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やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集
コールデコット賞(アメリカ) レビュー集 |
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最終更新日 2008/12/05 その2のページを作成
1930・40年代レビュー集
/ 1950・60年代レビュー集 (その1) (その2) /
1970・80年代レビュー集 / 1990・2000年代レビュー集 (その1 その2) |
このレビュー集について
10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メ ールマガジン「月刊児童文学翻訳」や「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。
コールデコット賞1990・2000年代レビュー集(その1) "The Hello, Goodby Window"『こんにちは・さようならのまど』 * "Rosa"『ローザ』 * "Zen Shorts"『パンダのシズカくん』 * "The Red Book"『レッド・ブック』 * "Owen"『いつもいっしょ』 * "Black and White" * "Zin! Zin! Zin! A Violin"『ツィン! ツィン! ツィン! おたのしみの はじまり はじまり』 * "Mirette on the High Wire" * "The Talking Eggs" * "Don't Let the Pigeon Drive the Bus ! "『ハトにうんてんさせないで』
コールデコット賞1990・2000年代レビュー集(その2) "The Three Pigs"『3びきのぶたたち』 * "Lon Po Po"『ロンポポ』追加 * "Golem"『土でできた大男ゴーレム』追加 *
2006年コールデコット賞受賞作
"The Hello, Goodby Window" (2005) by Chris Raschka クリス・ラシュカ text by Norton Juster ノートン・ジャスター 『こんにちは・さようならのまど』 石津ちひろ訳 BL出版 2007年 |
その他の受賞歴 |
孫娘の「わたし」が、いつものように、おばあちゃんとおじいちゃんが住んでいる家に泊まりに行く。家に入る前に必ず中をのぞくのが台所の窓で、これはいろんなものを見せてくれる魔法の窓だ。「わたし」が来たのを見つけた時の二人の笑顔、夜になってからのぞいた時には自分の顔。夜空に浮かぶお星さまや、朝の庭も見せてくれる。そして、おばあちゃんが言うには、この窓には、会いたいと思う人が本当にやってくるんだって。
台所の窓を中心にすえて、孫娘が祖父母の家にお泊りに行った時の様子が、じゅんじゅんに語られていく。どの場面からも、「わたし」が祖父母の愛情を一身に受けていることが伝わってくる。作者ノートン・ジャスターが、週に1回孫娘をあずかっている経験から生まれた絵本ということで、なるほど、とうなづける。 (植村わらび) 2008年3月公開 |
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2006年コールデコット賞オナーブック
"Rosa" (2005) by
Bryan Collier
ブライアン・コリアー text by Nikki Giovanni ニッキ・ジョヴァンニ 『ローザ』 さくまゆみこ訳 光村教育図書 2007年 |
その他の受賞歴 2006年コレッタ・スコット・キング賞画家部門 |
ローザ・パークスは、アメリカ南部のアラバマ州にあるモンゴメリーのデパートで、服の仕立てや修理の仕事をしていた。お客様のためにと、昼ごはんもとらずにがんばることもあった彼女は、とても腕がたつ職人であった。 (美馬しょうこ) 2008年3月公開 |
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2006年 コールデコット賞オナーブック
"Zen Shorts" (2005) by Jon J. Muth ジョン・J・ミュース 『パンダのシズカくん』 三木卓訳 フレーベル館 2007年 |
その他の受賞歴 |
「外にクマがいるよ、にいさん!」 「パンダっぽい口のききよう」をするシズカくん。その見た目どおり、おだやかでゆったりしているが、それだけではない。さすが中国から来ただけあって東洋の深い思想に基づいた、含蓄のある話をしてくれる。それも、押しつけでなく、そっとというところがいい。訳者あとがきによると、シズカくんは、原書では「静かな水」くんだったということだが、子どもたちが、お話を通じて、水がしみこむようにものごとを静かに知っていくさまをみても、まさにぴったりなネーミングだと感心させられた。作品全体は、淡いやわらなかな色づかいのイラストになっているが、シズカくんが語るお話部分の挿絵は、白黒の水墨画風で、中国らしい雰囲気がよくでている。この作品は、東洋の思想を学んだ作者が、「禅の心にもとづいた考え方を西洋にやさしく伝えたい」との思いから生まれたということだが、西洋の子たちは、この作品をどう受け止めただろうか。ひょっとすると、日本の子どもたちのほうが、よりなじみやすい作品になっているかもしれない。 (美馬しょうこ) 2008年3月公開 |
