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やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集> ケイト・グリーナウェイ賞レビュー集(2008年)
 

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 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

ケイト・グリーナウェイ賞(イギリス) レビュー集
The Kate Greenaway Medal

「2008年(2007年度)カーネギー賞&ケイト・グリーナウェイ賞候補作を読もう会」
▽▲合同企画▲▽
 

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最終更新日 2009/05/18 もとしたいづみさん作品リストへのリンクを追加 

2007年(2006年度)以前  その1 その2 / 2008年(2007年度) 「カ&グ賞候補作を読もう会」合同企画 / 2009年(2008年度) 「カ&グ賞候補作を読もう会」合同企画


ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品リスト(やまねこ資料室) 
ケイト・グリーナウェイ賞の概要

このレビュー集について 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メ ールマガジン「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。

*グリーナウェイ賞公式サイトにおいて、2007年より、年表記が、出版年度(前年)から授賞年に変わりましたので、 やまねこサイトでも順次改めていきます。2005年度(発表は2006年)以前の作品については、以前のまま作品が出版された年度で表示しています。


"Little Mouse's Big Book for Fears"(リンク) * "Dilicious!"『とびきりおいしいスープができた! かぼちゃスープのおはなし』 * "Silly Billy"『びくびくビリー』 * "Penguin"『ペンギンさん』 * "That Rabbit Belongs to Emily Brown"『そのウサギはエミリー・ブラウンのっ!』 * "Ottoline and the Yellow Cat"  * "The Incredible Book Eating Boy"『よにもふしぎな本をたべるおとこのこのはなし』 * "The Scallywags"『やんちゃもののおでましだい』←追加


2008年(2007年度) ケイト・グリーナウェイ賞ショートリスト

"Little Mouse's Big Book of Fears" (1997) [Amazon]
 Emily Gravett エミリー・グラヴェット作 (未訳絵本)

 やまねこ公式レビュー 月刊児童文学翻訳2008年5月号(未訳)

その他の受賞歴
2007年ネスレ子どもの本賞6〜8歳部門銅賞


ネスレ子どもの本賞のレビュー集を参照のこと

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2008年(2007年度) ケイト・グリーナウェイ賞ロングリスト

"Delicious!" (2006)  by Helen Cooper ヘレン・クーパー
『とびきりおいしいスープができた! かぼちゃスープのおはなし』 かわだあゆこ訳 アスラン書房 2007

その他の受賞歴


 森の奥にすむ、あひるとりすとねこの3人。いつも大好きなかぼちゃスープをつくるのに、今日はかぼちゃがない! しかたがないので、みんなでたなから古い料理の本をだしてきて、ページをめくる。これはどうだ、とみつけた魚スープをためそうと、つりに出かけて、スープをことことと煮こむ。ねことりすは、その出来に満足したが、あひるはにおいをかいだだけで、「ウェッ!」口すらつけようとしない。よーしそれならと作るのは、きのこスープやビーツのスープ。さて、あひるの気にいるスープはできるのか?

 1998年度ケイト・グリーナウェイ賞を受賞した『かぼちゃスープ』 (レビューはこちら)と『こしょうできまり!』の続編である。料理がすきな3人の中で、いつも問題をおこすのは、前作でも迷子になってしまったあひるだ。好き嫌いがはげしくて、せっかくのスープも「ウェッ!」といって食べられない。時々ケンカはするものの、ねことりすは、でもやっぱりあひるが大すきなのだ。あひるを広い心で見守ってくれるふたりの存在に、何だか心いやされる。そして、そんなふたりは、あひるのためにある作戦を思いつく。これって、母親がよく子どもに使うあの手だな、とにやにやしながら子どもたちと楽しく読んだ。
 全体に暖色を使って描かれた、この絵本からは、3人の友情というスパイスのきいた豊かなスープの香りがただよってくるようだ。この絵本のとおりに、スープを作ったら、野菜の苦手な我が家の子どもたちだって、きっとぺろりと食べてくれるだろう。いつか料理上手になって、とびきりおいしいスープをつくりたいものだ。

(美馬しょうこ) 2008年6月公開

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2008年(2007年度) ケイト・グリーナウェイ賞 ショートリスト

"Silly Billy" (2007) by Anthony Browne アンソニー・ブラウン
『びくびくビリー』 灰島かり訳 評論社 2006.09

その他の受賞歴 ・2007年チルドレンズ・ブック賞幼年向け部門ショートリスト


 とってもとっても臆病な男の子ビリー。猫背で、下がりまゆで、不景気な顔。ポケットに手を突っ込んで、もっそり歩く。寝るときだって、恐怖な思いが、想像を膨らませ、トンでもない妄想を創造するしまつ……。お父さんが慰めても、お母さんが側に居ても、なかなか寝付けない。ところがある日、おばあちゃんがとってもステキな解決策を持って来てくれた。ビリーの恐怖妄想をなんとかしてくれた強力な助っ人はだれ?

