など 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、イベントは中止や延期になる場合がありま す。最新の開催情報は「児童書関連イベント情報掲示板」掲載の各参考ウェブサイト でご確認ください。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event ツイッターアカウントでも最新情報を提供していますので、どうぞご注目ください。 ▽やまねこ翻訳クラブ*イベント情報 Twitter https://twitter.com/YamanekoEvent ★★やまねこ翻訳クラブ協力企画のお知らせ★★ 「読書探偵作文コンクール2022」 主催 読書探偵作文コンクール事務局 協力 翻訳ミステリー大賞シンジケート、やまねこ翻訳クラブ いつも「読書探偵作文コンクール」にご協力いただき、ありがとうございます。 小学生部門、中高生部門ともに、今年も募集を開始いたしました。 応募締切は★9月30日★です。詳細は各部門の公式ウェブサイトをご覧ください。 公式ツイッター、フェイスブックページ、note では随時最新情報をお伝えしてい ます、どうぞ併せてご利用ください。 ▼「読書探偵作文コンクール」小学生部門 公式ウェブサイト http://dokushotantei.seesaa.net/ ▼「読書探偵作文コンクール」中高生部門 公式ウェブサイト https://dokutanchuko.jimdofree.com/ ▼「読書探偵作文コンクール」公式ツイッター https://twitter.com/Dokusho_Tantei/ ▼「読書探偵作文コンクール」公式フェイスブックページ https://www.facebook.com/dokushotantei/ ▼「読書探偵作文コンクール」公式 note https://note.com/dokutan/ お子さんに、お友だちに、お知り合いに、ぜひお知らせください! 4月3日(日)にオンラインで開催したイベント「読書探偵作文コンクール 2021 年度最優秀作品を選考委員が語る!」の録画を公開しています。 どうぞご覧ください。 https://www.youtube.com/watch?v=8uH1swUDRWY 過去の受賞作をもとに2017年に出版した『外国の本っておもしろい! 子どもの作 文から生まれた翻訳書ガイドブック』(サウザンブックス社)も、引き続きよろしく お願いいたします。 http://thousandsofbooks.jp/project/dokutan/ (冬木恵子/山本真奈美) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●お知らせ● ・本誌に対するご感想をはじめ、海外児童書にまつわるお話、ご質問、ご意見等をお 待ちしています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。ご質問等は本誌 に掲載させていただく場合があります。 ・本誌の html 版は、発行日から5日後に公開予定です。以下の URL よりお入りく ださい。 http://www.yamaneko.org/mgzn/bncorner.htm#html ・8月号は定期休刊です。次号(2022年9月号)の配信は9月15日の予定です。お楽 しみに! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆メールマガジン『海外ミステリ通信』 隔月15日発行☆★ http://honyakuwhod.blog.shinobi.jp/ 未訳書から邦訳新刊まで、あらゆる海外ミステリの情報を厳選して紹介。翻訳家や 編集者の方々へのインタビューもあります! 〈フーダニット翻訳倶楽部〉 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= ◇各掲示板の話題やクラブの動きなど、HOT な情報をご紹介しています◇ ★やまねこ翻訳クラブ Facebook ページ https://www.facebook.com/yamaneko1997/ ★やまねこ翻訳クラブ Twitter やまねこアクチベーター https://twitter.com/YActivator やまねこ翻訳クラブ☆ゆる猫ツイート https://twitter.com/yamanekohonyaku やまねこ翻訳クラブ*イベント情報 https://twitter.com/YamanekoEvent 巷で見かけたやまねこたち https://twitter.com/ChimataYamaneko *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記●今月号では2022年カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞、各シャド ワーズ・チョイス賞を受賞した全作品をレビューとともにご紹介しました。2022年国 際アンデルセン賞受賞作家、画家の作品にも注目です。8月はお休みをいただき、次 回は9月号となります。どうぞお楽しみに!(ひ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発 行 やまねこ翻訳クラブ 編集人 平野麻紗/三好美香/森井理沙(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) 企 画 赤塚きょう子 池田幸子 尾被ほっぽ かまだゆうこ 蒲池由佳 小島明子 小原美穂 平尾陽子 冬木恵子 山本真奈美 山本みき 綿谷志穂 協 力 からくっこ shoko ながさわくにお みちこ html版担当 shoko ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・このメールマガジンは、「まぐまぐ」( http://www.mag2.com/ )を利用して配信 しています。購読のお申し込み、解除は下記のページからお手続きください。 http://www.mag2.com/m/0000013198.html ・バックナンバーは、http://www.yamaneko.org/mgzn/ でご覧いただけます。 ・「月刊児童文学翻訳」編集部 連絡先 mgzn@yamaneko.org ・無断転載を禁じます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ |
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