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2005年コールデコット賞オナーブック
"The Red Book" (2004) by Barbara Lehman 『レッド・ブック』 評論社 2008年10月 |
やまねこ公式レビュー 月刊児童文学翻訳2005年3月号 その他の受賞歴 |
(このレビューは、英語版を参照して書かれています) 『赤い本』(仮題) 雪がたくさん降っている町。学校へ行く途中で少女は一冊の本を拾った。赤い表紙の絵本。ビルの中にある学校で少女がその本を開くと、まず地図があって、そのなかの小島がクローズアップされていく。と、島の砂浜に同じような赤い本が埋もれている。そこへ男の子がやってきて、女の子と同じように本を拾う。開いてみると、驚いたことにその本に書かれていたのは、先ほどの女の子が住む町であり、学校であり、驚いている彼女自身だった! 一つの絵本がテレビ電話のように彼と彼女をつなぐ。しかし、それだけでは終わらない。女の子は男の子に会いに行こうとする。その方法は……。 本を通して別世界を知るという読書のもつ本質的な意味を、難しい言葉をいっさい使わずに、しかもメルヘンチックな雰囲気にどっぷり浸り、じっくり味わうことができる。言葉がないので、読者は否応もなく絵に引きつけられる。自分自身がこの本の世界に入り込んでいく予感がたまらない。ああ、とても言葉じゃたりない。この不思議な感覚をぜひ手にとってどうぞ。赤い本! どこかに落ちてないかしら。言葉のもつ影響力と限界を、言葉をいっさい使わない本で考えさせられる。赤は要注意の色。 (尾被ほっぽ) 2008年3月公開 |
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1994年 コールデコット賞オナーブック
"Owen" (1993) by
Kevin Henkes ケビン・ヘンクス 『いつもいっしょ』 金原瑞人訳 あすなろ書房 1994年 |
その他の受賞歴 1994年ボストングローブ・ホーンブック賞オナーブック |
オーウェンは、黄色い毛布を持っている。これは、赤ちゃんのころから持っていた毛布だ。ほんとうにほんとうに、大好きな毛布。オーウェンはどこへでもこの毛布を持っていく。トイレのときも、食事のときも、鉄棒をするときだって。だが、あるとき、となりのトゥイーザーさんがオーウェンの両親にいった。「あの子、毛布を持つには大きすぎるんじゃない?」それからというもの、お父さんとお母さんはなんとかして、オーウェンから毛布を離そうとするのだが、オーウェンだって負けてはいない……。 (美馬しょうこ) 2008年3月公開 |
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1991年コールデコット賞受賞作
"Black and White" (1990) by David Macaulay デビッド・マコーレイ (未訳) | その他の受賞歴 |
本を開くと、左右のページがどちらも上下に分割され、見開き4コマに分かれている。それぞれにタイトルらしきものがついていて、4つの話が同時進行で始まるのだ。列車で一人旅をしている少年。両親と姉弟が暮らす家。駅のプラットホーム。脱獄囚と牛。4つの話は互いに、何の関係もないようにみえる。画法までもがすべて違うという手の込みようだ。何だかよく分からないままに読み進めていくと、あれ……? いつの間にか話同士のつながりが見えてくる。4つのコマが入り混じってくる。そして……。 4つの違った話が同時進行することに、初めは面食らってしまった。だが読み進むうちに、それぞれの話がつながってきて、なるほどそういうことかと納得する。そして妙にうまくまとまった結末を前に、狐につままれたような気がして落ち着かなくなる。何かを見落としている気がするのだ。そしてまた最初から読み直すことになる。題名にもなっている白と黒が、4つの話に共通して効果的に使われている。物語のキーとなる白黒の新聞、ホルスタインの白黒、脱獄囚が着ている白黒の格子縞の服。牛の柄と脱獄囚の服は、だまし絵のようになっていて楽しい。この型破りな手法に好き嫌いは分かれるかもしれないが、とてもユニークな絵本で、マコーレイの新たな面を発見したような気分になった。 (佐藤淑子) 2008年3月公開 |
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1996年コールデコット賞オナーブック
"Zin! Zin! Zin! A Violin" (1995) by Marjorie
Priceman マージョリー・プライスマン text by Lloyd Moss ロイド・モス 『ツィン! ツィン! ツィン! おたのしみの はじまり はじまり』 かどのえいこ訳 BL出版 1998年 |
その他の受賞歴 |
(このレビューは、英語版を参照して書かれています) まず始まりは、トロンボーンのソロから。そこにトランペットが加わり、二重奏になる。続いてホルンが加わり三重奏に。お次はチェロが加わり四重奏。それからそれから……。次々に新たな楽器が加わって、10人そろえば、コンサートのはじまりはじまり! 楽しそうな演奏者たちを前に、動物たちもじっとしてなんかいられない。音楽にあわせて踊りだす。観客はもちろん大喝采だ。 音を文と絵で表現することに成功した、すてきな絵本である。10種類の楽器が順に登場するのだが、演奏者たちの楽しそうなこと! リズムにのっている、陶酔している、それぞれの表情がとても豊かだ。躍動的な曲線を多用した絵は一癖あるが、まるで音が聞こえてくるかのように、いきいきと描かれている。それに加えて韻を踏んだ言葉たちが小気味よく、声に出して読むのにぴったりだ。調子よく読みながら、楽しいコンサートを疑似体験しよう。 (佐藤淑子) 2008年4月公開 |