 ビリーの恐怖が引き起こす妄想がすごい。超ド迫力で、これじゃ明りを消したとたんに、地球までふっとばしてしまいそう。そんなすごいものを、なんとかしちゃうなんて、なんてステキな助っ人だろう。そう思って我が家を見渡すと、うちにも役に立ちそうなのがいるではないか! 身長はマッチ一本ほどだし、木製だし、8つ(8人?)そろっているし……。ビリーが貰ったグアテマラ産ほどではないかもしれないが物は試しだ。早速、お仕事に取りかかって貰おう。

(尾被ほっぽ) 2008年6月公開

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2008年(2007年度) ケイト・グリーナウェイ賞 ショートリスト

"Penguin" (2007) by Polly Dunbar ポリー・ダンバー Amazon
『ペンギンさん』 もとしたいづみ訳 フレーベル館 2007.11
 Amazon bk1

 やまねこ公式レビュー 月刊児童文学翻訳2008年5月号(邦訳)

その他の受賞歴 ・2007年ネスレ子どもの本賞5歳以下部門銀賞
 ・
2008年チルドレンズ・ブック賞幼年向け部門ショートリスト
 ・Booktrust Early Years Awards (Pre-School Book Award)
 ・2008年やまねこ賞絵本部門第3位


 ベンは、プレゼントをもらいました。箱の中から出てきたのは……ペンギンさん。大喜びのベンは、「こんにちは! ペンギンさん」「何して遊ぶ?」と話しかけるのですが、ペンギンさんはなんにも答えてくれません。ベンは、ありとあらゆることをやってみます。変な顔をしてみたり、くねくね踊りをしてみたり。でも、やっぱりだめ。あげくのはてに、ベンはちょっといじわるなことまでやってしまうのですが……。

 ベンの奮闘ぶりが、かわいらしく愛らしい。いかにも子どもらしい行動と表情に、子どもの読者は共感し、大人の読者はとろけてしまうでしょう。そういえば、うちの子も小さい頃、お気に入りのぬいぐるみを相手に遊んでいたな、と、その風景がすぐに思い出されました。そんな小さな子どもの時間が、うまく切り取られている作品です。特に、背景を真っ白にして、2歳前くらいのベンと、ペンギンさん、そして青いライオンだけを描くことで、子どもの気持ちにうまくスポットライトを当てているなと思いました。まるで、センダックの絵本『ピエールとライオン ためにあるおはなし』のようです。

(植村わらび) 2008年6月公開

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2008年(2007年度) ケイト・グリーナウェイ賞 ロングリスト

"That Rabbit Belongs to Emily Brown" (2007) 
 illustrated by Neal Layton ニール・レイトン, text by Cressida Cowell クレシッダ・コーウェル
『そのウサギはエミリー・ブラウンのっ!』 まつかわまゆみ訳 評論社 2007.12

その他の受賞歴
 ・2006年ネスレ子どもの本賞5歳以下部門金賞


 はい色ウサギのスタンリーは、エミリー・ブラウンのお気に入り。いつもいっしょにいろんな冒険に出かけます。ある日、エミリー・ブラウンとスタンリーがエイリアン見物に出かけようとしていると、お台所のドアにノックの音が。やってきたのは女王陛下の侍従長。女王陛下のご命令で、「まあたらしい金色のテディベア」とひきかえにスタンリーをよこせとのこと。しかも、スタンリーのことを勝手に「バニーワニー」なんて呼んでいる!

 だいじなだいじなぬいぐみですもの、女王陛下のご命令だろうと、どんなおもちゃとひきかえだろうと、もちろん渡すわけにはいきません。けれども、敵もさるもの、陸・海・空軍を動員して、あの手この手でやってきます。そしてそのたび、女王の命令を伝えにやってくる人々のセリフはどんどん長くなっていく! ことばに緩急のリズムがあって、声に出して読むのがとっても楽しい絵本です。ストーリーの緩急も、絶妙。笑って、ハラハラして、じーんとして、ハッピーな気分になります。とぼけたユーモアでいっぱいの絵は自然と心ウキウキしてくる楽しさですが、エミリー・ブラウンとスタンリーが出かける冒険の世界では、背景に使ってある写真が想像力をぐぐぐんとかきたててもくれます。

(杉本詠美) 2008年6月公開

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2008年(2007年度) ケイト・グリーナウェイ賞 ショートリスト

"Ottoline and the Yellow Cat"(2007) (未訳絵本)
 by Chris Riddell クリス・リデル

その他の受賞歴
2007年ネスレ子どもの本賞6〜8歳部門金賞
2008年チルドレンズ・ブック賞低学年向け部門受賞
2008年(2007年度)カーネギー賞ロングリスト
2008年やまねこ賞絵本部門大賞


 オットーラインは、3番通りペッパーミル・ビルディング(Pepperpot Building)の24階243号室に住んでいる。両親は収集家で世界を旅して不在がちだけれど、ミスター・マンローがいっしょにいるから安心できる。ミスター・マンローはノルウェーの沼地出身の小さな毛むくじゃらだ。
 さて3番通りで、3匹の犬が相次いで行方不明になり、続けて3つのアパートに泥棒が入った。オットーラインはさっそく得意の変装をして、マンローと調査にでかける。