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1993年コールデコット賞 受賞作
"Mirette on the High Wire" (1992) by Emily Arnold McCully (未訳絵本) |
その他の受賞歴 |
百年も昔のパリ。旅芸人達はパリにくれば、マダム ガトーの宿に泊まる。温かい食事に清潔な部屋が、彼らを迎えてくれるからだ。娘ミレットは洗濯や掃除の合間に、彼らが世界中から運んでくる珍しい話を聞くのが好きだった。ある日、一人の男がやってきた。なんと彼は裏庭に貼り渡した洗濯物用のロープの上を歩いていたのだ。その有様にミレットは心を奪われる。何度たのんでも、その男ベリニ氏は構ってはくれないので、ミレットは自分で綱渡りの練習を始める。 ベリニ氏がかつてその名を世界中にとどろかせた「綱渡りの名人」だったことが分ってから、物語は人生の明暗を鮮やかなコントラストで描き出す。空中を歩く技に限りない憧れを寄せ、その実現にひたすら近づいていくミレットは、若さと希望で輝き、光の中にいる。片やベリニ氏が自身の失敗と、そのことによる恐怖を抱え込んだ姿は人生の闇を思わせる。最後のクライマックスでは、ミレットとベリニ氏の息もつけないほど緊張を誘う空中の話となっていく。舞台装置は完璧だ。あとは観客の皆さまのお越しをお待ちするだけ。 (尾被ほっぽ) 2008年8月公開 |
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1990年コールデコット賞 オナーブック
"The Talking Eggs" (1989) (未訳絵本) by Jerry Pinkney ジェリー・ピンクニー, retold by Robert D. San Souci ロバート・D・サン・スーシ |
その他の受賞歴 |
昔々、二人の娘を持った未亡人がいた。姉のローズは意地悪で怠け者。妹のブランチは優しくてよく働き、母親と姉のために朝から晩まで家の仕事をしていた。ある日、井戸の側で貧しいおばあさんに水を飲ませてあげたことから、ブランチの運命は変わる。おばあさんとともに森の奥深くの家へいくと、二つ頭のある牛や、カラフルなニワトリなど、とても奇妙なものたちを目にする。けれども、ここでもブランチはよく働き、言いつけを守ったので、おばあさんからご褒美に卵を貰った。卵の中からは金銀財宝に美しいドレスや、馬車まで出てきた。それを知った欲張りな母は、姉にもおばあさんのところへ行かせるが……。 19世紀に出版された、ルイジアナ州の仏系白人クレオールに伝わる、民話の再話だそうだ。もともとはヨーロッパに古くからある民話で、口承で伝えられた場所によって、いろんなバージョンがあるらしい。お伽噺一般にみられる「心根の良いものは報われる」という哲学? が生きている。日本でいえば、舌きりすずめか、おむすびころりんといったところ。宝物にドレスや馬車まで出てくるのはさすがアメリカだ。最後にお金持ちになった娘は町へ出ていくが、都会暮らしが成功や富と結びついているのは、今となってはまさにお伽噺だろう。ジェリー・ピンクニーの濃い! 絵が、おばあさんの不気味さと、奇妙な動物たちを際立たせている。 (尾被ほっぽ) 2008年8月公開 |
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2004年 コールデコット賞オナーブック
"Don't Let the Pigeon Drive the Bus ! " (2003) by
Mo Willems
モー・ウィレムズ
追加 『ハトにうんてんさせないで』 中川ひろたか訳 ソニー・マガジンズ 2005年 |
やまねこ公式レビュー 月刊児童文学翻訳2004年2月号 その他の受賞歴 ・2003年BCCBブルーリボン賞絵本部門 |
(このレビューは、英語版を参照して書かれています) ハトには、たくさんの夢がありました。そのひとつが、バスを運転すること。今日も、ほんもののバスを眺めながら、運転席にすわってかっこよくハンドルをさばいている自分の姿を空想して、楽しんでいました。すると! そのとき、思いがけないことが起こりました。運転手がバスからおりて、どこかへ行ってしまったのです。さあこれは、願ってもないチャンス到来! ハトの夢は果たしてかなうのでしょうか?
運転手さんはちゃんとハトのことを知っていて、読者にこう頼んでバスを離れます。「もどってくるまで見はっててね。絶対、あのハトにバスを運転させちゃいけないよ」こうして、ハトと読者との戦い(?)が始まります。あの手この手で、「バスを運転させて〜」とうったえてくる、かわいいハトに、読者はいつも、「だめ!」といわなくちゃいけません。「だめ!」といわれ続けるうちに、必死さの増してくるハトの表情がたまりません。絵本を読んでいると、ページには書かれていない「No!」をお母さんのひざの上で叫んでいる、子どもたちの姿が目にうかぶようです。 (やまだともこ) 2008年9月公開 |
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