 赤、黒、黄、青のひきしまった配色に金色の装飾模様の線をあしらった表紙が、上品で魅力的だ。そこに描かれているオットーライン、マンロー、黄色のネコが、それぞれ個性的で、おもしろさを期待させる。
 その期待通り、ユーモアのある文と、繊細なペン画が見事に組みあわさり、楽しくおしゃれな作品にしあがっている。ストーリーは、ふざけて寄り道をしているようでいながら、事件解決に向けてつながっていく。ペン画は、オットーラインの暮らし、オットーラインの見たもの、出来事を克明に記す。だが、いたずらに細かいのではない。迷い犬捜索のポスターや泥棒の新聞記事が、謎解きの手がかりとなるのはもちろんのこと、ほかの事細かなイラストも、意外なところで次の展開に関係してくる。読者は何度も前にもどって見入り、愉快な発見をするだろう。見れば見るほど楽しくなるイラストなのだ。
 オットーラインは靴を片方ずつコレクションしていて、そのためにいつも左右違う靴を履いている。掃除や料理は、各家事専門の出張サービス会社(ドアノブ磨き専門なんて、ナンセンスなものもある)の人がやってくれる。そうした彼女の自由気ままで贅沢な暮らしは、子どもたちの憧れとなるだろう。
 英国では続編の "Ottoline Goes to School" が出版されている。シリーズ化が期待される。

(寺岡由紀) 2008年7月公開

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2008年(2007年度) ケイト・グリーナウェイ賞 ロングリスト

"The Incredible Book Eating Boy" (2007)
 by Oliver Jeffers オリヴァー・ジェファーズ
『よにもふしぎな本をたべるおとこのこのはなし』 三辺律子訳 ヴィレッジブックス 2007.09

その他の受賞歴
2006-2007年ビスト児童図書賞殊勲賞
2007年チルドレンズ・ブック賞 幼年向け部門ショートリスト


 ヘンリーは本が大好きなのだ。しかしそれは本を「読む」のが好きなのではなくて、「食べる」のが好きという変わったもの。最初の一口で味をしめてから、食べる、食べる、どんどん食べる。一番のお好みは表紙の赤い本。本を食べると、中に書いてあることはすべて理解できるようになった! なんてステキ。このまま行けば、世界で一番頭のいい人になれるかも。でも何でも食べ過ぎると良くないのだ。ヘンリーは本の食べ過ぎで調子が悪くなってしまった。

 茶色の表紙に、大きな口をあけ何冊も本をくわえたヘンリーが立っている。ページをめくると歯形も生生しい赤い本! オリヴァー・ジェニファーズの描くヘンリーは、お饅頭にゴマをつけたような容貌だ。本を食べさえすれば、知識が身につくなんて、こんな便利なことはない。と思うものの、本っておいしそうじゃない。ヘンリーがおなかを壊してしまうのは当然かも。とにかく最後は収まるところに収まってめでたし、めでたし……となるか?

(尾被ほっぽ) 2008年8月公開

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2008年(2007年度) ケイト・グリーナウェイ賞 ロングリスト

"The Scallywags" (2006) 追加
 by David Melling デイヴィッド・メリング
『やんちゃもののおでましだい』 山口文生訳 評論社 2008.08

その他の受賞歴


「やんちゃもの」とは、お行儀の悪いおおかみ14匹のこと。ある晩、動物たちみんなで決めた約束の時間におおかみたちが遅れてきて、おまけに写真をめちゃくちゃにしてしまった。動物たちはおこって、今度からおおかみを仲間に入れないことにする。困ったおおかみたちは、動物たちに好きになってもらおうと、こっそりみんなを観察して真似をすることにした。体の毛をとかしたり、お風呂に入ったり、服を着てみたり、テーブルマナーを覚えたり。完璧なまでに生まれ変わったおおかみたちを、動物たちは新しいお客さんだと思い込み、手厚く迎えるのだが……。

 行動はワイルドだけれども、心は素直なおおかみたち。好かれようと一生懸命な様子が細かく描き出されている。おおかみを仲間はずれにしてしまう動物たちも、もともとそんなに意地悪なわけではなく、とうとう堪忍袋の緒が切れてしまったという程度。おそろしいおおかみVS動物たち、という構図の話とは一味違った作品だ。そんな双方に用意された結末も、ひとひねりしてあって、最後まで楽しむことができる。
 やわらかい線、とぼけた表情、各所に遊び心が満載のあたたかい絵柄が魅力のメリング。"The Kiss that Missed"(未訳、やまねこレビュー) が2002年ケイト・グリーナウェイ賞のショートリストに選ばれ、邦訳の刊行は『おばけとしょかん』(山口文生/評論社/2005)に続いて本作が2作目となる。

(植村わらび) 2008年11月公開

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2007年(2006年度)以前  その1 その2 / 2008年(2007年度) 「カ&グ賞候補作を読もう会」合同企画 / 2009年(2008年度) 「カ&グ賞候補作を読もう会」合同企画
ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品リスト(やまねこ資料室) 
ケイト・グリーナウェイ賞の概要

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